著者
塩見 正衛
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.209-215, 2021-01-15 (Released:2021-03-28)
参考文献数
24

アメリカ統計協会(ASA)の声明(2016年)を契機に,p値と統計的検定の問題点を摘出,草地・農学における実験・調査研究へ問題提起を行った。ASA声明は,例えば平均の差の検定において,大きいp値や帰無仮説の受容は,平均が等しいことを意味していないこと,社会的な実情を顧慮せず, p値だけで科学的結論や政策決定を下すべきでないと述べている。本稿では,p値と統計的検定をめぐるFisher派とNeyman-Pearson(N-P)派の違いを示す。N-P派の検定は新技術創出や品種育成など技術的改良の検討に,Fisher 派の検定とp値重視は新知識の確定に適している。また,多重性はp値に影響するので誤用に注意しなければならない。統計学論理と実用面の教育の充実が,技術的改良や知識発見における錯誤を防ぐ。