著者
中塚 康雄 天野 正明 垂井 健 坂本 守行 前川 明俊
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】大麦高含有食パンの普及のためには,低コストでふっくらとおいしく調製できる製パン技術の構築が喫緊の課題である。そのために大麦高含有食パンにおける製パン性支配因子とそのメカニズム,特にグルテンネットワークと食物繊維間の相互関係を検討し,大麦高含有食パンの調製技術に反映させた。</p><p>【方法】リテイルベーカリーで使用されている製パン機器類を使用して,山型食パンを調製した。基本配合は大麦粉0〜50%/小麦粉100〜50%の範囲で変化させた。それ以外の調製材料は,塩1.5%,砂糖8%,液種酵母8%のみとした。大麦粉は4品種(うるち性2種,もち性2種),小麦粉は2品種(強力粉,超強力粉)を用いた。大麦の製粉はピンミルを用いた。食物繊維と澱粉粒の解離状態をみるために,最初の製粉後に53μmメッシュの篩で分級し,53μmメッシュを通過しない粗大粒子群を再度製粉し,53μmメッシュの篩で分級し,それぞれに分級された大麦粉を用いて製パン試験を行った。次に製パン性改善の試みとして,dough ミキシング時に酵素製剤を微量添加した。大麦粉の物性評価として,食物繊維量,粒度分布,SEM形態観察を行った。製パン後の物性評価として,膨化率,表面割れ性,パン内部構造を比較し,併せて食味評価を行った。</p><p>【結果および考察】大麦品種の影響として高アミロース含量のうるち性品種が高膨化率を示した。小麦品種の影響として高蛋白質含量の超強力粉が最も高膨化率を示した。製粉〜分級の繰り返し試験では,分級後の微粒子群で膨化率の顕著な回復が見られ,食物繊維と澱粉粒の解離が進んでいた。酵素製剤の微量添加によってグルテン無添加型大麦30〜40%含有大麦パンの調製が可能となった。</p>