著者
栗嶋 クララ 桑田 聖子 金 晶恵 梁 明子 岩本 洋一 石戸 博隆 増谷 聡 先崎 秀明
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景】Fontan術後の高い中心静脈圧(CVP)はリンパの鬱滞を惹起し,リンパ浮腫やリンパ漏,酸化ストレスや炎症性サイトカインの活性化からFailing Fontanの病態に関与しうる.実際に我々は近赤外線カメラによる下肢のリンパ管投影にてリンパの鬱滞を呈するFontan患者が多数存在することを報告した.従って,リンパ鬱滞を改善するリンパマッサージはFailing Fontanの予防や治療の一つとなる可能性がある.しかし,リンパマッサージのFontan循環への影響は不明である.【目的】Fontan循環におけるリンパマッサージによる急性期の効果と血行動態学的変化について検討する.【方法】現在までに,説明と同意を得て,希望者にリンパマッサージを施行したFontan術後患者4名を対象とし,リンパマッサージ中に心拍数,血圧,心係数(CI),末梢静脈圧から算出したCVP,心拍変動解析を持続的にモニターし評価した.また,リンパマッサージ前後の血液量も比較検討した.【結果】リンパマッサージ前後で,交感神経系の活動(LH/HF)は抑制され,心拍数は著明に減少(mean 95→85bpm)し,収縮期血圧,CIも低下した(各々100→97mmHg,3.0→2.7L/min/m2).リンパマッサージは循環血液量の増加をもたらした(92→112ml/kg,Ht 44.0→43.2%,Alb 7.0→6.9g/dl)が,CVPは上昇しなかった(各々14→14,10→8,9→10,14→11mmHg).【考察】Fontan術後患者におけるリンパマッサージは,リンパの静脈への還流量増大に伴う体液量増加が,心拍数減少によるCI減少,静脈キャパシタンス増大により代償され,CVP上昇を伴わずに施行される安全な手技と思われる.従って,リンパマッサージはリンパ鬱滞の改善という直接効果に加え,交感神経抑制効果による心拍数減少,静脈キャパシタンスの増大(静脈機能改善)によりFontan術後患者の予後改善に寄与しうる非薬物療法としての可能性が示唆され,今後長期効果を含めた検討に値すると思われた.
著者
岩本 洋一 桑田 聖子 簗 明子 栗嶋 クララ 石戸 博隆 増谷 聡 先崎 秀明
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景】LaFargeの表は、統計から得られた式より年齢と心拍数から体表面積当たりの酸素消費量(VO2)を導き出す方法である。近年、先天性心疾患患者群において、LaFargeの式では、3歳未満の症例では、VO2を過大評価する、という報告が散見される。【目的】LaFargeの式の正確性並びに、年齢層による酸素需要の傾向を明らかにする。【対象】先天性心疾患を有し、当院において2013年6月から2014年12月までに心血管MRIと心臓カテーテル検査を受けた34名(平均年齢7.7±4.1歳)。【方法】心血管MRIの主要血管のphase contrast法から測定された心拍数(HR)を用いて、そのHRをLaFargeの式に当てはめたVO2値(LFVO2)と、心臓カテーテル検査時のSaO2値・SvO2値・Hb値とMRI検査時の体血流量を酸素需要式に当てはめる事によるVO2値(MRIVO2)とを比較・検討した。【成績】全症例におけるMRIVO2とLFVO2では相関が認められなかった(r=0.09, p=0.60)。年齢と、LFVO2とMRIVO2の比の相関関係は、弱い負の相関を示した(r=-0.24, p=0.15)。4.5歳未満の症例に限ると、LFVO2はMRIVO2より明らかに高値を示し、有意差が生じた(159.6 vs. 121.5, p<0.01)。4.5歳以上の症例に限ると、LFVO2とMRIVO2は弱い正の相関を示した(r=0.39, p=0.04)。また、Bland-Altoman解析では、VO2が低いとLFVO2が過大評価され、、VO2が高いと過小評価する傾向が認められた。【結論】LaFargeの式は、低年齢層には、不正確になる可能性が示された。今後MRIによる血流測定をもとにした簡便かつ正確なVO2予測式の確立を考える余地がある。