著者
宮木 陽介 坂田 禮一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0168, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】頭部外傷は主に交通事故により発症し、身体・認知・行動に影響を及ぼす。今回、日々の活動性の向上が心身両面の改善に結びついた一症例を報告する。【症例紹介】10代女性。バイクで通学中に乗用車と正面衝突。急性硬膜下血腫と診断。障害として右片麻痺・右顔面神経麻痺・高次脳機能障害を呈した。昨年高校を卒業。来年には看護学校進学を希望。現在、受傷後1年半経過し自宅での受験勉強が中心の生活。今後のことを考え、足のふらつき防止やバランス改善を目的として当院にてリハビリを希望される。【PT評価】ADLや屋外歩行は自立。軽装具を着け自家用車を運転して通院。右片麻痺の影響から右足関節と足指の軽度感覚鈍麻と随意運動遅延、右大腿四頭筋や下腿三頭筋の筋力低下、歯磨きや書字などでは右肩の筋緊張が亢進しやすい。長時間歩行での右足指の痛みがあり、バランス障害により右支持片脚立位時間が開眼25秒、閉眼2秒で動揺が強く、閉眼足踏みでは麻痺側へ90度の回転が生じる。高次脳機能ではいくつか聞いたこと覚えておいてから後で書き写すことが苦手で記憶面に不安を残す。なお看護学校進学レベルの知能や教養は身につけているとのこと。現在、老人ホームにてタオルたたみなどのボランティアをしている。【PTプログラム】立位バランスでは上下肢に徒手的抵抗を加え反応を引き出すことや足底の感覚入力をしながら足部内荷重や重心移動を学習。筋力低下にはフィジオボールを使い、弱化筋と体幹筋を強化。歩行では片脚での支持性改善や重心移動を念頭に爪先立ち歩きや骨盤歩き、木を足底に入れて滑らす歩行を行なう。自宅練習では片脚立ちや腕立て伏せ、スクワットを指導。【本人の行動や言動】週1回のリハビリを始めて1ヶ月で右足内側への荷重感をつかみ、歩行時の右下肢分回しは減少。しだいに活動性が向上し陶芸やお花、エアロビクス、アルバイトを始める。これ以降、台所や家の中で履いている草履が以前は脱げてしまっていたものが足指で挟んで落ちないようにすることが感覚でつかめてくる。歯磨きでも以前は歯にあてた感じがなく、たださすっているものだったのが最近ではしっかり歯にあてて磨いている感じがする。右片脚立位時間が延長し手摺につかまらないでも階段で歩けるようになるなど機能的回復が見受けられた。中でも商品の品だしや重いものを運ぶ作業、走ること、話すことが多いなど本人は楽しいと話しているスーパーでのアルバイトが良い体験となったと思われる。【まとめ】意欲的にアルバイトやエアロビクスなど様々な体験をすること、勉強以外での楽しみや活動の場をみつけたことが心身への刺激となり体力の向上・機能的回復を手助けしたものと考えられる。今後、目標としている看護学校進学では精神的・肉体的に最大限の集中が求められてくる。理学療法士としてどのようなサポートをしていけるかよく考え行動していきたい。