著者
原 好恵 篠崎 惠美子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.51-60, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)
参考文献数
19

油性注射剤の筋肉内注射による硬結発生の実態は明らかでない. 乳がん治療薬フルベストラントによる硬結発生の実態, 筋肉内注射技術と注射時の看護ケアの実態を把握することを目的として, 自記式質問紙調査を行った. 全国のフルベストラントを使用している病院で勤務する看護師169名のうち有効回答の得られた54名を対象とした. 各項目は記述統計, Fisherの正確確率検定を用いて分析した. 硬結は30施設 (55. 6%) で発生しており, 患者の体型や合併症に関係なく発生し, 治療開始3ヵ月以降の患者に多い傾向があった. 第一選択部位は「クラークの点」 (66. 7%) が最も多く, 硬結発生と有意な関連 (P<0. 01) が認められた. よって「クラークの点」を優先的に選択する看護師が硬結を経験しやすい可能性があるが, 選択部位の工夫だけでは硬結予防が確実ではないと考えられた. 硬結予防のために行われていたケアはマッサージ (3施設) のみであり, ケアの実施が少ない現状が把握できた.
著者
石井 敏弘 小平 朋江 篠崎 惠美子 篁 宗一 仲村 秀子
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin Department of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.21, pp.25-31, 2013-03-31

機関リポジトリとは「大学とその構成員が創造したデジタル資料の管理や発信を行うために、大学がそのコミュニティの構成員に提供する一連のサービス」であり、デジタル時代における学術研究の基盤として位置付けられる。科学、技術、医学系分野の学術逐次刊行物(雑誌、年鑑など)の価格が大幅に上昇したこと、および大学等の研究機関で生産される多様な学術情報の発信強化が社会的要求となったことを背景に機関リポジトリは誕生した。機関リポジトリはこの2つの問題に対応する方策であり、その設置には ①学術コミュニケーションを変革させる、②社会や公共の観点からみた大学等の研究機関の価値を高めるという2つの主要な意義がある。この2点は機関リポジトリの本質であり、また機関リポジトリとは如何なるものかを理解する際、あるいは機関リポジトリを如何なる構成や内容で構築するのかと各機関が検討する際に基軸とするべきことと考える。機関リポジトリは相互運用性、およびコンテンツの質保証の点で優れており、1990年代に欧米を中心に広がっていった電子図書館と一線を画するシステムである。学術機関リポジトリに蓄積されたデータは国立情報学研究所のメタデータ・データベース等に自動的に集められ、ポータルサイトであるJAIROで一括検索できる。2012年10月末の時点で国立情報学研究所のデータベースには234の機関リポジトリ、143万件超(このうち「本文あり」106万件)のコンテンツが収集されている。
著者
江㞍 晴美 篠崎 惠美子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.9-18, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
36

目的:集中治療後症候群(post intensive care syndrome;PICS)に対する看護支援の国内外の既存の文献をレビューすることで、国内のPICSに対する看護支援を検討する基礎的資料とする。 方法:CINAHL、PubMed、医学中央雑誌Web版を用いて、過去10年間の英語または日本語の文献を検索し、重複等を除外して研究目的に該当する14文献を対象とした。マトリックス方式を用いたうえで1編ずつコードとして表し、類似したコードをグループ分けした。 結果:PICSに対する看護支援は、離床に関する文献(2 件)、ICU(intensive care unit, 集中治療室)日記に関する文献(2 件)、継続的支援と評価に関する文献(9 件)、集中治療を受けた患者の語りに関する文献(1 件)に大別された。14文献の国別では、北欧7件、オランダ2件、米国5件で国内の文献は見当たらなかった。 考察:本研究の結果から、PICSに対する看護の動向として、離床とICU日記に関する内容、継続的支援と評価、集中治療を受けた患者の語りが行われていると考える。国内のPICS に対する看護支援の課題として、PICS について看護師が理解を深めて患者への長期的な支援を行うとともに支援の評価が重要である。また、多職種による継続的な支援体制の体系化が必要である。
著者
江㞍 晴美 篠崎 惠美子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-20, 2021-03-31 (Released:2021-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

【目的】PICS(post intensive care syndrome,集中治療後症候群)アセスメントツールを作成し,妥当性と信頼性の検証を行う.【方法】先行研究に基づき78項目の作成と構成を行った.内容妥当性の検証は,各項目を「妥当である」~「妥当でない」の4段階で評価を求めた.信頼性の検証は,4事例の患者情報用紙と動画を見てもらい,ツールを用いた評価を求めた.【結果】内容妥当性の検証では,項目の採用基準を満たさなかった項目は,「70歳以上」「ICU日記」など8項目であった.「ICU日記」を除く7項目を削除したツール全体の妥当性は0.902であった.この結果よりツールの修正を行い,50項目に対して評価者間信頼性の検討を行った.ツール全体のκ係数は0.58で,中程度の一致度が確認された.正確度および所要時間を考慮し,最終的に37項目に修正した.【結論】PICSアセスメントツールの内容妥当性と信頼性を確認でき,PICSを日常的にアセスメントできる可能性が示唆された.
著者
為永 義憲 篠崎 惠美子
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-1, pp.15-26, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
27

〔目的〕看護学生の訪問看護ステーションへの就職意向と訪問看護実習での経験との関連を明らかにする。〔方法〕看護系大学4年生387名に、webアンケートによる無記名自記式質問紙調査を行った。単純集計後、訪問看護ステーションへの就職意向と基本属性、訪問看護実習での経験との関連をみた。〔結果〕102名を有効回答(26.4%)とした。訪問看護ステーションで将来働きたい者は29.4%で、卒後すぐに働きたい者はいなかった。訪問看護に関心がある者は57.8%で、実習時期は4年次(62.7%)が最も多かった。訪問看護ステーションへの就職意向は、訪問看護に関する関心、実習時期、実習の満足度、訪問看護師の学生のことを知ろうとする関わりと関連がみられた。〔考察〕看護学生の訪問看護ステーションへの就職意向には、訪問看護実習での経験が重要と示唆された。訪問看護ステーションへの就職を検討するには、インターンシップや新卒訪問看護師に関する情報提供と、就職活動以前に訪問看護実習を経験することが重要と考えられた。
著者
篠崎 惠美子 坂田 五月 渡邉 順子 阿部 恵子 伴 信太郎 藤井 徹也
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin Department of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.22, pp.37-44, 2014-03-31

本研究の目的は、模擬患者(Simulated or Standardized Patient: 以下SP)養成において、SP が熟達する過程ごとの特徴を明らかにすることである。 対象は、2002 年から2012 年までSP 養成者が作成したSP トレーニング時、SP 参加型授業時のSP の発言・行動記録、SP 養成者の感想および介入の記録である。SP 養成過程は、ドレイファス・モデルを参考に、初心者、新人、一人前、中堅、達人のレベルとし、得られたデータを各レベルに分類し、特徴をカテゴリー化した。 その結果、一般市民であったSP が熟達する過程の特徴として、以下のカテゴリーが抽出された。初心者レベルでは<SP として不確実な自分>を感じ、新人レベルでは<SP として不安な自分>を感じる。さらに一人前レベルでは<SP として自覚が芽生える自分>を認識し、中堅レベルでは<SP として成長を感じる自分>を実感する。そして、達人レベルに到達すると<SPを極める自分>の存在を認識する。
著者
藤井 徹也 玉腰 浩司 中山 和弘 大林 実菜 田中 悠美 篠崎 惠美子
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin Department of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.22, pp.45-52, 2014-03-31

本研究は、看護師養成機関における性同一性障害(gender identity disorder : 以下GID とする)学生の演習・実習指導などについて、受け入れ経験者から得た具体例を検討した。対象は、身体的性は女性であるが自己認識は男性であるFTM(Female to Male Transsexual)学生の受け入れ経験のある教員3名である。結果、GID 学生の治療状況により、演習などのグループやトイレ、更衣室の使用が変化した。特に身体の外観的が男性と認識できれば、男子学生として受け入れ、女性であれば女子学生として受け入れていた。女子学生として受け入れた場合は、本人の意向によりユニフォームの考慮や演習時のペアを特定するなどの対応が必要であった。今回の3事例に関わった教員は、全てGID 学生の相談などを担当し、演習や学内行事の前にGID 学生と話し合いを行うことで、最善な対策を選択することを心がけていた。