著者
塚本 三枝子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.34-45, 2013-01-31

定年退職後に米つくり活動に参加した5 人の元サラリーマン男性を対象に,定年後の暮らしの再構築のプロセスを明らかにし,再構築がなぜ可能となったのかを検討することを目的に半構造的インタビューを行い,逐語録を作成し分析した.対象者は定年退職により安堵した一方で,定年による喪失を体験した.思い通りにいかない現実に直面し,何とかしなければという思いはあるが行動へは躊躇いがあり,定年後の暮らしの前で足踏みをし,放っておいたら定年後うつや引き込もりになる可能性が高かった.しかし,活動へ気楽に参加し,拘束性の緩い,個性が大事にされることを堅持している活動を通して,定年により失った人との関係性・居場所・役割という暮らしの基盤を再び掌中に収め,暮らしの質が向上した.