著者
増永 希美 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.200-209, 2019-03-01 (Released:2019-03-12)
参考文献数
32

本研究では,全般性不安症状および抑うつ症状の素因としてネガティブなメタ認知的信念を扱い,これらの関連に対するウェルビーイングと感謝感情による調整(緩衝)効果を検討した。大学生173名に質問紙調査を実施し,階層的重回帰分析を行った結果,ウェルビーイングがネガティブなメタ認知的信念と全般性不安症状および抑うつ症状の関連を有意に緩衝した。一方,感謝感情は有意な緩衝効果が得られなかった。この要因として,日本人は身近な他者に社会的支援を求めることを快く思わないといったような潜在的に負の対人関係を有しているため,感謝をすると,感謝感情に伴って負債感情も生起することが考えられる。したがって,本邦においては,ウェルビーイングを高めることは全般性不安症状および抑うつ症状を低めるが,感謝感情を高める介入の効果は低い可能性が示唆された。