著者
稲積 真哉 與北 雅友 木村 亮 嘉門 雅史 西山 嘉一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-22, 2007-11-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

海面埋立処分場において鋼管矢板を打設することで構築される鋼管矢板遮水壁は、埋め立てられた廃棄物からの浸出水が外海へ漏出することを防ぐ重要な遮水工要素である。一方、鋼管矢板が遮水工としての機能を発揮するためには、継手を有する鋼管矢板の嵌合打設において周辺地盤との密実性を保持しなければならない。本研究では、鋼管矢板遮水壁の打設における周辺地盤の乱れ領域の形成に着目し、海面埋立処分場全体の環境保全機能に対する乱れ領域の影響、乱れ領域の形成を抑制する打設工法の効果およびサンドコンパクションパイル工法による地盤改良の影響を、浸透・移流分散解析によって評価する。本研究における成果の一例として、下部堆積粘土層において形成される乱れ領域が特定経路における有害物質漏出の漏出量に大きく影響し、一方、ソイルセメントによる鋼管矢板周辺の地盤改良を伴う鋼管矢板の打設工法が有害物質の漏出抑制に効果的であることを示した。
著者
稲積 真哉 與北 雅友 木村 亮 嘉門 雅史 西山 嘉一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
建設マネジメント研究論文集
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-22, 2007

海面埋立処分場において鋼管矢板を打設することで構築される鋼管矢板遮水壁は、埋め立てられた廃棄物からの浸出水が外海へ漏出することを防ぐ重要な遮水工要素である。一方、鋼管矢板が遮水工としての機能を発揮するためには、継手を有する鋼管矢板の嵌合打設において周辺地盤との密実性を保持しなければならない。本研究では、鋼管矢板遮水壁の打設における周辺地盤の乱れ領域の形成に着目し、海面埋立処分場全体の環境保全機能に対する乱れ領域の影響、乱れ領域の形成を抑制する打設工法の効果およびサンドコンパクションパイル工法による地盤改良の影響を、浸透・移流分散解析によって評価する。本研究における成果の一例として、下部堆積粘土層において形成される乱れ領域が特定経路における有害物質漏出の漏出量に大きく影響し、一方、ソイルセメントによる鋼管矢板周辺の地盤改良を伴う鋼管矢板の打設工法が有害物質の漏出抑制に効果的であることを示した。
著者
稲積 真哉 大津 宏康
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-22, 2008

海面処分場における側面遮水工には地震、波浪、高潮および津波等の海上特有の諸外力から埋立地を護る護岸機能とともに、廃棄物からの浸出水が海域へ流出するリスクを軽減、回避もしくは未然防止する機能が要求される。本研究は側面遮水工の一つである鋼管矢板遮水壁に着目し、継手部から浸出水の局所的な漏水を表現し得る評価モデルを検討し、継手部の3次元的な配置ならびに透水係数分布を考慮した鋼管矢板遮水壁が設けられた海面処分場の汚染リスクおよび汚染リスク低減効果を、3次元浸透・移流分散解析によって評価する。なお、本研究では海面処分場における有害物質を含んだ廃棄物浸出水の海域漏出の可能性を汚染リスク、また浸出水の海域漏出を軽減、回避あるいは未然防止する側面遮水工の効果を汚染リスクの低減効果として定義している。<BR>鋼管本管に比べて高透水性の継手部を有する鋼管矢板遮水壁に対して実施した汚染リスクおよび汚染リスク低減効果の評価では、海面処分場の外域において継手部から有害物質の局所漏出によって、換算透水係数に基づく現行評価モデルと比べて早期に環境基準値を上回る有害物質の汚染リスクを確認した。従って、鋼管矢板遮水壁に関する汚染リスク低減の評価では、継手部の3次元的な配置ならびに透水係数分布の考慮が望ましいことを提案している。
著者
稲積 真哉 大津 宏康
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-22, 2008-12-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11

海面処分場における側面遮水工には地震、波浪、高潮および津波等の海上特有の諸外力から埋立地を護る護岸機能とともに、廃棄物からの浸出水が海域へ流出するリスクを軽減、回避もしくは未然防止する機能が要求される。本研究は側面遮水工の一つである鋼管矢板遮水壁に着目し、継手部から浸出水の局所的な漏水を表現し得る評価モデルを検討し、継手部の3次元的な配置ならびに透水係数分布を考慮した鋼管矢板遮水壁が設けられた海面処分場の汚染リスクおよび汚染リスク低減効果を、3次元浸透・移流分散解析によって評価する。なお、本研究では海面処分場における有害物質を含んだ廃棄物浸出水の海域漏出の可能性を汚染リスク、また浸出水の海域漏出を軽減、回避あるいは未然防止する側面遮水工の効果を汚染リスクの低減効果として定義している。鋼管本管に比べて高透水性の継手部を有する鋼管矢板遮水壁に対して実施した汚染リスクおよび汚染リスク低減効果の評価では、海面処分場の外域において継手部から有害物質の局所漏出によって、換算透水係数に基づく現行評価モデルと比べて早期に環境基準値を上回る有害物質の汚染リスクを確認した。従って、鋼管矢板遮水壁に関する汚染リスク低減の評価では、継手部の3次元的な配置ならびに透水係数分布の考慮が望ましいことを提案している。
著者
吉川 勝秀 本永 良樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.371-376, 2006-12-05 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

首都圏での自然と共生した流域圏・都市の再生に資することを目的として, 水と緑の環境インフラの変遷および現状を把握し, 今後の都市計画, 国土計画における活用について考察した. 首都圏における環境インフラはこの百年間で大きく喪失したが, 今なおまとまった緑や都市の骨格となりうる河川・水路が残されていることを示した. そして, 首都圏の水と緑の環境インフラの保全・再生では, これまでは取り上げられていない中川・綾瀬川流域の河川網や水田を例に, それらが保全・再生すべき自然環境として認識されてよいことを示した.
著者
山本 徹 関 文夫 吉田 篤史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.361-368, 2003

国民の社会資本へのニーズは、社会資本整備の進捗に伴って国民が求める「豊かさ」に質的な変化がみられ、公共投資に関する国民の意識は変化している。国民のニーズは経済効率重視のハード主体の公共投資から、環境や福祉などを重視したソフトを含めた「ゆとりや豊かさ」の実現と変化している。<BR>高度経済成長を支えてきた社会資本整備の施工者である日本の総合建設会社は間接部門を持たない外国のゼネラルコントラクターと違い、技術研究所などの技術開発部門を有しそれを活用するエンジニアリング能力も備えている。現場施工管理においては、組織としての技術支援を得ることにより確かな技術的判断をもって問題解決にあたっている。さらに技術部門は机上の研究活動からだけでなく、豊富な現場経験からのノウハウを集積しその技術力を蓄積している。<BR>本書では、従来の総合建設会社の施工管理部門 (Constructor) と工学的技術部門 (Engineer) の融合に加えて「ゆとりや豊かさ」を提供するために意匠設計能力を有するランドスケープ技術部門 (Designer) を設けて三位一体として活用する「総合技術監理システム」によるランドスケープデザインで、地域との合意形成に貢献した施工実施例を紹介する。
著者
中村 一樹 竹内 明男 山田 正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.59-68, 2004
被引用文献数
2

短い期間に急速に発展を遂げた鉄道網に存在するトンネル群が, 斉に補修を必要とする時期が近づいている. 限りある財源の下に効果的な維持管理を行うために, 管理者はさまざまな方法を模索している.<BR>京浜急行電鉄株式会社 (京急電鉄) においても同様で, 多くのトンネルを所有しているため, 特に効果的かつ経済的な維持管理方法の策定が必要とされている.<BR>そこで, トンネルマネジメントシステム (TMS) の導入を決定し, 構築を開始した.<BR>TMSは, 現在のトンネルの変状状態を「健全度」という定量指標で評価し, 将来の劣化を予測すると共に, 変状原因を推定し, 適切な対策工を適切な時期に適用することができるように管理者の意思決定を支援するシステムで, 健全度評価システム, 変状原因推定システム.劣化予測システム, 対策工選定システムおよび維持管理最適化システムの5つのサブシステムから構成される.<BR>今回は, 管理者が予算配置の意思決定に必要な情報を提供することのみを目的としたバージョン1として, 健全度評価システムに点検を組み入れた「点検および健全度評価システム」と維持管理最適化システムのうちライフサイクルコスト (LCC) を計算する「LCC積算システム」を構築し, TMSの暫定運用を開始した.
著者
春名 攻 北角 哲 五十嵐 善一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.139-148, 1994

山岳トンネル工事については、今後の大断面施工、急速施工に向けて、機械化・ロボット化等が研究されているが、今のところコスト面から考えてNATMをベースとした工法に勝るものはないというのが実情と考える。この場合、切羽前方の地質予知を含めた切羽の管理をいかに合理的に行うかという問題が、工事の成否の分かれ目となると考える。<BR>一方、建設業においては、受注競争激化の中でコストダウンを強いられ、現場管理要員の削減という問題に直面している。<BR>そこで、マルチメディア・システムやコミュニケーション技術を援用し、トンネル切羽管理に伴う業務を省力化するとともに、切羽の岩盤の状態を合理的に判定するためのシステムを開発し、運用実験を行った。<BR>運用実験の結果、本システムは、切羽管理関係業務の省力化に十分寄与するとともに、岩盤判定のための客観的な情報を迅速に提供し得るものであることが確認された。
著者
黒川 康久 高瀬 達夫 小山 健
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.183-192, 2005
被引用文献数
2

近年, 地方鉄道の路線廃止が相次いでいる. 多くの地方中小鉄道は大都市圏鉄道に比べ利用者が少ないために, 輸送サービスの多様化, 高度化に資する設備投資が十分に行えないのが現状である. しかし, 地方鉄道は沿線地域における通勤, 通学等また特に高齢者や, 障害者, その他自家用乗用車を保有していない交通弱者にとっては重要な移動手段である. 公共性の極めて高い鉄道において, その存廃の是非を判断するにあたっては, 鉄道事業者及び地域により慎重に行われるべきである. そこで, 本研究ではその判断指標のひとつになり得る地方鉄道の価値を評価するために, 実際に存続問題が浮上している長野県にある上田交通別所線を対象とし, CVM (仮想評価法) を用いて地方鉄道別所線の価値評価を行った.
著者
野城 智也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.49-58, 1998-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8

本研究は、建設マネジメント「学」を、「プロジェクト」という視座から体系化することによって学問として成立させえる可能性について考察を加えたものである。具体的には、国際規格ISO10006に示された10種類のプロセス (戦略決定、相互依存に係わるマネジメント、範囲、時間、コスト、経営資源、要員、コミュニケーション、リスク及び購買に関連したプロセス) が、現在の建設マネジメントの研究関心動向をどのくらい包括しえるのかを検討した。ここでは、建設マネジメントの研究関心動向は、「課題キーワード」として表現した。これは、土木学会、建築学会等の研究活動タイトル及び建設マネジメントにかかわる学術雑誌より抽出したものである。これらの「課題キーワード」と、ISO10006のプロセスの対応性を検討した結果、紛争に関するマネジメント、経営資源の制約条件に関する検討、発注契約の制約条件に関する検討, 委任契約や、請負契約にかかわるプロセスを付加すれば、「課題キーワード」の大半は、ISO10006の提示するプロジェクトプロセスと対応づけることができることがわかった。この分析をもとに、本論文は、プロジェクトに視座をおいた建設マネジメント学のアドレス体系の試案を作成した。この体系では、具体的な研究的関心が体系のなかでの位置づけ (アドレス) が得られる構造を持つことができるように、プロジェクトプロセスを主軸とするとともに、補完的アドレスとして、建設市場にかかわる経済環境・条件、建設産業及び建設企業、技法・テクニック、研究手法・方法にかかわるカテゴリーが用意されている。
著者
島崎 敏一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-28, 1996-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

1990年代はじめに多発した公共事業の発注をめぐる一連の不祥事および建設市場の国際的な開放の要求に端を発して, 客観性, 透明性, 競争性の高い入札, 契約手続きが求められるようになった. そのため, 不正行為に対するペナルティの強化などを趣旨とする公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画が平成6年1月に閣議了解された. 不正行為については, 基礎的なデータを得るのが困難であるなどの理由から, これまでは, 理論的な分析はあまりなされてこなかった. 本論文は, 談合などの行為を純粋な経済行動であると考え, ゲームの理論を適用してその発生メカニズムを解明しようとするものである.
著者
大津 宏康 見掛 信一郎 井尻 裕二 坂井 一雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.101-114, 2006-12-05 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14

亀裂性岩盤中でのトンネル掘削においては, 断層破砕帯等の不良地山の出現や突発湧水の発生等により, 多大なコストオーバーランおよび, 長期にわたる工期延長を余儀なくされた事例が数多く報告されている. そのため本研究では, 筆者らがこれまでに示してきた地盤統計学を用いて推定する掘削コストに, 破砕帯の出現あるいは突発湧水等の発生に対する対策工の施工に要するコストを加えた建設コストを推定する手法を提案することを目的とする. 建設コスト評価手法においては, 金融工学分野で用いられるリスクという概念を導入し, リスクカーブや, バリューアットリスクといった評価手法を用いる. 具体的には, 健岩部については岩盤等級分類に基づいて, 支保工を選択し掘削コストを算出する手法をとる. 対策工の施工を要する破砕帯の出現あるいは突発湧水等が発生する可能性の評価については, 不連続性亀裂岩盤における地下水解析に用いられる亀裂ネットワークモデルを適用する. さらに建設コスト評価手法を, 実際の岩盤データを用いて検証し, 掘削コストおよび対策工の施工コストからなるトンネル建設コストの評価結果について示した.
著者
春名 攻 久米 達也 久保 誠一郎 桜井 正博
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.289-300, 2006

近年、地方都市中心市街地の衰退・空洞化が顕著になり、問題はより深刻化している。このため、中心市街地の再開発事業に関しても消費者ニーズや時代の流れに沿った開発の必要性が迫られている。そこで、効率的・効果的な中心市街地活性化をめざし、変化する時代に対応し魅力ある都市を創出するために、市街地整備と商業活性化対策の一体的事業整備を行うことによって、個別ではできない新都市機能の導入や既存都市機能の更新、レベルの高いサービス環境等を実現する方法が、大変有効であると考えた。<BR>本研究では中心市街地において、他都市にはない魅力的な雰囲気を持った都市整備事業とするために、当該地区に公園と商業施設を組み合わせた複合商業公園整備を提案し、一体的事業計画案を検討した。また、計画案の実現化方策として、商業集積地区において個別商店レベルでは解決が困難な問題への対応策として、個別商店の組織化・協調体制を組み込んだ運営システムの検討を行った。そして、一体的事業整備について、数学的手法を用いたモデルの定式化・構築を行い、中心市街地活性化をめざした土地利用・施設整備事業構想に関する方法論を論じた。さらに、一体的事業整備を推進させる方法として、土地の取得から整備・運営に至るまでに中間法人製度を用い、地域住民を主体とした新しいマネジメントシステムについて併せて検討を行った。
著者
草柳 俊二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.281-292, 2004
被引用文献数
1

建設技術者 (Civil Engineels) が担うべき機能は, 国民にとってどのような社会資本整備が必要かを見出してゆくこと, 建設技術の開発・革新, これら二つの機能を有効に結び付ける機能, マネジメントであると考えられる.戦後復興, 急速な経済発展基盤整備といった状況下で, 我が国の建設技術者は技術開発・革新の機能向上に傾注し, 他の二機能に対する認識が希薄であった.建設産業への国民の疑念に対して, 建設技術者が明確な意見を発することができにない理由は, 自身の担うべき機能を狭めてしまった結果ではないか.国民の信頼に応え, 国際化等の社会変化に対応してゆく建設技術者が求められており, 建設マネジメント教育はその鍵と考えられる.我が国の実態に即した建設マネジメント教育に必要なプログラムの構築が求められている.
著者
古川 厳水 長坂 丈巨 吉川 勝秀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
建設マネジメント研究論文集
巻号頁・発行日
no.15, pp.41-50, 2008

千葉県の北西部に位置する印旛沼は, 利根川の洪水を"外水 (そとみず)"と恐れ, "内水 (うちみず)"印旛沼流域の洪水に長い間悩まされていた. 印旛沼周辺の水害は, 印旛沼の堤防と排水機場によって軽減されたが, 未だその治水安全度は低い. この流域は, 既成市街地の拡大や千葉ニュータウンの開発が進み, 更には成田空港と連絡する北千葉道路の建設が予定されるなど, 都市化の波が押し寄せている. 本研究は, 今までの総合治水に加え, 印旛沼を含む都市化流域の治水対策について検討を実施し, 治水施設の機能向上と流域対策について定量的な評価を行い, 印旛沼の持つ潜在的な遊水機能を生かした治水の方策を考察した. 具体的には,(1) 印旛沼が有する湛水容量に着目したシミュレーションモデルによる現況の評価,(2) 治水の基本的な対応策,(2) 印旛沼流域での実証的検討から沼を含めた総合的かつ経済的な治水対策の提案を行った.
著者
山本 聡 河合 豊彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-44, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

昨今の公共土木工事においては、新技術・新工法の導入、規模の拡大など積算情報・業務が質的・量的に大幅に増大している。また、現在の積算体系については精緻な積み上げ方式となっているため積算業務に多くの時間と労力が費やされ、積算体系、積算システムの抜本的な改善が必要となってきている。建設省が制定している積算基準については各自治体がこれを基本とし、積算しているのがほとんどであるため、全国べースでの対応が必要となってきている。そこで、本稿の新土木工事積算システム (以下「新システム」という。) の開発では、土木積算業務をより効率的・合理的に行うために工事工種の体系化 (設計書構成の統一等) と合わせ、最新のコンピュータ技術を導入した積算システムを全国的な観点から構築することを目的に検討を行い、そのシステム内容等について報告するものである。
著者
吉村 充功 池畑 義人 山下 彰彦 田村 真輝 三浦 正昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
建設マネジメント研究論文集
巻号頁・発行日
vol.13, pp.247-254, 2006

建設産業では, 若年者の就職離れなどにより, 他の産業に比べ高齢層の割合が高くなっている. このような状況は地方ほど厳しくなっており, 近い将来に迎える大量定年退職時代に向けて, 建設企業がどのような問題を抱え, またそれに対応できる人材がどのようなものかを明らかにする必要がある. その上で, 高等教育機関である大学土木教育の効果的な改革の方向性を検討する必要がある.<BR>本研究では, 以上の問題意識に立ち, 地方の建設産業を支える中小建設企業に対して, 経営上の課題および必要な人材についての意識調査を実施した. これらを分析した結果, 企業が抱える課題としては, 「原価管理の徹底」, 「若手の育成」, 「受注量の増加」が上位となり, 企業の利益確保策のほか, 若年者育成が問題となっていることが明らかとなった. また, 大卒者に求める能力・資格としては「やる気」, 「責任感」といった基礎的な人間力のほか, 「パソコンの使用技術」や「コスト感覚」といった項目が上位となった. 一方で, 実際に採用を希望する企業が大卒者に求める能力・資格について, 数量化理論II類を用いて分析した結果, 「時事ネタの知識」, 「技術者倫理」といった情報力や倫理観の項目が強く反応し, 今後の人材育成の方向性についての知見を蓄積することができた.
著者
陣門 謙一 神崎 正 三宮 崇 小森 光二 国峯 紀彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.221-233, 1998

本論文は、建設分野の市場の開拓と更新という観点で、21世紀への社会の変化を見据え、第1に「クリーンな、水力エネルギーの見直しについての提言」、第2に「鉄道を利用した廃棄物の広域輸送と処理施設の立地推進についての提言」、第3に「ライフラインの共同溝化による防災都市建設への提言」を行った。本論文では、さらに、第1の「クリーンな、水力エネルギーの見直しについての提言」でエネルギーコスト、エネルギー需給の観点から不安定な今後のエネルギー問題を取り上げ、水力エネルギーの見直しへの提言を行った。本提言では、大規則の堆砂除去技術、水利権の移転、CO2炭素税による財源の確保、水力発電建設技術による海外貢献という視点よりまとめた。第2の「鉄道を利用した廃棄物の広域輸送と処理施設の立地推進についての提言」では、スーパーフェニックス計画と規制緩和について提言した。第3の「ライフラインの共同溝化による防災都市建設への提言」では、共同溝整備理念の確立を提言した。さらに、本論文では、大規模堆砂除去プロジェクトについて取上げ、人工島建設による廃棄物処理の広域輸送と同時輸送した場合の事業評価、その他付帯効果について論ずるものである。
著者
五艘 隆志 草柳 俊二 角崎 由貴子 吉永 光太朗
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.249-260, 2008
被引用文献数
1

我が国の建設産業は, 国際的な市場開放, 国内建設投資額の減少, 指名競争入札から一般競争入札への変換, 談合決別宣言等により, 「協調の原理」から「競争の原理」へと変化している. 国内市場の国際化や, 海外市場への進出等, 我が国の建設産業には国際競争力を確保することが求められている.本研究では米国におけるプロジェクトマネジメント技術の実態を把握し, 我が国のプロジェクトマネジメント技術レベルの実態調査を実施し, これらの調査結果に基づき, プロジェクトマネジメント技術の観点から我が国の建設企業の国際競争力を検証し, 今後の方策を見出すことを試みた.
著者
矢吹 信喜
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.93-100, 2000

1980年代後半より、発展途上国においてBOT (建設・運営・譲渡) 方式によるIPP (独立発電事業者) の数が増加している。途上国におけるIPPの事業資金のうち、融資部分はプロジェクトファイナンスによって調達されることが多い。プロジェクトファイナンスでは、債務返済原資は特別目的会社であるIPPのキャッシュフローのみであり、担保はIPPの資産にのみ依存し、スポンサーには債務がほとんど遡及しない。そのため、レンダーは詳細なリスク分析を行い、十分なリスク軽減措置をスポンサーや関係機関に要求する。プロジェクトファイナンスによる火力IPPの多くは概ね成功し、稼動発電所数も増えているが、水力IPPの数は少ない。その理由としては、ダムや水力発電所は、自然環境の中に作られる巨大な構造物であり、河川の流量に発電量が依存していることから、環境リスク、完工リスク、水文リスクの3つのリスクがクローズアップされ、レンダーがプロジェクトファイナンスでは困難だと考えてしまうからだと考察される。本論では、水力IPPを促進するための一方策として、ダムの寿命の長さや多目的性から、ダムと発電設備を分離し、ダムについては援助的なプロジェクトファイナンスを設定するというイノベーティブなファイナンス・スキームを提案する。