- 著者
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増子 博調
- 出版者
- 山野美容芸術短期大学
- 雑誌
- 山野研究紀要 (ISSN:09196323)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.53-60, 1993-03-25
日本の古典芸能は一口に言って「間」の芸術である。西洋の時間芸術がリズムにのって流動するのに対して,日本の時間芸術は流れるよりもむしろ止まる。絶え間なく流れ行く時間の中で,いかにして静止するかに腐心する芸術であるといってよい。日本舞踊の「間」という形こうしたテーマをとりあげたこの小論では,邦舞の「間」の問題を三つのステージで捉え,第一のステージでは,いわゆる「常間」という規則正しい間拍子のとり方を吟味の対象とし,第二のステージでは,「常間」では一応の舞踊の形は整うけれども,芸術としての面白味(踊り手の側からみれば「個性」)を出すには,一歩進んでことさらに間のリズムを壊して,変則の間拍子を工夫する必要のあることに触れ,第三のステージでは,間拍子の工夫がただ技術的巧拙の段階にとどまる限り,そこに芸術としての味わいを醸し出す余地はなく,ここで一段飛躍して,芸術に精神性の表出を求める立場から,いわば「気合の芸術」として,日本舞踊の「間」の問題に迫ろうとする。これらの作業が,日本文化の特質解明の一助ともなりうれば幸である。