著者
稲福 政史 幸喜 香織 蝦名 真澄 奥村 健治 与古田 稔
出版者
沖縄県畜産研究センター
巻号頁・発行日
no.45, pp.87-98, 2008 (Released:2012-12-06)

ギニアグラス新品種候補系統「琉球3号」の収量性および形態特性について「ナツユタカ」,「ガットン」および「パイカジ」と比較検討したところ,結果は以下のとおりであった。1. 「琉球3号」は他の品種に比べ利用1年目の初期生育性に劣るが,利用2年目以降は草勢に優れ,他品種に比べ旺盛な生育を示した。2. 「琉球3号」の利用1年目は2番草刈取り以降の再生性に優れ,また利用2年目および3年目の再生性は他品種と同等かやや優れた。3. 「琉球3号」の倒伏程度は極強で,試験期間中の台風襲来による倒伏はほとんどみられなかった。4.「琉球3号」は利用2年目以降の乾物収量が極多収で,沖縄県畜産研究センター(沖縄畜研)試験の利用2年目で551kg/a,3年目で464kg/aであり,また八重山家畜保健衛生所種苗圃(八重山家保)試験でそれぞれ325kg/aおよび245kg/aで,「ナツユタカ」比111~138%「ガットン」比139~161%であり,極多収で,永続性に優れる。5. 「琉球3号」の利用2年目以降の乾物消化率は「ナツユタカ」より優れ「ガットン」よりやや優れ,「パイカジ」よりやや劣る。また,出穂期における乾物消化率の減少が大きい。6. 「琉球3号」の出穂始日は10月17日で,「ナツユタカ」より32日,「ガットン」より47日および「パイカジ」より36日遅く,極晩生に属した。また,刈取り調査時の出穂期は11月上旬から12月下旬の年1回のみであった。7. 「琉球3号」は他品種に比べ穂長,稈長,葉身長,葉身幅および茎の太さが大型で,草型は直立である。以上の結果から「琉球3号」は大型で収量性に非常に優れ,また永続性および再生性にも優れるため,多回刈りによる収量増も可能であると考えられた。また,極晩生で,年1回の秋の出穂に伴う乾物消化率の減少が著しいが,出穂前から出穂始期に刈取りを行うことで,乾物消化率の減少を抑制し,年間を通して消化性に優れる高品質な飼料供給ができる可能性が示唆され,新品種候補系統として有望であると考えられた。