著者
平間 さゆり 牛木 潤子 小畠 秀吾 秋葉 繭三
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.37-47, 2016

近年,男子の殺人事犯は減少傾向にあるが,女子の殺人事犯には変化がない.殺人事犯には男女差があり,女子殺人の被害者には親族や配偶者が多く,情動が主な動機となっている.女子の殺人事犯の数は少ないためあまり研究されていないが,家族や近親者を対象にしていることから,本研究において,女子の殺人事犯を家族機能の側面から検討することとした.家族機能以外にも,犯罪に影響を与えるとされる発達障害(ADHD)と人格傾向(境界性パーソナリティ障害:BPD)に着目し,女子受刑者(殺人以外の他罪種を含む)を対象に家族機能・BPD・ADHD 傾向について調査した.その結果,女子殺人事犯において,ADHD 傾向を持ち,家族の情緒的絆や適応が不良であると,自己否定し見捨てられ感を抱き,他者が信じられず対人関係が困難になることが示された.よって,これらが女子の殺人事犯の背景要因の1 つになると考えられた.また,女子殺人事犯のみに,年齢の高低により家族・ADHD・BPD 傾向全てに差異がみられた.
著者
礒 玲子 飯島 節
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.10-20, 2016-03-31

目的:高齢者介護分野における医療機関より在宅への移行時を中心とした多職種・諸機関間連携へのクライアントの参加や意思決定の現状と課題を,連携の展開過程に沿って明らかにする. 対象:医療機関または介護保険事業所に勤務する様々な専門職者と利用者本人・家族の合計23名を対象とした. 方法:クライアントの連携への参加の現状と課題について半構造化面接を行い,グラウンデッド・セオリーアプローチに基づき分析した. 結果:クライアントの連携への参加や意思決定を困難にしている連携の阻害要因として,『連携目的の不一致』,『連携対象についての認識不足』,『情報共有困難』および『レベル・態度・姿勢』の4要因が示され,専門職者とクライアントとの間の情報の非対称が認められた. 結論:クライアントの連携への参加と主体的な意思決定を促すためには,専門職者との間の情報の非対称を克服する取り組みを行うことが最も重要であり,連携におけるクライアントの位置づけや参加について専門職者側の意識を高めてゆくことが必要である.
著者
赤居 正美
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.7-12, 2016-08-10
著者
石井 大輔 齋藤 淳美 宮川 和也 辻 稔 武田 弘志
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.66-74, 2016-03-31

がん患者の代表的な身体的苦痛である慢性疼痛が,患者の精神症状を増悪することが懸念されている.「痛み」の伝達経路は,情動調節に重要な脳部位である帯状回や扁桃体に直接的または間接的に入力しているため,痛み刺激自体がストレスへの対処(ストレスコーピング)に影響を及ぼす可能性が示唆される.本研究では,慢性疼痛がストレスコーピングに及ぼす影響について,マウスの強制水泳試験を用いて行動学的に検討した.その結果,炎症性慢性疼痛は,ストレスコーピングに影響を及ぼさなかった.一方,神経障害性慢性疼痛は,強制水泳試験における無動時間の短縮,すなわち,ストレス刺激に対する受動的コーピングの障害を惹起した.なお,この条件下において,オープンフィールド試験における探索行動およびロータロッド試験における運動協調性には特筆すべき変化は認められなかった.また,神経障害性急性疼痛は,ストレスコーピングに影響を及ぼさなかった.これらの所見から,神経障害性慢性疼痛は,ストレス刺激に対する受動的コーピングに影響を及ぼすことが考えられる.
著者
髙石 雅樹 大嶋 宏誌 浅野 哲
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.59-69, 2015

足尾銅山における「足尾鉱毒事件」は日本最初の公害であり,採掘技術の近代化および大規模化により鉱害は拡大した.鉱害は,製錬所から出る亜硫酸ガス等の有害物質や過剰な伐採による森林の荒廃および農作物の枯死,選鉱排水や鉱石堆積場から漏れ出る銅等の重金属を含んだ水による魚類の斃死および農作物被害であった.また,衛生環境の悪化が原因と思われる出生率の低下や死亡率および死産率の増加が起こっていた.鉱害対策は明治期から行われていたが,煙害は自熔炉精錬法導入まで解決せず,鉱毒水問題は精錬事業停止まで解決しなかった.現在,国や栃木県,NPO,市民ボランティア等が協力して植林活動を行っている.しかしながら,膨大な土地改良事業費用や治山活動費用を費やしても,かつての姿は取り戻せていない.近年は我が国で大規模な公害が発生する状況にはないが,東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故のように,通常とは異なる条件により発生する可能性は否定できない.したがって,過去の公害による知識を利用して十分な予防措置をとることが重要である.
著者
三浦 総一郎
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-2, 2018-03-31
著者
福原 百合 藤野 成美 脇崎 裕子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.36-49, 2013-10-31

本研究の目的は,精神科病棟看護の経験を持つ精神科訪問看護師を対象にして,精神科長期入院患者の退院促進および地域生活継続のための看護実践上の課題について明らかにすることである.長期入院患者の看護経験を含めて精神科病棟勤務歴が3年以上あり,さらに精神科訪問看護経験を持つ看護師とした.対象者に対して半構成的面接を行い,面接内容は質的帰納的に分析した.結果は,精神科訪問看護師が抱く精神科長期入院患者の退院促進における看護実践上の課題として【管理体制からの脱却】【患者の将来を見据えた退院支援の在り方】であった.精神科長期入院患者を地域で支援する際に精神科訪問看護師が直面した課題として示されたのは,【倫理的配慮に基づいた訪問看護実践の難しさ】【利用者周囲との関係調整の役割】【地域で生活する精神科長期入院患者に対する固定観念】であった.看護師が自分自身の価値観を優先するのではなく,患者個人がどのような人生を生きたいのか自分自身で選択し,決定していく姿勢を支持することの重要性が示唆された.
著者
相川 倫 藤田 郁代
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.36-43, 2016-03-31

本研究の目的は,アルツハイマー病(AD:Alzheimer's disease)患者の潜在記憶についてプライミング効果から調べ,顕在記憶との関係を検討することである.対象は初期AD 患者15 名と健常高齢者15 名であった.潜在記憶については,先行学習として音読を用いた単語完成課題を実施してプライミング効果を調べ,顕在記憶については三宅式記銘力検査によってエピソード記憶を調べた.その結果,AD 患者においてもプライミング効果を示した.また,プライミング得点と三宅式記銘力検査得点の間に有意な相関は認めなかった.以上から初期AD患者では潜在記憶が保たれ,潜在記憶と顕在記憶は独立した機能単位をなすと考えられた.
著者
鈴木 美咲 平野 大輔 小賀野 操 谷口 敬道 杉原 素子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.37-45, 2017

本研究の目的は,若年者と高齢者のペットボトルのキャップ開封方法を観察・分類し,握力・つまみ力との関係性を明らかにすることである.若年者として女子大学生51 名,高齢者として地域在住高齢女性62 名の右利き女性を対象に,未開封の500 mL のペットボトルのキャップ開封動作をビデオカメラで撮影した.撮影後,握力と指腹,側腹つまみ力を各々3 回測定した.若年者と高齢者の共通点として右手でキャップをつまみ,左手で本体を把持するパターンが多かった.高齢者では開封不能者を11 名認め,握力・つまみ力は開封可能者に比べ有意に小さかった.開封可能な高齢者においても本体底面を大腿部に押し付けて固定する者等,若年者には見られない方法で開封する者がいた.若年者と高齢者の開封方法は類似していたが,高齢者では母指の力を利用する,3 指のつまみや手掌面の押し付けで接触面を増やす,といったパターンが多く見られ,キャップに力を伝えやすい方法を選択していたものと考えられる.
著者
赤居 正美
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.7-12, 2016-08-10
著者
高石 雅樹 青柳 達也 増田 崇 千葉 百子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.7-17, 2014-09-22

我が国では全人口の約30%が花粉症患者(2008年)であり,その半数以上がスギ花粉症患者といわれている.そして,花粉症に関する医療費は,日本全体では1,172億円と推計されている. 我が国では第二次世界大戦後,スギやヒノキが大量に植林された.これらのスギが,樹齢30年を超えて多くの花粉を生産するようになり,花粉飛散量が増加したことで,花粉症患者が増加した. 2008年において,栃木県のスギ花粉症有病率は39.6%と全国第三位であり,全国平均の約1.5倍である.栃木県では花粉症対策として,雄花の多いスギ林の間伐を推進している.また,2008年5月に「花粉の少ないスギ山行苗生産計画」を策定し,花粉の少ないスギ林の造成に関する研究を行っている.しかしながら,全てのスギが少花粉スギに置き換わるにはかなりの年数が必要である.また,花粉症患者数の増加に,食生活などの生活様式の変化や大気汚染等の関与も疑われている.したがって,今後の継続的な調査・観察・研究が必要である.
著者
落合 直美 森田 知子 大槻 義昭 村田 純一
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.33-41, 2014-01-31

本研究の目的は,A病院の新生児の回復期治療室(Growing Care Unit:GCU)の現状を把握し,病床管理および病院経営の観点から改善策の要因抽出することである.このため以下の調査検討を行った.(1)新生児集中治療管理室(Neonatal Intensive Care Unit:NICU)・GCUに入院が予測される母体搬送入院患者の動態把握,(2)NICU・GCUの患者の現状および総合周産期特定集中治療室管理料・新生児治療回復室入院管理料の取得状況の現状把握,(3)GCUの稼働率・収入維持のための要因調査と対策の立案.A病院の新生児入退院データ,経営収支などからデータ収集し分析を行った.調査の結果,母体搬送の患者が急性期を超えた時点で転院し,産科の病床確保を行うことが必要である.NICUは加算算定できる患者が大半を占めている反面,GCUは加算期間を超えている患者が多くを占めていた.NICUからGCUへ転床時に加算算定期間を考慮した病床管理や入院早期から退院を視野に入れた支援が必要である.また新生児搬送や院内出生においてGCUで積極的に受け入れることが,GCUの収入や病床稼働率の維持につながることが明らかとなった.
著者
白砂 寛基 谷口 敬道 杉原 素子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.14-22, 2015

経験年数の少ない作業療法士に対して,介入のための視座を与える急性期作業療法の介入戦略の構築を目指し,事例文献の評価項目,介入方針,実施内容について整理,分析することで,現在の急性期作業療法の実態を調査した.調査対象とした日本作業療法士協会事例報告集には583 事例が掲載されており,そのうち身体障害領域の回復状態が急性期の事例は132 事例であったが,介入期間が1 ヵ月以内の事例は19 事例であり,長期的な介入が多かった.19 事例からは,機能改善,早期離床,ADL の改善を基本方針とし,座位訓練や,本人・家族指導,他職種と連携したADL 訓練を行い,その結果,上肢機能やバランス,起居・移乗動作の改善をしているという標準的な急性期作業療法の状態が示されたが,同時に,心身機能だけでなく,入院生活に関わる様々な活動の何ができ,何ができないかという事例に応じた評価・介入がなされていた.急性期作業療法の介入は身体機能に限らず,病院内でできる様々な活動の数を増やすという介入戦略の可能性についての示唆を得た.
著者
志村 圭太 久保 晃
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-27, 2016-03-31

目的:ボリビア人の血圧,酸素飽和度(以下SpO2),および体格の年齢による特徴を明らかにすること. 対象と方法:対象は,ボリビアのコチャバンバ県プナタ市(標高2,600 m)で,JICAボランティア医療分科会による健康啓発活動に参加した17歳から88歳,年齢37.7±18.0歳(平均±SD)の157名とした.年代と性を要因として,血圧,SpO2,身長,体重,Body Mass Index(以下,BMI)を二元配置分散分析で検討し,血圧,SpO2に関して性と年齢で調整したBMIとの偏相関係数を算出した. 結果:年齢では全ての項目で有意な主効果を,性では血圧,身長,体重に有意な主効果を認めた.年齢と性で調整したBMIとの偏相関係数は,収縮期血圧r=0.199(p<0.02),拡張期血圧r=0.345(p<0.001),SpO2 r=-0.207(p<0.01)といずれも有意であった. 結論:ボリビア人の血圧,SpO2,体格には,加齢や性の影響に加え,BMIの影響が存在し,疾病予防には運動,活動,食事などの生活習慣に目を向け,肥満対策に関わる必要性があると考えられた.
著者
中田 恵美 江幡 芳枝
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-18, 2013-01-31

子どもの交通事故死者数の低減に向けて,チャイルドシート(以下CRSと略す)の使用が義務づけされているが,CRSはシートベルトの使用率と比較すると著しく使用率が低い.本研究は2010年8月〜9月に9か月の乳児を持つ母親97名を対象に,CRS 使用の有無とCRSの知識および認識との相関を見た.その結果,知識と使用の有無に相関がみられた項目は,「CRSを着用している時と,着用していない時とでは,それほど死亡率は変わらない(CramerV:0.351)」であった.認識と使用の有無に相関がみられた項目は,「近所に買い物などで出かける程度であればCRSを装着しなくてもかまわない(CramerV:0.399)」,「周りがCRSを装着させていないと,自分もしなくてもよいと感じる(Cramer:0.357)」など3項目であった.これらの結果から母親は正しい知識や認識が十分でなく,都合の良い解釈の元にCRSを使用している状況があると考えられる.妊娠期から母親と深く関わる機会の多い助産師は,出産した子どもの命を守る立場からCRSについての正しい知識や情報を母親や家族に提供する必要がある.
著者
塚本 三枝子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.34-45, 2013-01-31

定年退職後に米つくり活動に参加した5 人の元サラリーマン男性を対象に,定年後の暮らしの再構築のプロセスを明らかにし,再構築がなぜ可能となったのかを検討することを目的に半構造的インタビューを行い,逐語録を作成し分析した.対象者は定年退職により安堵した一方で,定年による喪失を体験した.思い通りにいかない現実に直面し,何とかしなければという思いはあるが行動へは躊躇いがあり,定年後の暮らしの前で足踏みをし,放っておいたら定年後うつや引き込もりになる可能性が高かった.しかし,活動へ気楽に参加し,拘束性の緩い,個性が大事にされることを堅持している活動を通して,定年により失った人との関係性・居場所・役割という暮らしの基盤を再び掌中に収め,暮らしの質が向上した.
著者
石鍋 浩
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.24-32, 2014

背景:医療系領域を専攻する留学生は専門語彙の学習面で問題を抱えている.本研究では看護師国家試験(看護国試)と理学療法士国家試験(PT国試)の漢字の出現傾向を親密度から分析し,医療専門漢字語彙学習用教材を作成し,留学生の学習効率化の一助とすることを目的とした. 方法:看護国試とPT国試の漢字の出現傾向の検討および親密度を指標としたレベルの検討を行った.分析結果を基に医療専門漢字語彙の教材を試作した. 結果:看護国試,PT国試とも出現頻度上位500字前後で全体の約90%を占めた.また,両者の親密度の間に有意差はなく類似した出現傾向が認められた.分析結果に基づき国家試験問題を素材とした医療専門語彙学習用教材を作成した.教材には出現頻度や国家試験の問題番号など学習を補助する情報を記載した. 結論:客観的指標に基づく学習目標の提示や教材提供などを通し,医療専門留学生の学習効率化の一助となると考えられる.また,このような指標を通し医療専門ではない日本語教員でも専門語彙教材の作成が可能になることが期待される.