著者
有馬 雅史 坂本 明美 幡野 雅彦 徳久 剛史 岡田 誠治
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

転写抑制因子であるBCL6はTh2サイトカインの産生に対して負の制御を行っている可能性が示唆されている。我々は、Th2型気道炎症を呈する気管支喘息の病態の解明や新たな治療の開発のための基盤研究として、BCL6のTh2サイトカイン産生および喘息性気道炎症における作用メカニズムについて解析した。本研究では、以下の点について明らかにすることができた。1.BCL6はT細胞によるTh2サイトカインの産生を抑制し、少なくともIL-5遺伝子はBCL6の標的遺伝子であり、その機序としてIL-5遺伝子の第4エクソンの3'末端の非翻訳領域にBCL6が直接結合して転写活性を抑制することを示した。2.BCL6はTh1細胞や休止期のTh2細胞に対してIL-5遺伝子のstabilityに関与する。3.マウスの喘息モデルでBCL6の強発現によってのTh2サイトカイン産生を抑制し、好酸球を中心とする気管支喘息の気道炎症を減弱することによって気道過敏性の亢進を抑制した。3.BCL6は樹状細胞(DC)の分化や機能を介してTh2細胞の分化を制御する。したがって、BCL6はリンパ球以外に抗原提示細胞の機能も制御してTh2型反応を総合的に制御すると考えられた。以上よりBCL6はリンパ球とDCの両方に対してTh2細胞の分化や機能を制御してTh2喘息性気道炎症の病態に関与する可能性があることを示した.このような研究成果は単に気管支喘息の治療法の開発につたがるばかりか、アレルギー性疾患の発症メカニズムの解明にもつながることが期待できる点において大変重要である.