著者
北野 尚美 鈴木 啓之 西尾 信宏 垣本 信幸
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

川崎病は乳幼児に好発する急性の全身性血管炎で、後天性の心障害の原因となる。病因は解明されておらず、その疫学的特徴から感染性因子の関与が示唆されている。本研究では、発症に感染性因子が関与するならば、宿主の年齢は重要な条件の1つと仮説を立て、罹患者の発症時の年齢層によって、性別の分布や発症した季節に特徴があるかを調べた。和歌山川崎病研究会が年1回実施した和歌山県内の小児科病床を有する医療機関を対象とした川崎病新規症例の調査(回収割合100%)の資料をもとに電子データベースを構築した。本研究では連続する1945例を対象に疫学的記述を行った。発症時年齢は5分割(4か月未満、4-10か月、11-47か月、48-83か月、84か月以上)し、その特徴を分析した。全体では、男女比は1.4で、年齢は1か月から212か月に分布を認めた。年齢層別に観察した結果、4か月未満で男女比は2.0で、年齢が大きくなるにつれて罹患者に占める男児の割合が小さくなる線形の関連を認め、7歳以上の年齢層では男女比が逆転して1未満であった。川崎病発症の季節性については、全体では冬が33%を占め、秋は19%であった。年齢層別に観察すると、4か月未満の6割が夏と秋に発症していた。本研究の特徴として、研究対象としたデータの選択バイアスが小さいことがある。和歌山県は疫学研究に有利な地理的条件を備えており、県内全域から17年間に報告された全症例を対象として研究を実施した点が本研究の強みである。川崎病発症時の患者年齢と発症の季節性については、年齢層によって発症のトリガーとなる環境要因(ここでは感染性因子を仮定している)が異なることを示唆する結果と考えている。