著者
塚田 剛士
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

近年、地球温暖化や化石資源枯渇等の影響を受け、再生可能な資源である植物バイオマスからエタノールや有機酸等の有用物質を生産することが望まれている。植物バイオマスの主成分であるセルロースから酵素を利用してグルコースを得るには、セルラーゼによりセルロースをセロビオースなどの可溶性糖へ変換した後、それらに対してβ-グルコシダーゼ(BGL)を作用させグルコースへ変換する必要がある。そのため植物バイオマスの酵素糖化においては、高温、酸性条件下においてセロビオースに対して高い反応特性を示すBGLが求められている。しかしながら、それらの性質を併せ持つBGLはこれまでに報告されていない。そこで本研究では、BGLの「酸性域において高い活性を保持するために必要な因子」、「セロビオースに対する親和性を高める因子」を解明する事を目的として研究を進め、最終的には温度安定性に優れる高熱菌由来BGLに点変異導入により上記した2つの性質を付与する事で、「セルロース系バイオマスの酵素糖化を目指したβ-グルコシダーゼの高機能化」を目指した。「酸性域において高い活性を保持するために必要な因子」および「セロビオースに封する親和性を高める因子」に関する立体構造学的知見を得るため、酸性域における活性保持率とセロビオースに対する親和性が異なる担子菌Phanerochaete chrysosporium由来BGL1A、BGL1Bを研究対象とし、BGL1Bの結晶構造解析を試みた。さらに両酵素の高発現生産系を確立するため、フィンランド技術研究センターにてトリコデルマ菌の組換え系構築法を取得した。