著者
中川 実 坂本 千穂子 藤原 賢次郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.39-46, 2012-01-25 (Released:2012-01-27)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

近年,肺腫瘍の術前CTガイド下マーキングを行う機会が増加している.今回,我々はCTガイド下マーキング終了直後に脳空気塞栓症を来した1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性で,右下葉S8の腫瘤に対してビデオ補助胸腔鏡手術直前にCTガイド下マーキングを施行した.マーキング終了直後,突然意識障害,けいれん,左片麻痺を発症し,直後の頭部CTにて主に右大脳の脳溝に沿って空気像を認め,脳空気塞栓症と診断した.直ちに高圧酸素療法を施行し,治療直後の頭部CTではごく一部空気像を認めるのみとなった.その後意識も清明となり,運動麻痺も改善し,歩行可能となった.近年,肺腫瘍の術前CTガイド下マーキングを行う機会が増加しているが,それによる合併症としての空気塞栓症に関しても2001年以降報告が散見されており,穿刺針が極めて細いとはいえ,起こりうる合併症であり,文献的考察を加え,自験例を報告する.