著者
青木 俊明 荒砥 真也 塩野 政徳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.55-64, 2007

公共事業の合意形成では、周囲の他者の意向が自己の態度形成に強く関わることがある。特に、地方部では、強いコミュニティーが残っている地域も多く、この傾向は強まると思われる。一般に、交渉においては、その過程の公正さが重要であることが報告されているが、他者の意向の影響を取り込んだ検討は十分には行われていない。そこで、本稿では、不利益を想起させる同調圧力が、行政担当者から示される場合を想定し、市民の態度形成の仕組みについて検討を行った。東北工業大学の学生を対象にシナリオを用いた心理実験を行ったところ、次のような知見を得た。すなわち、1) 周囲の人の反対を相千に伝えた場合には、同調圧力が生じる一方で手続き的公正さの評価が高まる。2) 周囲の反対とそれによる不利益受忍の可能性が知覚された場合には、自己利益保護の観点から賛否態度が形成される傾向が示唆された。このとき、手続きの公正さは重要な態度形成要因ではないことも示唆された。3) 周囲の人の反対が知覚されない場合には、自己利益感と手続きの公正さに基づいて態度が形成されることが改めて確認された。