著者
増澤 成幸
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1154-1161, 1990 (Released:2009-10-16)
参考文献数
31

炎症性腸疾患に合併する胆石症の成因の一端を解明する目的で, 炎症性腸疾患自験例 (潰瘍性大腸炎42例, Crohn病27例) の胆汁中脂質分析およびコレステロール結晶析出時間の測定を行い, 総胆汁酸濃度は, 潰瘍性大腸炎保存治療例31例・手術例10例ともに有意に低下しCrohn病では回盲部病変を有する保存治療例6例と回盲部切除例11例のみ有意に低下していた.胆汁中コレステロールの組成比は各症例とも変化がなかった.胆汁のlithogenic index 1.0以上の症例は各対象のうち半数近くに認められたが, 胆石生成との関係は明らかに出来なかった.コレステロール結晶析出時間は潰瘍性大腸炎保存治療例を除くと短縮し, こうした症例では胆石を合併しやすいと思われた.析出時間の短縮は, 炎症性腸疾患による機能欠落が主な要因と考えられたが, 析出時間の促進および抑制因子であるアポ蛋白, ムチン, カルシウムイオン等についてさらに検討が必要と思われた.