著者
蝦名 敦子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.89-98, 2021-03-31

ディープラーニングは、人工知能(AI)の用語である。AI は近年、人間が物事を深く理解する過程を模したディープラーニングを取り入れ、飛躍的に進化した。本考察はこの機械による学習法を、「戦後最大の教育改革」と言われる、平成29年改訂の新学習指導要領が掲げた「深い学び」と対比させた。そして、これからの図画工作・美術科における教科性について改めて検討した。その結果、今後、益々バーチャルな世界が浸透する中で、子供たちが手や体全体を生かして、触覚を働かせ、イメージに合わせてつくったり考えたりする直接的な造形行為の重要性が、さらに増していることを指摘した。また、材料や用具を使って造形空間をつくったり味わったりなどしながら、身体感覚を通してリアリティを直に感じ取るという本教科の特性と、その重要性について新たに主張した。
著者
蝦名 敦子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

一年目の研究として、子ども達の実践的考察を次の二つの観点から行う。一つは学校教育における図画工作の表現である、造形遊びと絵や立体・工作について。二つ目は学校外で実施した展覧会である。一つ目は、これまでの実践から、子どもの造形活動と空間の問題を振り返った。子どもは自らの身体感覚を働かせながら,造形空間を感じ取り認識していく。造形遊びではそれが顕著で,場所の空間を確かめながら,より大きな造形空間が把握されている。絵や立体・工作では,主題に応じて造形空間が作品とともに見出されていく。共同製作ではさらに充実した展開を見せた。同じ造形活動によって意識される「空間」であっても,そのプロセスに異なった方向性が見られる(「子どもの造形活動による空間把握の特性―実践的考察を通して―」「弘前大学教育学部研究紀要クロスロード」第22号に掲載)。二つ目の学校外での実践では、2017年8/4~6にかけて開催した「みんなでつくる形と空間」展の内容について、これまで実施した展覧会と対比的に考察した。課題を明確にし、次の展覧会に向けての方向性を探った。「空間」について定義づけながら、これまで筆者が先に行った3つの展覧会と比較して、本展覧会の成果と課題について考察したが、特に子どもの造形活動と空間の問題に注目して、造形空間と展示空間が論点となる。その切り口からそれぞれの展覧会の特徴について整理すると、本展覧会は遊具を設置した展示空間でありながら、光と影の造形空間を創り出すことができた点が特徴的である。今後は「形をつくる」方向をさらに強め、イメージの問題に関連づける。造形遊びからよりイメージに訴え、仕掛けによる展示空間を準備しながら、その空間を造形空間として創っていくような場が課題となる(「『みんなでつくる形と空間』展の成果と課題―ワークショップ型展覧会の比較考察を通して―」「芸術文化」第22号に掲載)。
著者
荒井 一成 古川 香 堤 司 蝦名 敦子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.108, pp.99-106, 2012-10

木材はイメージを豊かにする個性的な素材であり,図画工作科の材料としてダイナミックに利用することで,表現方法やあそびを広げる材料となりうるが,小学校で木工作を取り上げるには特に安全な環境を整えることが大切である。安全な環境整備には「よく見通せる広い場所」「木工具の整理整頓」「作業台と固定具」「治具の準備」「複数の援助者」が必要である。また安全な表現活動には「基礎技能の習得」が大切であると考えられる。ところが「基礎技能の習得」が前にですぎると知性が優先され,図画工作科の中で大切な色と形で表現意欲を十分に高められないことも考えられる。そこで本論文では,4つの鑑賞を通して意欲を高める「基礎技能の習得」方法を考案し,小学校4年生を対象にした「わたしたちのめざすかたちに~小さな大工さん~」の実践で検討した。その結果,鑑賞を取り入れた本題材が,小学生の表現意欲を高め,充実した内容になることが実証された。また教師が事前に理解し克服すべき小学校図画工作科における木工作の基礎技能の課題が示された。
著者
蝦名 敦子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、特別活動などの教科以外の機会も視野に入れて、発展的な図画工作科における授業の可能性とその意義について考察した。小学校の特性として、①校外学習や学校行事が多い、②一人の教師が複数の授業を担当、③6学年にわたる集団生活、の3点に注目し、図工科を校外学習、異学年交流、環境、地域性に関連づけて、モデル例を実践的に検証した。人数的にも内容的にも小学校独自の多彩な造形活動が可能である。造形表現が児童を柔軟に結びつける意義は大きく、小学校には図工科を核とした造形活動の充実が不可欠である。