- 著者
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坂東 尚周
奥田 喜一
北沢 宏一
鯉沼 秀臣
井口 家成
庄野 安彦
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
本研究は、工業的に応用可能な優れた超伝導材料あるいは超伝導デバイスを創製するため、(1)異方性の化学的制御と新物質探索、(2)異方性とボルテックス状態の解明、(3)原子層制御と電子機能設計を目的として組織されたものである。成果は以下の通りである。(1)異方性の化学的制御と新物質探索高圧合成によりRe添加水銀超伝導体HR_<1-x>Re_xCa_<n-1>Cu_nO_yの単相化に成功し、ポストアニールによりピニング特性が改善された。中性子回折によりReとHgが規則配列し、異方性が低減することによると考えられる。高濃度Pb置換Bi2212単結晶で不可逆磁場の大幅な上昇が見出され、有効なピニングセンターの存在を示した。高分解能電子顕微鏡により、高濃度鉛相と低濃度鉛相が交互に帯状に析出し、この界面が磁束に対する有効なピンとして働いているとしている。この他低次元スピンギャップ系の梯子格子をもつ化合物やY247の構造に関し、新しい知見が得られた。(2)異方性とボルテックス状態の解明La系、Y系、Bi系の単結晶を用いて唯一の一次相転移とみられる磁束格子融解転移がSQUID、局所磁化測定、超音波測定、複素帯磁率、磁気トルク測定によって研究された。また、磁束融解転移が理論的に検討された。一方、27テスラまでの高磁場中での無双晶YBCOの磁束融解転移が明らかにされ、その他STMによる磁束に直線観察の試みがなされた。(3)原子層制御と電子機能設計STM、同軸イオン散乱分光法、RHEEDなど表面解析技術を駆使して表面原子層の制御や成長メカニズムの解明が行われ、薄膜作製における原子層制御技術は着実に進歩した。積層型SIS接合として、a軸配向した高T_cのY123酸化物薄膜の間にSrTiO_3を挟んだデバイスの作製に成功した。この他局在準位制御による接合の特性、Y123薄膜の準粒子注入効果、La系単結晶の固有ジョセフソン効果を用いたスイッチ素子の検討、Y123/強誘電体による電界効果などの研究が行われた。