著者
坪内 俊二
出版者
名古屋市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

腰痛の発生にはいろいろな原因があるが、椎間板性の腰痛は最もよく知られているもののひとつである。現在までに椎間板そのものの神経支配についてはよく調べられており、線維輪の外側3分の1までしか神経の存在が認められないとされている。しかし、椎間板の上下にあたる椎体終板における神経支配はほとんど発表されていない。ここに神経、特に疼痛の伝達物質であるSubstance-Pをふくむ神経の存在を調べれば、腰痛の発生機序並びに椎間板の栄養の調節機構を解明する一助となると考えられ本研究を開始した。15EA02:本研究は免疫組織化学的方法がもとになっている。まずはじめにクライオスタットを用いて凍結切片を作成する技術を習得した。その後、家兎・剖検・手術材料などから得られた椎体終板・椎間板・棘上棘間靱帯・仙腸関節などに存在するであろうと思われる神経週末をsubstance-P,S-100蛋白,neurofilament,PGP9.5などに対する抗体を使いABC法にて染色した。現在までのところ、神経組織がうまく染色されたのはヒトの棘上靱帯のみであり、終板部ではまだみつかっていない。ヒトの骨は動物のものに比べて脱灰しにくく、クライオスタットで切っても軟部組織との境界部で固さの違いにより、うまく切れなかったり、切片を厚くすると染色時にはがれやすいなどの難点を抱えている。これらを試行錯誤により改善しつつ、本来の目標であるヒト椎体終板染色を行っているところである。当然調べられていいはずの椎体終板部での発表がないということは(ラットやマウスでは2-3みられる)、脱灰、染色などで同様の苦労をしていると考えられる。何とかこれを克服して神経終末の存在の有無を明らかにしたい。また、コンスタントに染色して神経の存在を確認することが出来るようになれば、変性を誘発するような処置、椎間板切開・振動させる・adjuvant-induced arthritis modelを作製するなどして神経分布の変化を調べることができる。