著者
上野 隆治 塘 総一郎 飯村 彰
出版者
日本歯科大学東京短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

顎口腔顔面領域の最も重要なはたらきである咀嚼・嚥下運動において、咀嚼・嚥下様式の差異と顎顔面口腔領域を構成する骨や筋、歯牙の形態学的特質との関連性を解明することを目的として、咬合様式の異なるオーストラリア産有袋類のコアラやブラッシュテイルポッサムを研究対象とし、これらの顎関節、咀嚼筋、さらに咀嚼運動に直接関与する臼歯に対して比較解剖学的検索を行った。顎関節の形態では、下顎頭はコアラでは4つ、ブラッシュテイルポッサムでは3つのタイプに分けられ、後者では前者にみられないフラットタイプが最も多くの割合を占めた。さらに下顎頭の最大高部は前者が中間部に最も多かったのに対し後者では外側1/3の部位に多くみられた。臼歯の咬耗の度合いと顎関節の形態との関連性では、コアラが咬耗度と下顎頭、下顎窩の値に有意な正の相関を示したのに対しブラッシュテイルポッサムでは共に有意な値は示さなかった。上顎大臼歯の計測学的検索では、コアラもブラッシュテイルポッサムも共に第4大臼歯が他の3つの大臼歯よりも小さな値を示したが、コアラでは第1大臼歯と第2大臼歯とは歯冠の計測値に有意な差は示さなかったのに対しブラッシュテイルポッサムでは第2大臼歯が頬側近遠心径と近心頬舌径において他の大臼歯より大きな値を示し、逆に第1大臼歯は近心頬舌径において第2、第3大臼歯より小さな値を示した。咀嚼に関与する筋の観察では、コアラの哺乳期と咀嚼期における咬筋と頬筋の大きさの比較において、特に筋の厚さで頬筋は哺乳期では咬筋とほぼ同じ割合で発達するが、咀嚼期ではほとんど増加を示さず、さらに咬筋と顎関節との関連では特に上部の幅と厚さが下顎窩の形態の変化と高い相関性を示した。これらの結果から、顎運動の様式の差異と関連性を有する顎・口腔領域の形態的特徴が明確となる可能性が示された。
著者
塘 総一郎 塘 郁子
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

人々の興味が肉眼解剖から顕微解剖に移ることになり哺乳類の咀嚼筋の分類はそのままにされてきた。我々は哺乳類咀嚼筋をその支配神経を用いて分類を行って来た.咀嚼筋と歯牙の形態との関係を詳細に検討してみた。歯牙形態は特に頬歯の咬耗状態を中心に解析を進めようと考える。野生動物の年齢推定は以前から歯の咬耗状態を持って推定されてきた。カンガルーは頬歯が水平置換を起こし、前方より抜けていくためにこの方法はとられてこなかった。カンガルーはその代わりに頬歯の前方移動の度合い(Molar Index)によって年齢推定が行われてきた。今回残存歯の咬耗度と頬歯の前方移動の度合いとの相関関係についても検討した。野生動物の年齢推定は以前から歯の咬耗状態を持って推定されてきた。カンガルーは頬歯が水平置換を起こし、前方より抜けていくためにこの方法はとられてこなかった。カンガルーはその代わりに頬歯の前方移動の度合い(Molar Index)によって年齢推定が行われてきた。今回残存歯の咬耗度と頬歯の前方移動の度合いとの相関関係についても検討した咬筋と側頭筋の間に上顎下額筋を独立した筋として見つけた。また、この筋は支配神経より咬筋と側頭筋の中間の筋と考えた。