著者
増田 達志
出版者
公益財団法人 集団力学研究所
雑誌
集団力学 (ISSN:21872872)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.3-71, 2014-12-28 (Released:2014-01-24)
参考文献数
9

本論文では、中国内モンゴル自治区における沙漠化防止活動を取り上げ、20 年間の取り組みの中で、活動内容や参加者のネットワークがどのように変化していったかについて、グループ・ダイナミックスの視点による分析と考察を行った。これを通じて、当該活動の発展の可能性とその方向性について検討をおこなう。また、当該活動のみならず、環境保全活動や地域活性化の取り組みに対して、活動団体、現地コミュニティ、外部からの参加者などによるインターローカルなネットワーク構築の視点を提供することを試みる。 内モンゴル沙漠化防止活動は、20 年間の取り組みを通じて、その形を大きく変化させている。沙漠化防止活動を農業開発による環境ビジネスとして進めていった初期の段階から、農業開発の失敗を経て、流動沙丘の緑化と循環型集落運営システムの構築という地域づくり活動へと基本方針が変更された。また、最初は活動団体単独でなされていた取り組みが、多くの人が交流するネットワークへと発展している。こうした変化は、活動を通じて深められた交流の中から生まれてきたと考えられる。 20 年間にわたって形を変えながら発展してきた沙漠化防止活動は、現在、停滞状態に陥って いる。直接的には活動資金の不足と地元集落を取り巻く社会情勢の悪化が原因となっているが、問題の本質は地元住民の主体的な参加の欠如にある。 この活動が停滞から抜け出し、さらに発展していくためには、活動団体と地元住民の間に、地元住民の内発性に依拠したパートナーシップを構築することが必要になる。また、当該活動と都市住民や日本社会との間で、それぞれの問題をそれぞれの立場から共有するインターローカルなパートナーシップを築いていくことも、重要な課題としてあげられる。