著者
塩﨑 隆敏
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.22-33, 2023-02-01 (Released:2023-03-20)

2022年2月24日にロシアが「特別軍事作戦」だとするウクライナへの軍事侵攻を開始した。ロシアの国営メディアは政権の意向に沿うような報道を展開し、政府側も言論を統制するなど、政府によるプロパガンダが進んだ。しかし、プロパガンダはロシアに限らず、過去の戦争や紛争で各国により繰り広げられてきた。今回の論考では、プロパガンダが始まったと言われる第一次世界大戦から、SNS時代に起きているウクライナへの軍事侵攻にかけて、最先端のメディアが移り変わるのに伴うプロパガンダの変遷について概略をたどった。また、今回のロシアによるプロパガンダに対して西側の国々やEU・ヨーロッパ連合などが打ち出した対抗策についてもまとめた。さらにプロパガンダの先行研究のうち、ノーム・チョムスキーらの「プロパガンダ・モデル」とともに提唱した「価値ある被害者」「価値なき被害者」の観点から、なぜ西側のメディアがウクライナ情勢の報道に注力する一方、ミャンマーで起きている戦禍について取り上げることが少ないのかという点にも考察した。
著者
塩﨑 隆敏
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.42-52, 2021 (Released:2021-10-20)

旧来のマスメディアに対する信頼が低下しつつある。各報道機関は、記者の取材活動にあたって、行動規範やガイドラインを設けている。しかし、検察幹部と新聞記者らによる「賭けマージャン問題」が明らかになり、その規範が守られていなかったことが表面化した。問題発覚後、朝日新聞社は「朝日新聞記者行動基準」を改定した。 取材源の秘匿は、情報源との信頼性を確保する上で最も重要な理念の1つである。だが、日本においては必ずしも法的な保障がなく、倫理規定の中で、その重要性が唱えられているにすぎない。その一方で、倫理規定において定めた取材対象者との関係性や利益相反について、逸脱するケースがあるというのは、報道機関として自己矛盾と言える。 本稿では、国内の報道機関、海外の報道機関が取材対象との関係性や利益相反について行動規範やガイドラインにどのような基準を設けているかを概観することで、低下しているメディアの信頼をいかに取り戻すかを考える一助になることを目指した。
著者
税所 玲子 広塚 洋子 小笠原 晶子 塩﨑 隆敏 杉内 有介 吉村 寿郎 佐々木 英基 青木 紀美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.22-39, 2021 (Released:2021-04-20)

2021年、世界各国で新型コロナウイルスの予防接種が始まったが、感染力が強い変異ウイルスの出現もあり、感染の拡大は止まっていない。WHOによると感染者の数は1月末までに1億人に近づき、死者は200万人を超えた。世界のメディアは新型コロナやその感染予防策についてどのような発信をしたのか。報道を継続するために組織としてどのような対応をとったのか。浮かび上がった課題は何か。 2月号に続き、コロナ禍に対する海外のメディアの対応を報告する。ヨーロッパ、中東、アフリカの国ごとの動きに加え、メディアが直面した問題をテーマ別にまとめる。