著者
佐伯 覚 蜂須 賀明子 伊藤 英明 加藤 徳明 越智 光宏 松嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10668, (Released:2019-08-08)
参考文献数
36
被引用文献数
1

要旨:若年脳卒中患者の社会参加,特に復職は重要なリハビリテーションの目標であり,ノーマライゼイションの理念を具現化するものである.国際生活機能分類の普及に伴い,社会参加の重要性が再認識されている.また,政府が主導している「働き方改革」に関連した「治療と就労の両立支援」施策の一つとして,脳卒中の就労支援が進められている.しかし,脳卒中患者の高齢化・重度化,非正規雇用労働などの労働態様の変化は脳卒中患者の復職に多大な影響を与えており,若年脳卒中患者の復職率は過去20 年間,40%に留まっている.脳卒中患者の復職は医療だけでなく福祉分野とも関連し,職業リハビリテーションとの連携,さらには,復職予定先の企業等との調整など様々なレベルでの対応が必要であり,医療福祉連携を超える高次の連携が必要となる.
著者
仲野 達 山浦 弦平 横山 睦美 田中 章景 小山 主夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.47-49, 2015 (Released:2015-01-23)
参考文献数
10

要旨:症例は39 歳男性.サーフィン後に他人の自転車を乗っていこうとする異常行動のあとに意識障害が進行したため救急搬送された.MRI では両側小脳,両側視床に新規脳梗塞を認め,MR angiography(MRA)では頭蓋外から頭蓋内への移行部に両側で椎骨動脈解離を認めた.MRA で経時的に観察を行い,両側で同様な解離腔の信号変化を呈したことから両側同時に解離が生じたものと判断した.保存的治療で意識状態は改善したが,見当識障害,記銘力障害が残存した.外的要因で椎骨動脈解離が生じることは知られているが,サーフィンも例外ではない.また,両側椎骨動脈解離を認める症例は少なく,発症機序を考察する上でも貴重な症例と考えた.
著者
岡村 智教
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.920-924, 2008 (Released:2009-01-13)
参考文献数
8

Evidence based medicine (EBM) was proposed by Guyatt in the early 1990s. Sackett and colleagues have established basic concept of EBM. They defined that EBM was the conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence in making clinical decisions for each patient. Recently, although many clinicians recognized epidemiology as an importance tool for EBM, there were some misunderstandings in the decision-making process to use evidence level. Some clinicians believe EBM must need randomized-controlled trials (RCT). However, RCT is not always best available evidence. RCT is not suitable to examine harmful exposures, such as smoking, due to ethical problems. Furthermore, to clarify very week association, such as dietary habit and stroke, RCT requires too huge sample size to perform practically. When we are looking for second best evidence, the consistency is a main target. For example, cohort studies anywhere on the globe showed the positive relationship between smoking and cerebral infarction. Although EBM is substantially made to resolve a one-on-one clinical relationship (one therapy and one outcome), clinical questions usually consist of more complex matters with many-to-many, many-to-one, one-to-many associations. We should combine the best available external evidence with our clinical expertise, and neither alone may work enough.
著者
豊田 章宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.226-235, 2011-03-25 (Released:2011-04-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

【背景】脳卒中発症には気温が最も影響する.発症時期については冬に多く夏に少ないとされるが一定しておらず,その理由として気象の影響の複雑さに加えて,観察期間の短さや対象数の少なさなど研究方法自体も指摘されている.【方法】全国労災病院において2002年度から2008年度に入院加療された全脳卒中症例46,031例を対象とし,脳卒中病型別に月別発症数を比較した.また気象区分から4つの地域に分けて検討した.【結果】脳出血は男女とも夏少なく冬に多発したが,北日本と西日本では最少月にひと月の差があった.くも膜下出血は女性に多く,夏少なく秋から冬に多発した.脳梗塞全体では明確な季節性は認めなかったが,ラクナおよびアテローム血栓性梗塞では夏に急増し1月に再増加という2峰性がみられ,心原性脳塞栓では冬場のみ多発した.【結論】地球環境の変化に伴い,生活環境や職場環境にも十分配慮した脳卒中予防対策が必要となる.
著者
柴田 憲一 山下 泰治 長野 祐久 由村 健夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.179-184, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
15

症例は40歳,男性で,頭痛,嘔吐を主訴に救急搬送された.性転換術による精巣摘出の既往があり,来院1カ月前から女性化目的に経口避妊薬を内服していた.来院時の神経学的所見では,軽度の意識障害のみで局所徴候はなかった.血液検査では凝固系の亢進があり,頭部CTでは直静脈洞,上矢状静脈洞,左横静脈洞に高吸収域を認めた.MRVでは左横静脈洞の信号消失と右横静脈洞の信号低下があり,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法を開始し,経過中に出血性梗塞を来したものの,再開通を得た.静脈血栓症の原因として経口避妊薬は知られているが,今回はさらにアンドロゲン低下による線維素溶解能の低下が素地にあったものと考えられた.
著者
吉村 元 山上 宏 藤堂 謙一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.501-505, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
20

:症例は生来健康な22歳男性.性交後に右後頭部痛と顔面を含む左半身感覚障害,左上同名性四分盲を生じ,頭部MRIで右後頭葉と右視床に脳梗塞巣,頭部MRAにて右後大脳動脈にpearl & string signを認めた.性交を契機とした後大脳動脈解離による脳梗塞と診断し,抗血小板薬による保存的加療を行った.経過は良好で,クモ膜下出血の合併や脳梗塞再発は認めず,MRA上右後大脳動脈の壁不整所見も経時的に改善した.脳動脈解離は若年性脳梗塞の原因として重要であるが,性交が誘因となることもあり,頭痛や神経症状発症時の状況を詳しく病歴聴取することが大切である.また,性行為に伴って生じる頭痛は一般に経過良好なprimary headache associated with sexual activityとして知られているが,本症例のような脳動脈解離を鑑別する必要がある.
著者
柴田 靖 遠藤 聖
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.150-153, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
7

症例は69歳の男性で,刑務所服役中に自室で意識障害で発見された.全失語,右片麻痺を認め,CT/MRIでは左中大脳動脈領域脳梗塞であった.保存的加療により意識障害,片麻痺はやや改善したが,失語は残存した.服役中であり,家族へは連絡せず,常に刑務官により拘束され,放射線検査以外はリハビリも個室内で行った.保険加入はなく,全額自費,刑務所負担であり,治療内容は病院に任されたが,転院は刑務所の都合で決められた.刑事収容施設および被収容者等の処遇に関する法律には受刑者も適切な医療を受ける権利があるとされるが,入院などは刑務所所長の権限とされている.本症例の医療倫理を考察すると,患者本人に意識障害,失語があるため,自己決定権が行使できず,利益,無害,正義も入院中は病院任せで,転院では倫理は守られていなかった.受刑者では発症前の本人の希望,living willの確認記録,受刑者に対する倫理的対応の診療ガイドライン整備が必要であろう.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.551-555, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10886, (Released:2021-07-07)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
篠原 幸人 峰松 一夫 天野 隆弘 大橋 靖雄 mRS信頼性研究グループ
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.6-13, 2007-01-25 (Released:2008-11-14)
参考文献数
17
被引用文献数
6 5 2

脳卒中の概括予後評価尺度として頻用されているmodified Rankin Scale (mRS) の本邦の医療環境下における信頼性を検討した. mRSのグレード判定において参考にすべき点を明示した判定基準書と, それに対応した問診票とをまず, 作成した. 次に9名の神経内科医が問診票に従って脳卒中 (今回は46名の脳梗塞) 患者を診察している様子をビデオに収録した. そのビデオを約8週間の間隔を空けて2回, 評価者 (医師10名, 看護師6名, 理学療法士4名) に呈示し, 判定基準書に従ってmRSを評価させた. その結果, 評価者間一致性の級内相関係数は, 医師0.947, コメディカル0.963と共に良好であった. また, 8週間の間を置いた場合の評価者内再現性は各々0.865, 0.871と良好であった. 以上の結果より, 著者らが作成した判定基準書および問診票を用いたmRS判定は, 評価の質の確保が可能であり, 本邦の医療環境下における臨床研究などに十分使用できるものであることが示された.
著者
赤塚 和寛 服部 直樹 伊藤 瑞規 冨田 稔 小野 玉美 森 悠
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10586, (Released:2018-01-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

【目的】Trousseau 症候群40 例の臨床的特徴を検討することを目的とした.【方法】2009 年4月~2016 年3 月の間,当院に入院した2273 例の脳梗塞(一過性脳虚血発作は除く)患者のうちTrousseau症候群40 例を対象に悪性腫瘍の種類,組織型,病期などについて検討した.悪性腫瘍に関連する血液凝固能異常を誘因として複数の動脈灌流領域に急性期脳梗塞所見を呈する多発脳梗塞をTrousseau 症候群と定義した.【結果】Trousseau 症候群は脳梗塞全体の約1.8%を占め,脳梗塞先行群はTrousseau 症候群の27.5%を占めた.悪性腫瘍の種類,組織型,病期では,肺癌(11 例),腺癌(23 例),IV 期(31 例)が各々最も多かった.【結論】Trousseau 症候群の27.5%は脳梗塞先行群であり,血液凝固能亢進を伴った多発脳梗塞では,悪性腫瘍を念頭に精査をすすめることが重要である.
著者
佐藤 祥一郎 園田 和隆 吉村 壮平 宮﨑 雄一 松尾 龍 三浦 克之 今中 雄一 磯部 光章 斎藤 能彦 興梠 貴英 西村 邦宏 安田 聡 小川 久雄 北園 孝成 飯原 弘二 峰松 一夫 日本医療研究開発機構「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発 に関する研究」班
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10587, (Released:2017-12-12)
参考文献数
57
被引用文献数
1

脳卒中に対する合理的,経済的な疾病対策を行うためには,悉皆性と信頼性を合わせ持つ国家的な脳卒中登録事業が不可欠である.わが国の診療実態に即した脳卒中登録システムに必要な条件を明らかにするため,システマティックレビューを行った.2015 年12 月31 日までに発行された,脳卒中登録研究に関する医学文献を,MEDLINE および医学中央雑誌上で検索し,1533 編の文献から,51 の登録研究(国外38,国内13)を抽出した.レビューの結果から,日本における質の高い脳卒中登録事業に必要な条件として,医療ID 導入による既存大規模データベースとの連携と,それを可能にする法整備,行政による公的事業資金,学会や患者支援団体,企業の支援による安定的な資金確保,情報公開の重要性が挙げられた.
著者
千田 譲 伊東 慶一 大山 健 米山 典孝 原 一洋 中村 亮一 野田 智子 橋詰 淳 熱田 直樹 伊藤 瑞規 渡辺 宏久 安井 敬三 小竹 伴照 木田 義久 岸本 秀雄 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.441-447, 2013-11-25 (Released:2013-11-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

要旨:【目的】回復期入院リハビリテーション(リハビリ)での脳梗塞branch atheromatous disease(BAD)の治療成績を検討した.【対象と方法】レンズ核線条体動脈領域(LSA-BAD)90 例と傍正中橋動脈領域(PPA-BAD)21 例に対し,入院時・退院時の脳卒中重症度(NIHSS),機能的自立度評価法(FIM),上肢・手指・下肢各Brunnstrom stage(BRS)を検討した.【結果】LSABAD群はPPA-BAD 群に比べ入退院時NIHSS は有意に重症であり,手指・上肢の機能改善は不良であった(p<0.05).LSA-BAD 群は入院時上肢・手指BRS の退院時3 段階以上の回復は稀だったが,両群とも退院時FIM は多くが100 点以上であった.【結論】回復期リハビリでのBAD を分類し検討することで,皮質脊髄路障害部位の違いによる運動麻痺と機能的自立度評価の回復過程を評価できた.
著者
窪田 瞬 平田 順一 小島 麻里 國井 美紗子 冨田 敦子 釘本 千春 土井 宏 上田 直久 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.370-373, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

要旨:症例は79 歳男性.糖尿病で内服加療を行っていたが,突然発症の右不全片麻痺を来し当院に救急搬送された.頭部MRI 拡散強調画像で左内包後脚に高信号を認めた.血糖が30 mg/dl と著明に低下しており50%グルコースを静注したところ症状は速やかに消失し,片麻痺の原因は低血糖によるものと考えられた.患者は過去にも低血糖による内包後脚のMRI 異常信号を呈し,右不全片麻痺を発症していた.低血糖発作による脳卒中様の片麻痺は過去にも報告がみられるが,同一部位に繰り返しMRI 異常信号を認めた例はこれまでにない.内包後脚が低血糖への脆弱性が高い脳組織の一つであることが示された.
著者
中奥 由里子 水本 智咲 萩原 麻衣 奥野 知子 松井 大
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.361-365, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

要旨:症例は69 歳男性.胸腹水貯留,好酸球増多の原因精査中に多発性脳梗塞を発症した.基礎疾患はT 細胞性リンパ腫と診断でき,リンパ腫に付随した好酸球増多であった.頭部MRI では大脳皮質・皮質下の境界領域,小脳半球などに多発する微小梗塞を認めた.好酸球増多症候群の1 症状としての脳梗塞と考え,ステロイドパルス療法を施行し,反応性に好酸球数が低下した.T 細胞性リンパ腫に対し化学療法を施行するも奏功せず,DIC を発症し多臓器不全となり死亡に至った.剖検では脳の血管内・実質には好酸球の浸潤を認めなかった.好酸球増多による脳梗塞の病理学的症例報告は少なく,貴重な症例と考え報告する.
著者
星野 晴彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10602, (Released:2018-02-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

動脈解離は我が国の脳卒中の0.7%を占め,その71.9%は虚血性発症であり,特に若年性脳 卒中の原因として重要な疾患である.我が国の動脈解離は後方循環,しかも頭蓋内椎骨動脈が多 く,破裂によるくも膜下出血の危険性を伴うことから,内科的治療選択が難しい問題がある.経静 脈血栓溶解療法については,動脈解離でも問題がなかったという報告が多いが,ほとんどは頭蓋外 動脈解離であり,頭蓋内動脈解離については慎重に症例を選択する必要がある.頭蓋外動脈解離を 対象とした無作為比較試験であるCervical Artery Dissection in Stroke Study(CADISS)では抗血小板療法 と抗凝固療法では転帰に差が認められなかったが,イベント数が少なく,動脈解離における抗血栓 療法についての臨床試験の難しさが明らかとなった.わが国で多い頭蓋内動脈解離については,出 血のリスクを考慮して,繰り返す画像診断で瘤形成がないことを確認しながら抗血栓療法の適応の 有無を慎重に検討する必要がある.
著者
東 邦彦 坂井 文彦 五十嵐 久佳 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.361-366, 1991-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
19

既往に片頭痛を持つ若年者に脳梗塞が発症した4例につき, 脳梗塞の危険因子としての片頭痛の意義につき検討した.症例1はmigraine with auraの発作中, 脳梗塞が発症したと考えられ, その病態としては前兆の原因となる脳血管攣縮が遷延し脳梗塞に移行したと考えられた.症例2~4の3例はmigraine without auraの患者で, 脳卒中発作は発症様式, CT, MRI所見よりはいずれも脳塞栓症と診断され, 脳塞栓症に頭痛が前駆あるいは随伴した可能性が考えられた.そのうち2例は妊娠中の発症であった.migraine without auraに脳梗塞が発症した機序としては, 片頭痛が脳梗塞に移行したというよりも片頭痛にもとづく血小板凝集能の亢進による5HT, ノルエピネフリンの放出, エストロゲソをはじめとする性ホルモンの変動による凝固系の亢進などを介して脳梗塞の危険因子となった可能性が考えられた.
著者
立花 久大
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-112, 2014 (Released:2014-03-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

要旨:糖尿病は脳梗塞の独立した危険因子であり,脳梗塞発症が2~3 倍高くなる.糖尿病はアテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞のみではなく心原性脳塞栓症に対しても危険因子として関与している.糖尿病患者では脳幹部,椎骨脳底動脈系の脳梗塞が多く,穿通枝領域に多発する中小脳梗塞が多い.脳出血についても糖尿病患者では発症が増加する可能性がある.脳卒中の一次予防についてはメトホルミン,リナグリプチンの脳卒中発症抑制効果が示唆されている.また,二次予防としてはインスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンによる治療が脳梗塞発症予防に有効であると報告されている.しかし脳卒中予防には血糖のコントロールのみでは不十分で,血圧,脂質代謝などを含めた複合的な治療が必要と考えられる.さらに脳梗塞再発予防には血管危険因子の管理とともに抗血栓療法が必要と考えられる.
著者
内山 真一郎
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.575-579, 2009

CHADS<sub>2</sub> Score is used for the risk stratification and treatment recommendation in patients with non-valvular atrial fibrillation (NVAF). NVAF patients with CHADS<sub>2</sub> Score ≥2 are at high stroke risk and recommended warfarin for stroke prevention. Those with CHADS<sub>2</sub> Score 1 are recommended aspirin or warfarin. However, according to the results of the Japanese Atrial Fibrillation Stroke Trial (JAST), aspirin did not reduce stroke risk and tended to increase bleeding risk in low-risk NVAF patients. Therefore, warfarin is recommended even in those with CHADS<sub>2</sub> Score 1. The Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged (BAFTA) Study showed that incidence of ischemic stroke was much lower in warfarin (INR 2–3) group than in aspirin group and incidence of hemorrhagic stroke was similar between both groups among elderly NVAF patients. The results of BAFTA indicated that warfarin is recommended even in elderly NVAF patients.<br>Efficacy of antiplatelet therapy for primary stroke prevention has not established in patients with asymptomatic brain infarction, carotid disease, or vascular risk factors alone. Thus, we conducted the Japanese Primary Prevention Project with Aspirin in the Elderly with One or More Risk Factors of Vascular Events (JPPP), a large randomized trial of aspirin for primary prevention of vascular events including stroke. However, there is a possibility that a risk reduction of vascular events is less than an increase of bleeding risk in primary prevention. Then, we conducted the Management of Aspirin-Induced Gastro-Intestinal Complications (MAGIC), a multi-center cooperative observational study on endoscopical investigation of gastrointestinal complications with aspirin in patients with vascular diseases including stroke.
著者
峰松 一夫 矢坂 正弘 米原 敏郎 西野 晶子 鈴木 明文 岡田 久 鴨打 正浩
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.331-339, 2004-06-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
14
被引用文献数
7 7

【目的】若年者脳血管障害の頻度や臨床的特徴を明らかにする.【方法】統一形式の調査票を用い,1998年と1999年の2年間に入院した発症7日以内の51歳以上の脳卒中症例の概略と,1995年から1999年までに入院した発症1カ月以内の50歳未満の脳卒中症例の詳細を全国18施設で後ろ向きに調査した.【結果】合計7,245症例のデータが集積された.発症1週間以内入院の全脳卒中に占める若年者脳卒中の割合(調査期間補正後)は,50歳以下で8.9%,45歳以下で4.2%,40歳以下で2.2%であった.背景因子を51歳以上(非若年群)と50歳以下(若年群)で比較すると,高血圧(62.7%vs.48.5%),糖尿病(21.7%vs.13.6%),高コレステロール血症(16.5%vs.13.1%)及び非弁膜性心房細動の占める割合(21.2%vs.4.7%)は非若年群の方が高く(各p<0.01),男性(58.9%vs.62.8%),喫煙者(19.3%vs.27.3%)と卵円孔開存例(0.7vs.1.2%)は若年群で多かった(各々p<0.01,p<0.01,p=0.08).TIAの頻度に差は無かったが,脳梗塞(62.6%vs.36.7%)は非若年群で,脳出血(20.8%vs.32.1%)とくも膜下出血(7.3%vs.26.1%)は若年群で高かった(各p<0.01).若年群の原因疾患として動脈解離,Willis動脈輪閉塞症,脳動静脈奇形,抗リン脂質抗体症候群などが目立ったが,凝固系の検査や塞栓源の検索は必ずしも十分ではなかった.外科的治療は37.5%で,退院時の抗血栓療法は31.9%で施行された.退院時転帰は26.0%で要介助,死亡率は8.8%であった.【結論】全脳卒中に占める若年者脳卒中の割合は低く,その背景因子は非若年者のそれと大きく異なる.若年者脳卒中への対策の確立のためには,全国規模のデータバンクを構築し,適切な診断方法や治療方法を明らかにする必要がある.