著者
村瀬 香 佐藤 俊幸 奥田 圭
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

原発事故が野生動物の遺伝子に与える影響に関するこれまでの研究には、汚染度が異なる地域間で比較したものは報告されているものの、同じ場所で、事故前後の比較を行なった報告はほとんどない。そこで本研究では、事故前からサンプリングしているイノシシを研究材料として、汚染度が異なる地域間と、同じ地域の事故前後において比較し、イノシシの遺伝的組成の変化を明らかにすることで、野生動物の被曝影響を分析することを目的としている。昨年度は複数の地域でイノシシのサンプリングを行なった。その際、調査地域、性別、サイズなどの生態データを集めるとともに、既存のソフトではなくプログラミングを通じて解析しやすいようにデータを整理した。また、マイクロサテライトを用いたフラグメント解析とシーケンスを行なった。特に昨年度は、ゲルマニウム半導体検出器で汚染度を測定する目的ですり潰して時間が経過したサンプルを対象に、どのような実験条件なら塩基配列を決定することができるのかを検討した。その結果、比較的多くのサンプルで塩基配列を決定することができる条件が明らかになった。さらに、そのうちのいくつかのサンプルについては、ハプロタイプを決定することが出来た。学術論文としては、原発事故や自然災害などの緊急事態には、長期的な視野に立った従来の解析手法を選択するよりも、ベイズ法を用いた統計モデリングの方が有用であることついて啓蒙する論文を執筆した。
著者
牧野 利明 大澤 匡弘
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハナトリカブトの根を減毒処理のために加熱加工した生薬である加工ブシの有効成分としてneolineを単離し、その神経障害性疼痛に対する有用性を明らかにしようと試みた。加工ブシ熱水抽出エキスは、指標成分であるbenzoylmesaconine (BM)を0.042%と最も多く含み、次いでneoline 0.026%、benzoylaconine (BA) 0.010%を含んでいた。この加工ブシをラットに経口投与後、経時的に採血し、各アルカロイドの血中濃度を測定したところ、15分後の血中からはその順で高濃度に検出された。一方、9時間におけるBM、neoline、BAの血中濃度曲線下面積は、それぞれ64、65、32 ng/mL・hrと、neolineとBMは同等の値を示したことから、BMと比較してneolineの生物学的利用能は比較的高いことが推測された。市販されている13種類の加工ブシ製剤中のneolineの含量は、0.042 ± 0.016%と高いバラツキがあり、また修治前のウズを減毒のために加熱加工処理しても、neolineの含量は変化しなかった。以上のことから、neolineのトリカブトの根中の含量は、加熱加工(修治)によるものではなく、トリカブトの栽培条件によることが推測された。Paclitaxicelによるマウス神経障害性疼痛に対して、加工ブシ末およびneolineは有意な緩和作用を示したものの、BMは有意な緩和作用を示さなかった。Neolineの作用機序の1つとして、Nav1.7に対するアンタゴニスト作用が認められた。以上のことから、加工ブシの神経障害性疼痛に対する有効成分は、指標成分であるBMではなく、neolineである可能性が示唆された。
著者
村元 麻衣
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.151-170, 2006-12-24

本論文でほまず1章で、日本語とドイツ語におけるオノマトペの定義を検討した上で、オノマトペの定義をさだめる。2章では、ドイツ語の3つの辞典上でのオノマトペの記述を比較考察した後、ドイツ語のオノマトペの動詞・名詞・副詞といった品詞による分類と、子音に着目した音韻形態の分析を行う。さらに音と意味との関係を考察し、ドイツ語のオノマトペの特徴を探る。3章では、日本の文学作品のオノマトペとそのドイツ語翻訳版との比較、ドイツの文学作品のオノマトペとその日本語翻訳版との比較をし、それぞれの現れ方からドイツ語のオノマトペの表現法と特徴を考察する。4章では、ドイツ語のオノマトペの変遷と発展にふれ、この研究のまとめとした。日本語のオノマトペは擬音語・擬態語を指すのに対し、ドイツ語のオノマトペは主に擬音語に焦点が当てられている。ただし、例えば日本語のオノマトペ「バタバタ」のように、鳥が羽ばたく際に出る音としての「バタバタ」と、鳥が羽ばたく様を描写した「バタバタ」のような、両者にまたがるものもあり、ドイツ語のオノマトペも同様に擬音語と擬態語との区別がつきにくいものがある。また日本語のオノマトペは副詞が多く、「バタバタ」のように同じ音が二回あるいは三回重複した形で構成されているものが多いため見分けがつきやすいが、ドイツ語のオノマトペは動詞が多く、ある音あるいは様態を模写する働きの擬音・擬態の部分、つまり「音の響き」が、「quatschen(ベチャベチャしゃべる)」のように語全体に溶け込み一語となっているため、オノマトペとしての区別が付きにくいのである。本論文ではこの相違を、それぞれの「オノマトペ性」とし、分析を試みた。
著者
大津 廣子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
オイコノミカ (ISSN:03891364)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.153-169, 2005-09-01
被引用文献数
2
著者
大澤 匡弘
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

慢性疼痛の中でも神経の損傷に伴う痛みである神経障害性疼痛は、既存の鎮痛薬では緩和することが難しい疼痛の一つである。本研究では神経障害性疼痛モデルを作製し、大脳における神経系機能の亢進について検討を行い、その調節による疼痛緩和の可能性について検討を行った。神経障害性疼痛モデルマウスにみられた痛覚過敏は、神経伝達物質の放出を抑制するガバペンチンにより改善した。このガバペンチンの効果は、神経障害後 3 日間の処置でみられたが、神経障害による痛覚過敏が出現してからの処置では改善しなかった。このことから、ガバペンチンは大脳へ作用して神経障害による痛覚過敏の形成を抑制することが明らかになった。次に大脳における神経系細胞の機能変化について検討を行った。大脳の帯状回皮質においてミクログリアならびにアストロサイトの活性化が認められた。また、ミクログリアの活性化を調節する薬物であるミノサイクリンを帯状回皮質へ処置すると神経障害による痛覚閾値の低下が抑制された。このことから帯状回皮質におけるミクログリアの活性化は神経障害による痛覚過敏の発現に関与することが明らかになった。また、ミクログリアの抑制は、アストロサイトの活性化も抑えた。さらに、興奮性の神経伝達に関わるグルタミン酸神経の受容体機能の神経障害による亢進も、ミノサイクリンにより改善した。これらのことから、神経障害により帯状回皮質においてミクログリアが活性化し、この脳領域での興奮性神経伝達を亢進させるため、痛覚過敏が生じていることがわかった。
著者
井上 禎男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.155-193, 2006-06-24

フランスにおける情報公開法制と個人情報保護法制とのかかわりを整理し、2004年改正1978年法下でのフランスの個人情報保護法制につき、とくに当該分野の第三者機関であるCNIL(情報処理と自由に関する全国委員会)の実務に焦点をあてながら検証する。
著者
米勢 治子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.93-106, 2006-01-10

1990年の出入国管理及び難民認定法の改正に伴い、ブラジルを中心に多くの日系人が来日するようになった。愛知県は日系労働者が集住している地域であるが、出稼ぎとして来日した彼らが、地域住民とコミュニケーション手段を持たないまま、滞在が長期化するなかで、いくつかの問題が顕在化してきた。多文化共生社会到来との掛け声のなか、彼らへの言語保障をどのような形で行うのか、具体的な施策が必要とされている。戦後、国内の日本語教育は留学生教育として発展し、日本の経済成長と国際情勢の変化ともにさまざまなタイプの外国人を受け入れてきた。彼らへの日本語教育の進展に伴い、その専門性も確立されたが、地域日本語教育と呼ばれるボランティアを主体とした新たな局面を迎えるにあたって、今日的な課題が生まれた。すなわち、日本語教育を求める学習者への対応は可能であっても、日本語教育が必要と思われるすべての人々への対応にはいたらないことである。外国人住民の日本語能力に関する調査はないが、その潜在的な学習ニーズを推測することによって、日本語教育実施状況とのギャップが大きいことが分かる。受け入れた人々への言語保障の視点を持つならば、ボランティアによる地域日本語教育では限界がある。移民先進国の第二言語教育施策には、参考にすべきことも多い。そして、日本語学習機会が保障されてもなお、ボランティアによる活動は、多文化共生社会構築のために必要不可欠なものである。
著者
原口 耕一郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.204-188, 2008-06

『古事記』『日本書紀』においては、かなり古い時代の記事から隼人は登場する。この隼人関係記事の信憑性をめぐって、大きく二つの議論がある。一つは天武朝以降の記事からならば、それなりに信を置くことができるとする理解であり、これは現在の通説になっているといえよう。もう一つは、天武朝より前の時期の記事にも史実性を認めようとする理解である。小論は、これまでの隼人研究史を回顧し、隼人概念の明確化をはかり、『記・紀』に史料批判を加え、天武朝より前の隼人関係記事については、ストレートには信を置きがたいことを論じようとするものである。つまり、可能な限り通説の擁護を目指すことが小論の目的である。まず、文献上にあらわれる隼人様を整理し、隼人概念の明確化を行う。次に考古資料と隼人概念との対比を、最近の考古学研究者の見解を踏まえながら行う。さらに畿内隼人の成立について触れる。その結果、『記・紀』編纂時における政治的状況、すなわち日本型中華思想の高まりの中で、政治的に創出された存在としての隼人の姿が明らかにされるであろう。このような、現在の隼人理解において中核的なテーゼをなす、「隼人とは政治的概念である」という主張を確認したうえで、天武朝より前の隼人関係記事は漢籍や中国思想により潤色/造作を受けていることを明らかにする。
著者
村田 志保
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.205-219, 2009-12-23

接頭辞「お」は、日本語の敬語体系に属しており、尊敬語、謙譲語、美化語に関係している。しかし、接頭辞「お」の付いた形(「おかばん」「お菓子」「おやつ」など)自体は、尊敬語、謙譲語、美化語ともに変化はなく、みな同じ形である。そのため、日本語教育において、接頭辞「お」を扱う場合、同じ形をどう教えるかが、問題となってくる。本稿では、日本語教育において、接頭辞「お」をどのように扱うとより学習しやすくなるのかを踏まえながら、接頭辞「お」の持つ用法分類を検討した。先行研究より接頭辞「お」は、一般的な敬語分類において、「尊敬語」「謙譲語」「美化語」に関連していることがわかっているが、実際の現場においては、「美化語」ではなく、「丁寧語」という解釈もある。このような扱いについて、敬語の5分類にこだわらず、接頭辞「お」の用法として学習者に説明するという立場から、「おかばん」などの語を代表とする[敬意の「お」]、「お菓子」などの語を代表とする[丁寧の「お」]、「おやつ」などの語を代表とする[名詞化した「お」]という三つの用法に分類するという仮説を提案し、それらについての検証方法を考察した。
著者
青木 孝義 谷川 恭雄 中埜 良昭 湯浅 昇 岸本 一蔵 丸山 一平 高橋 典之 松井 智哉 濱崎 仁 迫田 丈志 奥田 耕一郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、2009年にイタリアで発生した地震により被害を受けた文化遺産建築の被害調査を実施して、被害状況と応急処置方法を系統的に整理し、1970年代以降に文化遺産建築に対して行われたRC補強の効果を検証し、モニタリングにより補強前、補強途中の構造的安定性と補強後の補強効果を検証することにより、また、関連する国内外の文化遺産建築の調査を通して、文化遺産建築の有効な修復・補強方法、地震によるリスクから文化遺産建築を保護する方法に関する海外学術調査を実施したものである。
著者
滝村 雅人
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.67-82, 2006-06-24

「発達障害者支援法」は2004年11月に制定されたが、その背景には戦後のわが国の障害者福祉・障害児教育をめぐる様々な変遷があった。その意味でも遅きに失した感があり、その内容からも「理念法」的な性格が見られる。しかしながら、「発達障害」という障害に焦点を当て、その存在と対応の必要性を提起した点では、重要な意味を持っているといえる。その内容の柱は、発達障害の早期発見・早期対応、学校教育における支援、就労の支援と自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援にある。分野としては、保健・医療、教育、労働、社会福祉にわたる総合的対応策を講じることを目的としている。拙論は、これらの各分野ごとに関係条文を整理しながらそれぞれの課題を整理したものである。いずれの分野においても重要な課題は、専門家の養成と専門機関・施設の整備であり、またそれを利用するための経済的保障である。その意味でも、今後の実践を踏まえた制度の再構築が重要課題といえる。
著者
太田 昌孝
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-69, 2005-01-14

本論は、1、詩「白い鳥」に見られる宮沢賢治の宗教観について、と、2、宮沢賢治作品の原風景としての安倍氏の興亡(白鳥伝説)とに分けられる。1においては大正11年11月の、妹宮沢トシの死を契機に賢治の宗教観(死後観)が如何に推移したかを、詩「白い鳥」の作品分析を行うことにより明らかにした。それによると、「白い鳥」制作時(大正12年6月)における賢治は未だトシの死がもたらした喪失感から抜け出す気配はなく、『古事記』に描かれている倭建命の死後の姿に仮託する形でトシの死を受け止め、やがて賢治が立ち向かうことになる、「青森挽歌」での、トシの死の意味づけとは遠い境地にあることを考察した。また、2においては、岩手に生まれ、岩手に生きた宮沢賢治の意識の原風景の中に刷り込まれていると考えられる、前九年の役における安倍一族の興亡の現実と賢治の作品への影響を、具体的な作品を提示することにより論考した。宮沢賢治の作品(詩)に前九年の役(安倍氏の興亡)を明らかに表しているものは発見できなかったが、それをイメージの源泉にしていると考えられる作品は幾つか提示した。加えて、前九年の役に内包されている〈白鳥伝説〉と賢治詩との相関についても若干の考察を試みた。
著者
菅原 真
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.13-27, 2009-06-30

フランスの1789年「人および市民の権利宣言」における「市民」概念は、外国人を排除する観念であるのか。本稿は、この問いにささやかな検討を加えるものである。この問いに対して、フランスの公法学説には二つの対立する見解がある。第一の説は、人権と市民の権利の間を「分離切断」し、外国人を含む全ての人に属する権利と、外国人には保障されずフランス市民だけに限定された権利とに区別する考え方である。第二の説は、人権宣言の起草者たちの「普遍主義」的ないし自然法論的観点からこの1789年宣言を再定位するというものである。1789年宣言の諸条項それ自体を再検証し、またフランス革命初期における立法者意思、1789年当時においては「普遍主義的潮流」が「ナショナルな潮流」を上回っていたこと等を総合的に斟酌すると、この第二説の解釈が妥当性を有すると考えられる。
著者
水野 みか子 マルク バティエ ダニエル テルッジ
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、 20世紀半ば以降の現代音楽に関して「ひびき」の概念を打ち出し、和声、旋律、律動という三分法でも、音高、持続、強度、音色という四分法でもない音楽構成分析の視軸を提示した。研究過程では、歴史研究、分析研究、創作実践の三つの分野を横断する形で、当該時代の作品や作曲家の新生面を明らかにした。「ひびき」という用語は、専門性が薄く、音楽学や音楽分析ではなく、むしろ評論や日常の言葉として頻用されるが、それに対して本研究では、あえてこの一般的な語を引き合いに出して、その一般性が示唆する、学問分野を越えた研究分析方法を打ち立てることをめざした。
著者
筒井 義郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
オイコノミカ (ISSN:03891364)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-34, 1986