著者
増村 恵奈 重松 彰 佐藤 宣子
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.51-60, 2011-11-01

林地所有者の高齢化や林業経営意欲の減退により相続や売却希望者の増加が予測され,それに起因して所有者の不在村化や森林管理水準の低下等の問題が懸念されている。本論文の目的は,戦後の新興林業地であり,素材生産量が近年拡大している大分県佐伯市を事例として,(1)森林組合員アンケートを用いて林地所有の履歴別に伐採活動と林地の売却意向を考察すること,(2)佐伯市旧宇目町を対象とした土地登記済通知書の分析により林地所有権の移動を定量的に把握することである。その結果,(1)現世代で林地を購入した所有者は他よりも主伐と林地売却の意向が高く,林地所有の履歴が今後の森林管理水準の差に影響することが示唆された。林地売却については現世代購入所有者の23.3%が今後5年間の売却意向を示した。(2)旧宇目町では1999年から2008年までの10年間の合計で1,454件,私有林面積の19.0%にあたる2,554.4haの林地所有権の移動を確認した。対象期間の林地所有権の移動を売買と相続に分けて集計した結果,件数はそれぞれ全体の49.1%と36.2%であり,平均移動面積はそれぞれ1.0haと3.1haであった。