著者
森 源治郎 今西 英雄 坂西 義洋
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.387-393, 1991
被引用文献数
1

1.露地栽培株の茎頂における生殖生長への転換は10月上&bull;中旬で, 年内に花被形成段階まで進んだ後,発育を停止した. 翌年の4月中&bull;下旬に発育を再開し,花芽は5月中&bull;下旬に雌ずい形成期, 7月上旬に花粉形成期に達し, 7月下旬に開花した.<BR>2.7月1日から25&deg;Cに保った株では戸外株と同様2か月後においても花芽は未分化であったが, 150および20&deg;Cに移すと分化が認められた.<BR>3.小花原基形成期~花被形成期に達した後雌ずい形成期までの発育, 雌ずい形成期に達した後花粉形成期までの発育, さらに花粉形成期に達した後開花までの発育は, ともに25&deg;Cの高温で早められた. しかし,花粉形成期後の高温は開花時の花茎長および小花数を減少させた.<BR>4.促成を目的とした加温栽培のうち, 最も早く開花がみられたのは11月下旬からの加温 (最低20&deg;C) 開始で, 自然開花期より約2か月早い5月下旬に開花した. さらに加温中, 長日 (16時間) を与えると, 9月中旬からの加温開始が最も早く, 4月中旬に開花させることができた.
著者
梁川 正 坂西 義洋
出版者
園藝學會
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.250-260, 1977
被引用文献数
2 7

1. <i>Hippeastrum</i> のりん葉基部の組織片を母球上のしゅじゅの位置から採取し, 無菌培養を行なって, これらの子球形成能力を比較するとともに, りん葉上の各部位および底盤部の組織片からの子球形成の可能性を見た. 各培養片は直径6mmのコルクボーラーで打抜かれたもので, 0.8%の寒天と2%のショ糖を加え, 生長調節物質無添加物 White の培地に置床した.<br>2. りん葉最下端の培養片の子球形成率は, 25&deg;Cと30&deg;Cで最大であった. 光の存在は子球の発育を促すが,子球形成そのものには明暗の差がなかった, また培養片の採取季節による差も認められなかった.<br>3. りん葉最下端の培養片ことに底盤部組織がこれに付着している場合の子球形成率は大であったが, 底盤部から2mm離れた部位のりん葉培養片の子球形成率はわずか3%であり, 3mm以上離れた部位のものでは子球形成がみられなかった. りん葉と底盤の両組織にまたがる培養片では, りん葉の最下端から子球, 底盤部から根を形成した. 底盤部のみの培養片ではなんらの形成も認められなかった.<br>4. 筒状りん葉において, 葉身側は肉が厚く, 反対側は薄くなっている. りん葉最下端の組織片をりん葉の全周にわたって採取し, それぞれの子球形成能力を比較したが, 厚い部分と薄い部分, その中間の部分の差は認められなかった. しかし底盤部に厚薄2枚の隣接りん葉片をつけた培養片を採取し置床した結果, 子球は培養片の両側のりん葉表皮露出面からよりも, 2りん葉片にはさまれた部分に形成されることが多かった. 露出面からの形成について見ると, 薄いりん葉片の方が厚いりん葉片よりも高い形成率を示した. このことは葉身と反対側のりん葉葉えきの再生能力が他の位置より高いことを示唆している.<br>5. 母球上でより外部の位置にあり, 成熟の進んだりん葉の培養片ほど子球形成率は全般的により大であった.<br>6. 子球形成は基本的には, りん葉基部の背軸面で行なわれるが, 向軸面を上にして置床した場合または液体培地で振とう培養した場合には, 一部の培養片で向軸面からの子球形成が認められた. りん葉基部の組織片を縦に2分して背軸, 向軸の両面に分けて培養すると, 向軸面に子球形成を行なうものが生じた. 向軸面も形成能力を有するが, 背腹両面を有する培養片では, より形成能力の高い背軸面の存在によってそれが抑制されているものと思われる.