著者
藤原 治 町田 洋 塩地 潤一
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.23-33, 2010-12-01 (Released:2012-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
5 11

大分市の横尾貝塚で見られる厚い鬼界アカホヤ火山灰層(K-Ah : 層厚約65 cm)について,堆積構造の解析などに基づいて形成プロセスを復元した.この火山灰層をもたらした噴火は,横尾貝塚から約300 km南にある鬼界カルデラで約7,300 cal BPに発生した.これは完新世における地球上で最大規模の噴火イベントの一つである.横尾貝塚のK-Ahは湾奥にあった小規模な谷に堆積したもので,さまざまな堆積構造が発達するイベント堆積物(ユニットI~V : 層厚約35 cm)と,それを覆う均質なユニットVI(層厚約30 cm)からなる.イベント堆積物はK-Ahの降灰中に谷に突入した流水によって堆積し,ユニットI~Vの累積構造からは,谷を遡上する流れと下る流れが長周期で繰り返したことが読み取れる.ユニットVIは降下火山灰と考えられる.K-Ah降下との同時性や,長周期で遡上と流下を繰り返す特徴は,K-Ah下部を構成するイベント堆積物がアカホヤ噴火に伴う津波堆積物であることを強く示唆する.