- 著者
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堤 偉史
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.A3P3133, 2009
【目的】バスケットボールは、激しいコンタクトスポーツであるがゆえ、レクレーションレベルの活動であっても長く競技生活を続けることは容易ではない.故障の為にその余暇活動を制限されるプレイヤーも少なくない.今回は、レクレーションレベルの社会人プレイヤーの障害発生の予防を目的としてスポーツ障害調査を実施したので報告する.<BR>【対象と方法】社会人バスケットボール4チームのプレイヤー88名(18歳~61歳の平均年齢28.6歳、男性62名、女性26名)を対象にアンケート調査(有効回答率95.5%)を行った.内容は、1)ポジション2)練習頻度3)練習時間4)競技開始時の年齢と競技年数5)現病歴・既往歴・再発の有無6)競技復帰までのリハビリテーションの有無7)完治後に復帰したか8)コンディショニングについて9)故障が競技パフォーマンスに影響しているか10)ICE処置の知識とした.また、「足首を捻挫した際の応急手当」を自由記述にて質問した.なお、障害は競技時の受傷に限局した.統計学的処理には素集計及びクロス集計を行い,検定はカイ二乗検定を用い有意水準は5%とした.<BR>【結果】競技開始年齢は平均13.7歳、競技年数は平均10.25年であった.ポジション別故障発生率に有意差は認められなかった.練習頻度週2回以下と週3回以上、練習時間2時間以下と3時間以上のプレイヤーにおいて故障発生率に有意差は認められなかった.55%のプレイヤーが現在何らかの故障をかかえていた.既往歴のある者は89%、現病歴、既往歴ともにない者は6%のみであった.また、故障が競技に影響していると考えている者は49%であった.リハビリテーション実施の有無と再発率には有意差は認められなかったが、完治せずに競技に復帰した場合、完治後に復帰した場合に比べ、優位に故障を再発するとの結果が得られた.コンディショニングの有無と現病歴に有意差は認められなかった.ICE処置という言葉を知っている者は17%であった.また、言葉は知らなくても足首捻挫時の適切な応急手当の知識を持っている者は35%であり、応急処置の知識がない者に比べ故障再発率が低かった.<BR>【考察】社会人プレイヤーの多くが、何らかの故障を経験し、約半数が受傷により競技パフォーマンスが低下していることがわかった.多くのプレイヤーが小・中学校を主とした部活動により競技を始め、競技歴が10年を超えているにも関わらず、受傷時に適切な応急処置を行えず、十分回復しないまま競技に復帰し、再発を繰り返している状況があった.再発を未然に防ぎ、競技生活を長く続けるためには受傷時の応急処置の知識や障害が十分に回復していない状態での競技復帰はしないという初期からの指導が必要と考える.理学療法士の職域が拡大している現在スポーツプレイヤーに対する障害発生予防指導も今後益々重要な役割となると考える.