著者
佐伯 覚 蜂須 賀明子 伊藤 英明 加藤 徳明 越智 光宏 松嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10668, (Released:2019-08-08)
参考文献数
36

要旨:若年脳卒中患者の社会参加,特に復職は重要なリハビリテーションの目標であり,ノーマライゼイションの理念を具現化するものである.国際生活機能分類の普及に伴い,社会参加の重要性が再認識されている.また,政府が主導している「働き方改革」に関連した「治療と就労の両立支援」施策の一つとして,脳卒中の就労支援が進められている.しかし,脳卒中患者の高齢化・重度化,非正規雇用労働などの労働態様の変化は脳卒中患者の復職に多大な影響を与えており,若年脳卒中患者の復職率は過去20 年間,40%に留まっている.脳卒中患者の復職は医療だけでなく福祉分野とも関連し,職業リハビリテーションとの連携,さらには,復職予定先の企業等との調整など様々なレベルでの対応が必要であり,医療福祉連携を超える高次の連携が必要となる.
著者
豊田 章宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.226-235, 2011-03-25 (Released:2011-04-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

【背景】脳卒中発症には気温が最も影響する.発症時期については冬に多く夏に少ないとされるが一定しておらず,その理由として気象の影響の複雑さに加えて,観察期間の短さや対象数の少なさなど研究方法自体も指摘されている.【方法】全国労災病院において2002年度から2008年度に入院加療された全脳卒中症例46,031例を対象とし,脳卒中病型別に月別発症数を比較した.また気象区分から4つの地域に分けて検討した.【結果】脳出血は男女とも夏少なく冬に多発したが,北日本と西日本では最少月にひと月の差があった.くも膜下出血は女性に多く,夏少なく秋から冬に多発した.脳梗塞全体では明確な季節性は認めなかったが,ラクナおよびアテローム血栓性梗塞では夏に急増し1月に再増加という2峰性がみられ,心原性脳塞栓では冬場のみ多発した.【結論】地球環境の変化に伴い,生活環境や職場環境にも十分配慮した脳卒中予防対策が必要となる.
著者
柴田 憲一 山下 泰治 長野 祐久 由村 健夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.179-184, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
15

症例は40歳,男性で,頭痛,嘔吐を主訴に救急搬送された.性転換術による精巣摘出の既往があり,来院1カ月前から女性化目的に経口避妊薬を内服していた.来院時の神経学的所見では,軽度の意識障害のみで局所徴候はなかった.血液検査では凝固系の亢進があり,頭部CTでは直静脈洞,上矢状静脈洞,左横静脈洞に高吸収域を認めた.MRVでは左横静脈洞の信号消失と右横静脈洞の信号低下があり,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法を開始し,経過中に出血性梗塞を来したものの,再開通を得た.静脈血栓症の原因として経口避妊薬は知られているが,今回はさらにアンドロゲン低下による線維素溶解能の低下が素地にあったものと考えられた.
著者
柴田 靖 遠藤 聖
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.150-153, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
7

症例は69歳の男性で,刑務所服役中に自室で意識障害で発見された.全失語,右片麻痺を認め,CT/MRIでは左中大脳動脈領域脳梗塞であった.保存的加療により意識障害,片麻痺はやや改善したが,失語は残存した.服役中であり,家族へは連絡せず,常に刑務官により拘束され,放射線検査以外はリハビリも個室内で行った.保険加入はなく,全額自費,刑務所負担であり,治療内容は病院に任されたが,転院は刑務所の都合で決められた.刑事収容施設および被収容者等の処遇に関する法律には受刑者も適切な医療を受ける権利があるとされるが,入院などは刑務所所長の権限とされている.本症例の医療倫理を考察すると,患者本人に意識障害,失語があるため,自己決定権が行使できず,利益,無害,正義も入院中は病院任せで,転院では倫理は守られていなかった.受刑者では発症前の本人の希望,living willの確認記録,受刑者に対する倫理的対応の診療ガイドライン整備が必要であろう.
著者
佐藤 祥一郎 園田 和隆 吉村 壮平 宮﨑 雄一 松尾 龍 三浦 克之 今中 雄一 磯部 光章 斎藤 能彦 興梠 貴英 西村 邦宏 安田 聡 小川 久雄 北園 孝成 飯原 弘二 峰松 一夫 日本医療研究開発機構「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発 に関する研究」班
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10587, (Released:2017-12-12)
参考文献数
57

脳卒中に対する合理的,経済的な疾病対策を行うためには,悉皆性と信頼性を合わせ持つ国家的な脳卒中登録事業が不可欠である.わが国の診療実態に即した脳卒中登録システムに必要な条件を明らかにするため,システマティックレビューを行った.2015 年12 月31 日までに発行された,脳卒中登録研究に関する医学文献を,MEDLINE および医学中央雑誌上で検索し,1533 編の文献から,51 の登録研究(国外38,国内13)を抽出した.レビューの結果から,日本における質の高い脳卒中登録事業に必要な条件として,医療ID 導入による既存大規模データベースとの連携と,それを可能にする法整備,行政による公的事業資金,学会や患者支援団体,企業の支援による安定的な資金確保,情報公開の重要性が挙げられた.
著者
立花 久大
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-112, 2014 (Released:2014-03-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

要旨:糖尿病は脳梗塞の独立した危険因子であり,脳梗塞発症が2~3 倍高くなる.糖尿病はアテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞のみではなく心原性脳塞栓症に対しても危険因子として関与している.糖尿病患者では脳幹部,椎骨脳底動脈系の脳梗塞が多く,穿通枝領域に多発する中小脳梗塞が多い.脳出血についても糖尿病患者では発症が増加する可能性がある.脳卒中の一次予防についてはメトホルミン,リナグリプチンの脳卒中発症抑制効果が示唆されている.また,二次予防としてはインスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンによる治療が脳梗塞発症予防に有効であると報告されている.しかし脳卒中予防には血糖のコントロールのみでは不十分で,血圧,脂質代謝などを含めた複合的な治療が必要と考えられる.さらに脳梗塞再発予防には血管危険因子の管理とともに抗血栓療法が必要と考えられる.
著者
赤塚 和寛 服部 直樹 伊藤 瑞規 冨田 稔 小野 玉美 森 悠
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10586, (Released:2018-01-17)
参考文献数
22

【目的】Trousseau 症候群40 例の臨床的特徴を検討することを目的とした.【方法】2009 年4月~2016 年3 月の間,当院に入院した2273 例の脳梗塞(一過性脳虚血発作は除く)患者のうちTrousseau症候群40 例を対象に悪性腫瘍の種類,組織型,病期などについて検討した.悪性腫瘍に関連する血液凝固能異常を誘因として複数の動脈灌流領域に急性期脳梗塞所見を呈する多発脳梗塞をTrousseau 症候群と定義した.【結果】Trousseau 症候群は脳梗塞全体の約1.8%を占め,脳梗塞先行群はTrousseau 症候群の27.5%を占めた.悪性腫瘍の種類,組織型,病期では,肺癌(11 例),腺癌(23 例),IV 期(31 例)が各々最も多かった.【結論】Trousseau 症候群の27.5%は脳梗塞先行群であり,血液凝固能亢進を伴った多発脳梗塞では,悪性腫瘍を念頭に精査をすすめることが重要である.
著者
峰松 一夫 矢坂 正弘 米原 敏郎 西野 晶子 鈴木 明文 岡田 久 鴨打 正浩
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.331-339, 2004-06-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
14
被引用文献数
7 5

【目的】若年者脳血管障害の頻度や臨床的特徴を明らかにする.【方法】統一形式の調査票を用い,1998年と1999年の2年間に入院した発症7日以内の51歳以上の脳卒中症例の概略と,1995年から1999年までに入院した発症1カ月以内の50歳未満の脳卒中症例の詳細を全国18施設で後ろ向きに調査した.【結果】合計7,245症例のデータが集積された.発症1週間以内入院の全脳卒中に占める若年者脳卒中の割合(調査期間補正後)は,50歳以下で8.9%,45歳以下で4.2%,40歳以下で2.2%であった.背景因子を51歳以上(非若年群)と50歳以下(若年群)で比較すると,高血圧(62.7%vs.48.5%),糖尿病(21.7%vs.13.6%),高コレステロール血症(16.5%vs.13.1%)及び非弁膜性心房細動の占める割合(21.2%vs.4.7%)は非若年群の方が高く(各p<0.01),男性(58.9%vs.62.8%),喫煙者(19.3%vs.27.3%)と卵円孔開存例(0.7vs.1.2%)は若年群で多かった(各々p<0.01,p<0.01,p=0.08).TIAの頻度に差は無かったが,脳梗塞(62.6%vs.36.7%)は非若年群で,脳出血(20.8%vs.32.1%)とくも膜下出血(7.3%vs.26.1%)は若年群で高かった(各p<0.01).若年群の原因疾患として動脈解離,Willis動脈輪閉塞症,脳動静脈奇形,抗リン脂質抗体症候群などが目立ったが,凝固系の検査や塞栓源の検索は必ずしも十分ではなかった.外科的治療は37.5%で,退院時の抗血栓療法は31.9%で施行された.退院時転帰は26.0%で要介助,死亡率は8.8%であった.【結論】全脳卒中に占める若年者脳卒中の割合は低く,その背景因子は非若年者のそれと大きく異なる.若年者脳卒中への対策の確立のためには,全国規模のデータバンクを構築し,適切な診断方法や治療方法を明らかにする必要がある.
著者
佐藤 祥一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10605, (Released:2018-02-27)
参考文献数
40

脳出血急性期の血圧上昇は,転帰不良の強力な予測因子である.発症6 時間以内の急性期脳出血に対する積極降圧療法(目標収縮期血圧<140 mmHg)の有効性を検討したThe Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Haemorrhage Tria(l INTERACT)2試験により,急性期の積極降圧療法が機能的転帰を改善することが示され,国内外のガイドラインの記載が相次いで改訂された.しかし,最近発表されたAntihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage(ATACH)-II 試験では,発症4.5 時間以内の患者を対象に,より厳格な降圧療法の効果を検討したが,転帰改善効果は証明されなかった.したがって,脳出血急性期における降圧目標の下限や最適な降圧方法に関してはいまだ明らかになっていない.脳卒中再発防止における降圧療法の有用性は証明されており,複数のガイドラインで130/80 mmHg 未満のコントロールを推奨している.しかし,これを直接支持する無作為化比較試験のエビデンスは乏しく,現在,国際共同試験Triple Therapy Prevention of Recurrent Intracerebral Disease EveNts Tria(l TRIDENT)が進行中である.
著者
吉村 元 山上 宏 藤堂 謙一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.501-505, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
20

:症例は生来健康な22歳男性.性交後に右後頭部痛と顔面を含む左半身感覚障害,左上同名性四分盲を生じ,頭部MRIで右後頭葉と右視床に脳梗塞巣,頭部MRAにて右後大脳動脈にpearl & string signを認めた.性交を契機とした後大脳動脈解離による脳梗塞と診断し,抗血小板薬による保存的加療を行った.経過は良好で,クモ膜下出血の合併や脳梗塞再発は認めず,MRA上右後大脳動脈の壁不整所見も経時的に改善した.脳動脈解離は若年性脳梗塞の原因として重要であるが,性交が誘因となることもあり,頭痛や神経症状発症時の状況を詳しく病歴聴取することが大切である.また,性行為に伴って生じる頭痛は一般に経過良好なprimary headache associated with sexual activityとして知られているが,本症例のような脳動脈解離を鑑別する必要がある.
著者
篠原 幸人 高木 繁治 小畠 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.364-371, 1980-12-25 (Released:2010-01-22)
参考文献数
21
被引用文献数
2

非侵襲的脳血流測定法である133Xe吸入法により本邦成人の脳血流の正常値, 脳内部位別差異, 左右差などを測定し, また本法の臨床的応用が可能か否かを検討した.脳内に器質的病変を認めない19歳より92歳迄の右利き日本人成人20例, 男女各10名を対象とし, Novo社製32 channel cerebrographを用い一側脳半球平均および脳内32ヵ所のF1, ISI, FF1, W1を測定した.F1の右半球平均値は74.2±15.5ml/100g brain/min, 左74.3±15.3, ISIは右52.9±9.3, 左52.6±8.8であり, あきらかな左右差はみられなかった.平均脳半球血流の左右差の1.96σ2はF1 6.1, ISI 3.3であるが個々の検出器の左右差の1.96σ2はF1 21.6, ISI 8.7であり, 本法による脳内局所の左右差の検討には慎重を要すると考えた.本法による脳内部位別血流をみると前頭部では平均血流より高値を, 後頭・頭頂・側頭部の一部では低値を推計学的に有意に示し, 閉眼覚醒安静状態においでも脳血流は脳内で不均等分布を呈することが明らかとなった.1.本邦正常右利き成人20例 (平均年齢44歳) の脳血流を示す各種パラメータを133Xe吸入法により検討した。2.脳半球平均血流は脳灰白質血流を主として表わすF1で右半球74.2±15.5ml/100g brain/min, 左半球74.3±15.3, Initial slope index (ISI) で右半球52.9±9.3, 左半球52.6±8.8であり, 左右差はみられない.3.脳内各部位別にみると前頭部では平均血流より高値を, 後頭・頭頂・側頭部の一部では低値を推計学的にも有意に示し, 閉眼覚醒安静状態においても脳血流は均等な分布を呈さない事が明らかとなった.
著者
篠原 幸人 峰松 一夫 天野 隆弘 大橋 靖雄 mRS信頼性研究グループ
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.6-13, 2007-01-25 (Released:2008-11-14)
参考文献数
17
被引用文献数
6 4 2

脳卒中の概括予後評価尺度として頻用されているmodified Rankin Scale (mRS) の本邦の医療環境下における信頼性を検討した. mRSのグレード判定において参考にすべき点を明示した判定基準書と, それに対応した問診票とをまず, 作成した. 次に9名の神経内科医が問診票に従って脳卒中 (今回は46名の脳梗塞) 患者を診察している様子をビデオに収録した. そのビデオを約8週間の間隔を空けて2回, 評価者 (医師10名, 看護師6名, 理学療法士4名) に呈示し, 判定基準書に従ってmRSを評価させた. その結果, 評価者間一致性の級内相関係数は, 医師0.947, コメディカル0.963と共に良好であった. また, 8週間の間を置いた場合の評価者内再現性は各々0.865, 0.871と良好であった. 以上の結果より, 著者らが作成した判定基準書および問診票を用いたmRS判定は, 評価の質の確保が可能であり, 本邦の医療環境下における臨床研究などに十分使用できるものであることが示された.
著者
後藤 文男
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.100-102, 1981-06-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

脳血管障害急性期には広汎な脳循環代謝障害と共に多彩な自律神経症状を示すが, 演者らは脳循環の調節に神経性因子が重要な役割を果すことを明らかにすると共に, 脳卒中急性期には自律神経機能異常を中核とする病態生理学的悪循環が形成されている可能性を指摘し, 第5回日本脳卒中学総会特別講演において発表した.そこで今回は, 本症における自律神経機能を系統的に時間的経過を含めて検討し, これらとCT所見の推移を対比すると共に, 各種臨床所見および脳循環のautoregulationと自律神経機能の関係についても解明を試みた.以上, 脳血管障害患者においては, 自律神経機能異常と脳病変, 臨床所見脳循環 autoregulation 障害との間に密接な関係の存在することを明らかにした.これらの成績は, 前回特別講演で推論した自律神経機能異常を中核とする病態生理学的悪循環の一環を解明したものと考えられる.
著者
加藤 裕司 傳法 倫久 武田 英孝 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.480-487, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
45

下大静脈弁(Eustachian valve; EV)は胎生期の右房遺残構造物で,従来,病的意義がないとされてきたが,近年,欧米の循環器領域を中心に,卵円孔の自然閉鎖を阻害し,右-左シャントを助長することで奇異性脳塞栓症を惹起するとの報告が相次いでいる.一方,本邦では同様の報告はほとんどない.EVの頻度については,人種差を考慮する必要があるが,本邦では見過ごされている可能性がある.EVは高率に卵円孔開存症を合併し,右-左シャントを助長するとともに,末梢静脈からの栓子を捕捉,あるいはEVそのものが血栓形成の温床になることで奇異性脳塞栓症の原因となりうるから,10 mm以上の比較的大きいEVには留意する必要がある.
著者
窪田 瞬 平田 順一 小島 麻里 國井 美紗子 冨田 敦子 釘本 千春 土井 宏 上田 直久 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.370-373, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

要旨:症例は79 歳男性.糖尿病で内服加療を行っていたが,突然発症の右不全片麻痺を来し当院に救急搬送された.頭部MRI 拡散強調画像で左内包後脚に高信号を認めた.血糖が30 mg/dl と著明に低下しており50%グルコースを静注したところ症状は速やかに消失し,片麻痺の原因は低血糖によるものと考えられた.患者は過去にも低血糖による内包後脚のMRI 異常信号を呈し,右不全片麻痺を発症していた.低血糖発作による脳卒中様の片麻痺は過去にも報告がみられるが,同一部位に繰り返しMRI 異常信号を認めた例はこれまでにない.内包後脚が低血糖への脆弱性が高い脳組織の一つであることが示された.
著者
荒木 周 中井 紀嘉 安井 敬三 長谷川 康博 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.421-428, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
15

【目的】急性期の一過性脳虚血発作(TIA)の患者におけるMRI FLAIR像でのhyperintense vessel sign(HVS)の頻度とその患者群の臨床的特徴について明らかにする.【方法】神経学的局在所見が発症後24時間以内に消失した165例を対象にHVSの有無を後方視的に調査した.HVSの有無で2群に分けて臨床像・検査の諸項目を比較検討した.【結果】HVSは対象の9.7%に認めた.HVS群は50%以上の主幹動脈狭窄を合併し,TOAST分類でlarge vessel typeと推定できるものが多かった.ABCD2スコアや拡散強調像での脳梗塞の有無とは無関係であった.HVS群の94%でHVSを呈した動脈と神経症候が合致した.HVS群の80%で平均60日後にHVSの消失を確認した.【結論】急性期TIAでのHVSは虚血の存在を客観的に示す画像所見として診断の上で有用と考える.
著者
門 祐輔 山口 武典 橋本 洋一郎 里見 真美子
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.586-591, 1989-10-25 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12

わが国で報告の少ないocular lateropulsionの症候学的位置付けを検討し, 責任病巣について考察した.延髄外側症候群11例中, 確実なocular lateropulsionは2例, 疑診例は7例であった.共同偏視の回復過程でこの徴候を認めた症例を提示し, 共同偏視が重要な役割を果たしていることを示した.Ocular lateropulsionは共同偏視を中心とする群と, それに小脳徴候を伴う群の, 2群に分けるのが適切であると考えられた.MRIの検討により, その責任病巣は延髄背外側にあると推定されたが, なお詳細な臨床病理学的検討が必要である.
著者
岡村 智教
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.920-924, 2008 (Released:2009-01-13)
参考文献数
8

Evidence based medicine (EBM) was proposed by Guyatt in the early 1990s. Sackett and colleagues have established basic concept of EBM. They defined that EBM was the conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence in making clinical decisions for each patient. Recently, although many clinicians recognized epidemiology as an importance tool for EBM, there were some misunderstandings in the decision-making process to use evidence level. Some clinicians believe EBM must need randomized-controlled trials (RCT). However, RCT is not always best available evidence. RCT is not suitable to examine harmful exposures, such as smoking, due to ethical problems. Furthermore, to clarify very week association, such as dietary habit and stroke, RCT requires too huge sample size to perform practically. When we are looking for second best evidence, the consistency is a main target. For example, cohort studies anywhere on the globe showed the positive relationship between smoking and cerebral infarction. Although EBM is substantially made to resolve a one-on-one clinical relationship (one therapy and one outcome), clinical questions usually consist of more complex matters with many-to-many, many-to-one, one-to-many associations. We should combine the best available external evidence with our clinical expertise, and neither alone may work enough.
著者
佐野 公俊 加藤 庸子 藤沢 和久 片田 和広 神野 哲夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-43, 1985

急性期破裂脳動脈瘤の治療方針は, 手術時期, 重症例の手術適応, 脳血管李縮の対策など幾多の問題が残され, 意見の統一をみない.<BR>本報告では, 本院にCTが導入され画像の安定した1976年9月から1982年8月までに当院に入院した315例の脳動脈瘤患者の死亡率, symptomatic vasospasmの発生率, 転帰につき, 24時間以内手術例と, それ以外の症例での推計学的検討を行った.<BR>死亡率は24時間以内手術例で82例中28例 (34%) と高いがそのうち26例はgrIV, Vの死亡例である.2週間以後の待期手術例では死亡率は142例中3例 (2%) と低く手術の安定性を示している.そこで24時間以内手術例82例と, それ以外の症例232例につき各重症度別に死亡率の有意差検定を行うと, 重症度がgrIVに近づく程, 24時間以内手術例が有意に優れていた.<BR>symptomatic vasospasmの発生率は, 24時間以内手術例及び2週間の待期中には8%~12%であったが, 48時間~2週間以内の手術例では40%前後と多かった.更に24時間以内手術例とそれ以外の例で推計学的有意差検定を行うと, 重症度がgrIIIに近づく程, 24時間以内手術例が有意に優れていた.<BR>転帰は神経学的重症度がgrIVに近づく程, 有意に24時間以内手術例が, それ以外の症例に比して優れていた.<BR>これらにより, grI, IIで脳底槽血腫の少ない症例に対しては, 再破裂防止の為の早期手術の適応であり, grIIで脳底槽血腫の多い例や, grIII, grIVの例では, クモ膜下出血の病態改善のための早期手術の適応であり, 重症例程, 24時間以内早期手術の絶対適応であるといえる.
著者
高橋 若生 祢津 静花 湯谷 佐知子 水間 敦士 植杉 剛 大貫 陽一 瀧澤 俊也
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.219-225, 2016 (Released:2016-07-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

【目的】感染性心内膜炎infective endocarditis (IE)に伴う脳卒中の特徴を明らかにする目的で,IE の発症から治癒するまでの間に合併した脳卒中について検討した.【方法】IE の入院患者90 例(平均63.8±17.4 歳)を対象とし,各種臨床因子について後方視的に検討した.【結果】25 例(28%)に脳卒中(脳梗塞18 例,脳内出血5 例,くも膜下出血2 例)が認められた.脳卒中群は非脳卒中群に比し退院時modified Rankin Scale 3 以上の例が有意に多かった(52% vs 28%,P=0.046).脳梗塞は多発性の大脳皮質枝領域梗塞が多く,脳内出血は全例が多発性であった.脳梗塞はIE の病初期に発症した例が多かったが,脳出血およびくも膜下出血は多くが入院後に発症していた.【結論】IE は脳卒中の合併がまれでなく,特に脳梗塞はIE の病初期に発症する場合が多いことが明らかになった.