著者
遠田 利之 執行 直之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-II, エレクトロニクス, II-電子素子・応用 (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.244-251, 1996-06-25
被引用文献数
4

ディープサブミクロンCMOSの実現における重要な課題の一つが,pMOSでの埋込チャネルと表面チャネルの選択である.これまで,埋込チャネルは微細化や低電圧化が難しいと考えられてきた.これは,短チャネル効果が顕著であり,Sスイング(Subthreshold-Swing)も大きいからである.但し,従来の検討は埋込層が深い場合に対して行われた.微細化に伴い接合は浅くなるが,埋込層が浅い場合の検討は充分ではなかった. そこで我々は,埋込チャネルのSスイングおよび短チャネル効果の,埋込層およびソース/ドレーン接合深さ依存性をシミュレーションにより解析した.この結果,埋込層が完全に空乏化する程浅ければ,表面チャネルよりもSスイングが低下し,サブスレッショルド特性が急しゅんになることがわかった.すなわち,Sスイングを極小とする最適構造は表面チャネルでなく,埋込チャネルにあることを初めて見いだした. この構造をCDSC(Counter-Doped Surface-Channel)と呼ぶ.更に,ソース/ドレーンを埋込層より浅くすれば,短チャネル効果も表面チャネルより抑制できることも明らかになった.すなわち,CDSCはディープサブミクロンに適用できるpMOSとして有望である.