著者
荒井 一成 古川 香 堤 司 蝦名 敦子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.108, pp.99-106, 2012-10

木材はイメージを豊かにする個性的な素材であり,図画工作科の材料としてダイナミックに利用することで,表現方法やあそびを広げる材料となりうるが,小学校で木工作を取り上げるには特に安全な環境を整えることが大切である。安全な環境整備には「よく見通せる広い場所」「木工具の整理整頓」「作業台と固定具」「治具の準備」「複数の援助者」が必要である。また安全な表現活動には「基礎技能の習得」が大切であると考えられる。ところが「基礎技能の習得」が前にですぎると知性が優先され,図画工作科の中で大切な色と形で表現意欲を十分に高められないことも考えられる。そこで本論文では,4つの鑑賞を通して意欲を高める「基礎技能の習得」方法を考案し,小学校4年生を対象にした「わたしたちのめざすかたちに~小さな大工さん~」の実践で検討した。その結果,鑑賞を取り入れた本題材が,小学生の表現意欲を高め,充実した内容になることが実証された。また教師が事前に理解し克服すべき小学校図画工作科における木工作の基礎技能の課題が示された。