著者
玉木 七八 堀川 陽子 松田 広一 坂田 成子(藤本 成子)
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

GABAアミノ基転移酵素(β-AlaATI ; EC2.6.1.19)は脳ではGABAの代謝に、肝臓、腎臓ではシトシンやウラシルの代謝産物β-アラニンの分解に関与している。GABAは脳の抑制性神経伝達物質であることはよく知られている。アルコール(エタノール)は少量で中枢神経を興奮し、多量では抑制を示す。アルコールはチロシンアミノ基転移酵素(TAT)を非常に有意に増加させることが知られているので、β-AlaATIについても何らかの影響を示すのではないかと考え本研究を始めた。アルコールの血中濃度を長時間持続させる目的で嫌酒薬ジスルフィラム投与ラット用いた。TAT活性は顕著に増加するに対し、β-AlaATI活性は逆に減少した。時間の経過に対し指数関数的な減少の様子を示した。アルコールやジスルフィラム単独ではβ-AlaATI活性に効果を示さなかった。また、アルコール脱水素酵素阻害剤ピラゾール前投与もβ-AlaATI活性にアルコールの効果を与えなかった。生体内でジスルフィラムはジエチルアミンと二硫化炭素に分解される。二硫化炭素前投与ラットにアルコールを投与してもβ-AlaATI活性に影響を与えなかった。エタノールアミン-○-サルフェートがβ-AlaATIの自殺基質であることから、アルコールとジスルフィラムの同時投与がエタノールアミタン-○-サルフェートの様な代謝産物を生じβ-AlaATI活性を抑制したのではないかと考えられる。β-アラニン・ピルビン酸アミノ基転移酵素についてジスルフィラムとアルコールの影響について検討したが酵素活性を抑えるもののβ-AlaATIの場合のように顕著な作用を示さなかった。