著者
篠崎 惠美子 坂田 五月 渡邉 順子 阿部 恵子 伴 信太郎 藤井 徹也
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin Department of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.22, pp.37-44, 2014-03-31

本研究の目的は、模擬患者(Simulated or Standardized Patient: 以下SP)養成において、SP が熟達する過程ごとの特徴を明らかにすることである。 対象は、2002 年から2012 年までSP 養成者が作成したSP トレーニング時、SP 参加型授業時のSP の発言・行動記録、SP 養成者の感想および介入の記録である。SP 養成過程は、ドレイファス・モデルを参考に、初心者、新人、一人前、中堅、達人のレベルとし、得られたデータを各レベルに分類し、特徴をカテゴリー化した。 その結果、一般市民であったSP が熟達する過程の特徴として、以下のカテゴリーが抽出された。初心者レベルでは<SP として不確実な自分>を感じ、新人レベルでは<SP として不安な自分>を感じる。さらに一人前レベルでは<SP として自覚が芽生える自分>を認識し、中堅レベルでは<SP として成長を感じる自分>を実感する。そして、達人レベルに到達すると<SPを極める自分>の存在を認識する。
著者
坂田 五月
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、ゴム製湯たんぽと電気毛布の違いによる保温と安楽の効果を、性別に注目して比較検討した。研究の同意を得た健康な成人17名(平成13年度は9名、平成14年度は8名)を対象に2種類の温罨法を実施し、生理学的指標、主観的評価、寝床気候の変化を検証し、以下の結果を得た。1.ゴム製湯たんぽの足趾の皮膚温・皮膚血流量・冷感は、電気毛布より早期に改善し、実験の60分以降でほぼ平衡状態を保った。また、迷走神経活動を亢進させ交感神経活動を抑制する傾向がみられ、これらの結果は平成13年度のものと一致していた。男女の比較では、ゴム製湯たんぽの足趾の皮膚温・皮膚血流量・冷感・口渇感・快適感に性別による相違は認められなかった。2.電気毛布は足趾の皮膚血流量(p<0.01)、全身温冷感(p<0.01)に性別による相違が認められ、25分以降で女性が男性よりも高値となった。また、全身温冷感は120分間を通して男性の方が高値であった。しかし、ゴム製湯たんぽと同様に、足趾の皮膚温・口渇感・快適感では性別による相違が認められなかった。3.温罨法を実施しないコントロールでは、足趾の皮膚温(p<0.01)および皮膚血流量(pく0.01)、口渇感(p<0.01)、快適感(p<0.05)に有意差が認められ、それぞれの120分値は女性の方が男性よりも高値となった。電気毛布の継続的使用による交換神経活動の亢進、ゴム製湯たんぽの安楽の効果については、平成13年度の結果と一致していた。これに加えて、本研究で得た性別に関する結果も、看護者が温罨法の器具を選択する上で有効な基礎的資料と成りえる事が示唆された。
著者
坂田 五月
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

【はじめに】温罨法は、身体の一部に温熱刺激を与えることにより保温と筋緊張緩和を促進する看護技術である。これまでの研究に引き続き平成18年度の研究では、熱源が異なる器具を用いた場合の保温と安楽の効果に注目した。【研究方法】対象は研究協力の同意が得られた成人24名。実験は冬季に実施し、温度は20℃、相対湿度50%に調節した。下着と長袖寝衣を着用し、掛け物はアクリル毛布1枚とした。15分間の安静臥床の後に毛布で身体を被覆した。湯たんぽを貼用した。生理学的指標としてR-R間隔、表面皮膚温度、腋窩温、皮膚血流量、寝床内の温湿度を連続測定し、R-R間隔より心拍数と心拍変動解析によるHF、LF成分を求めた。HFのパワー値を副交感神経反応の指標、LFとHF成分の比(LF/HF)を交感神経反応の指標とした。心理学的指標として温冷感と湿度感、快適感をそれぞれリカートスケールで得点化した。統計解析、Wilcoxonの順位和検定により基準値との差とSpearmanの相関により各項目間の関連性を検証した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮】聖隷クリストファー大学倫理委員会による承認を得て実施した。【結果】安静臥床終了時の足趾皮膚表面温度21.86±3.48℃、寝床の足元温度21.85±2.64℃、足趾温冷感-2.83±0.92点。HFのパワー値は45分まで上昇し、30分と45分で基準値との間に有意差を認めた。全身温冷感は快適感との間に高い正の相関(r=0.703)が認めた。足趾温冷感は快適感(r=0.664)とHFのパワー値(r=0.255)との間に正の相関を認めた。【考察】足元に使用した湯たんぽによる皮膚表面への温熱刺激は、身体の温冷感を改善し副交感神経の活動を亢進させる。湯たんぽの効果は60分を目安に評価し、湯たんぽの温湯の交換や足浴など保温や安楽を促進する援助を再検討する必要がある。