著者
塚田 森生
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.348-355, 2008 (Released:2009-01-20)
参考文献数
55
被引用文献数
1

シカの個体群密度が数百年にわたって高密度で維持されている奈良公園では,植生の単純化によりカメムシ目の植食性昆虫トサカグンバイの寄主植物が事実上アセビしかない。このため,通常はアセビおよびネジキの2種の寄主植物間で季節的な寄主転換を行う本種が,奈良公園では寄主転換を行わない。長期間にわたるこのような生活環の違いがどのような遺伝的な変化をもたらしているのかを実験的に調べた。同じ条件下で羽化させた場合でも,寄主転換する京都個体群の個体は奈良個体群の個体より産卵数が少ない傾向があった。どちらの個体群の虫にとっても,ネジキはアセビよりもはるかに多い産卵数を達成できる質の良い寄主であったが,通常ネジキを利用している京都の虫にこの傾向がやや強かった。同じ条件で飼育したあとでも,京都の虫は奈良の虫と比較して,ネジキを強く選好する傾向がみられた。寄主転換を行う場合,特に寄主間の移動を行う世代で相対的な翅長が長くなることから,産卵数の減少はそれにともなうコストと考えられた。
著者
加藤 展朗 山田 佳廣 松浦 誠 塚田 森生
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.115-120, 2007 (Released:2007-07-13)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

The life cycle of Hypsopygia postflava, a moth parasitic on nests of the paper wasp Polistes jokahamae, was studied in Mie, Saitama and Tokyo in 2002 and 2003. The emergence of some overwintered-generation moths was extremely delayed, and some second-generation larvae overwintered without pupation; therefore, it is considered that this nest-parasitic moth typically completes three generations per year, with some completing only one or two generations. The proportion of male adults per nest was 56.4% on average, and ranged from 30.8% to 75.0%, but did not differ significantly with the nests. The head widths of overwintering moth larvae varied greatly between the nests and also within some of the nests. Larvae with a head width of <1.08 mm died during overwintering. Larvae provided with pupae of the paper wasp in glass vessels developed to adults, but those provided only with nest materials or the feces of paper wasps did not.
著者
塚田 森生
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.348-355, 2008-10-01
被引用文献数
1

シカの個体群密度が数百年にわたって高密度で維持されている奈良公園では,植生の単純化によりカメムシ目の植食性昆虫トサカグンバイの寄主植物が事実上アセビしかない。このため,通常はアセビおよびネジキの2種の寄主植物間で季節的な寄主転換を行う本種が,奈良公園では寄主転換を行わない。長期間にわたるこのような生活環の違いがどのような遺伝的な変化をもたらしているのかを実験的に調べた。同じ条件下で羽化させた場合でも,寄主転換する京都個体群の個体は奈良個体群の個体より産卵数が少ない傾向があった。どちらの個体群の虫にとっても,ネジキはアセビよりもはるかに多い産卵数を達成できる質の良い寄主であったが,通常ネジキを利用している京都の虫にこの傾向がやや強かった。同じ条件で飼育したあとでも,京都の虫は奈良の虫と比較して,ネジキを強く選好する傾向がみられた。寄主転換を行う場合,特に寄主間の移動を行う世代で相対的な翅長が長くなることから,産卵数の減少はそれにともなうコストと考えられた。