著者
堀 慧 鳥海 徹 田辺 昭
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-36, 1965

1.diaveridineを飼料に最高0.01%から最低0.0001%までの各種の濃度になるように添加して,これを連続投与して本病の感染予防試験を行なった.その結果0.01%ならびに0.005%添加区においては感染が認められなかったが0.0025%以下の添加濃度では感染鶏が高率に認められた.従って本剤の最低有効濃度は一応0.005%の附近にあると思われる.しかしながら1964年度は,全国的に本病の予防剤としてpyrimethamineが発売されたため,岡山県下でも本病の発生が少なく,岡山大学農学部構内の鶏舎でも本病の感染率が一般に低かった.すなわち第1区の無添加対照区の感染率は35.0%であり,同時に行なった他の試験でも,薬剤無添加区での感染率は20~30%が普通であって,第1試験でみられたような濃厚感染は認められなかった.第2試験の0.001%添加区で81.3%の感染率を示したのはむしろ例外的現象と考えられる.従って第2試験の0.005%添加区がもしさらに濃厚な感染に曝された場合,果して完全に本病の感染を防ぎ得るか否かは疑問であるので,本剤を実地に応用する場合,最低有効濃度は0.005%より上にあると考えた方が安全と思われる.2.試験期間中における試験鶏の体重,産卵率,卵重等の推移を各区別の平均値で図示したように,いずれの場合も本剤がニワトリに対して毒性を示しているとは認められなかった.ただし第1図で,8月1日以後第3区および第4区の平均体重曲線が降下しているのは,第3区で2羽第4区で1羽がそれぞれ内臓型淋巴腫症に罹患し,体重が900gないし660gに減少したものが出たためであるが,8月29日現在の体重で,無添加対照区との間でF検定を行なっても5%の水準において有意の差は認められていない.第2図の平均産卵率の曲線についても,同様な傾向が見られるが,これも前記と同じ理由によるものと考えられ,期間中の総産卵個数について,対照区と各区の間でF検定を行なったが,いずれの場合も有意の差は認められなかった.3.ニワトリのcoccidium症に対するdiaveridineの効果は,前記の通りM. L. Clark3)によれば,sulfa剤と混じた場合0.001%であるといい,同じくpyrimethamineの効果は,S. B. Kendall&L. P. Joyner5)によると,sulfa剤と混合した場合0.004%が適当と認めている.従って,この両者はニワトリのcoccidiim症に対してはほぽ同等の効力を有しているものと見られるが,ニワトリのleucocytozoon病に対するpyrimethamineの最低有効濃度は著者ら2)の成績では0.00005%であるのに反し,diaveridineは前記の通り0.005%であるとすると,本病の予防効果では両者の間に100倍の開きが認められるわけであって興味深いことである.4.以上の試験により本剤単味の場合の最低有効濃度がほぼ0.005%であると判明したが,この濃度では実際の野外での応用の場合薬価の点で問題を生ずる恐れがある.したがってsulfa剤と混合投与した場合その相乗効果によりさらに投与濃度をさげる研究が行なわれないと本剤単味では応用範囲が限定されると考えられる。