- 著者
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塩﨑 隆敏
- 出版者
- NHK放送文化研究所
- 雑誌
- 放送研究と調査 (ISSN:02880008)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.22-33, 2023-02-01 (Released:2023-03-20)
2022年2月24日にロシアが「特別軍事作戦」だとするウクライナへの軍事侵攻を開始した。ロシアの国営メディアは政権の意向に沿うような報道を展開し、政府側も言論を統制するなど、政府によるプロパガンダが進んだ。しかし、プロパガンダはロシアに限らず、過去の戦争や紛争で各国により繰り広げられてきた。今回の論考では、プロパガンダが始まったと言われる第一次世界大戦から、SNS時代に起きているウクライナへの軍事侵攻にかけて、最先端のメディアが移り変わるのに伴うプロパガンダの変遷について概略をたどった。また、今回のロシアによるプロパガンダに対して西側の国々やEU・ヨーロッパ連合などが打ち出した対抗策についてもまとめた。さらにプロパガンダの先行研究のうち、ノーム・チョムスキーらの「プロパガンダ・モデル」とともに提唱した「価値ある被害者」「価値なき被害者」の観点から、なぜ西側のメディアがウクライナ情勢の報道に注力する一方、ミャンマーで起きている戦禍について取り上げることが少ないのかという点にも考察した。