著者
坪村 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.632-635, 1998-10-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
6

従来の高校教科書では電池の項の説明をボルタ電池から始めるものが多い。しかしボルタ電池は, 歴史的な立場はともあれ, 実際は非常に複雑な現象を含むものであり, また安定した起電力を保つことも難しいものであって, これを電池の話の導入に用いることは無理がある。またそのためか, 従来の教科書のボルタ電池の説明には誤りが多く, 化学教育上必要のない, 複雑で末梢的な記述が多い。電池の仕組み, 特長を教えるには, ボルタ電池はやめにして, ダニエル電池などを導入に用いることを勧めたい。
著者
坪村 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.722-725, 1998-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

高校教科書・化学IIの化学平衡の記述について意見を述べた。化学平衡状態にある物質の濃度や圧力の量的関係を与える化学平衡の法則は熱力学(化学ポテンシャル)から導かれるものであるが, これは高校の範囲を逸脱した難解なものであり, したがって実験的に見出された関係として教えることが適当と考える。この法則を反応速度式から導くことはわかりやすいものであるが, 事実に反するからすべきではない。以上の点について, 現行の教科書はおおむね妥当な記述をしている。ただ, この法則を質量作用の法則と呼ぶことは速やかに改めるべきであろう。