著者
田中 英高
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.53-60, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
25

Dizziness is not an uncommon medical problem in children. When a child develops various physical symptoms in addition to dizziness, clinicians should include orthostatic dysregulation (OD) in their diagnosis. OD is composed of four different subsets, instantaneous orthostatic hypotension (INOH), postural tachycardia syndrome (POTS), neurally-mediated syncope and delayed orthostatic hypotension, and the former two are dominant. INOH involves dysfunction of the high-pressure system in the neural baroreflex pathway, and the low-pressure system in the case of POTS. Children with OD show a decrease in cerebral blood flow compared with unaffected children, and this might be associated with the mechanism responsible for dizziness. Further studies are anticipated in relation to OD and vestibular function.
著者
日高 なぎさ 田中 英高 土田 こゆき 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.55-59, 2001-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

従来から指摘されているように心因性発熱の発生機序を不十分な情動表現から生じるとするなら, 言語化を促す箱庭療法はきわめて有効な治療手段であろう.箱庭療法が奏効した心因性発熱の1例の治療過程について報告する.導入当初は統合性の低い箱庭が多くみられ, 制作中はほとんど話をせず言語表現の乏しさが目立ったが, 治療を終結する頃には全体として統合性の高い箱庭があらわれるようになった.同時に言語化も促され, 家庭や学校での出来事を自発的に話し, 発熱もなく登校するようになった.本症例では箱庭療法を通じて欲求や感情の言語化が促され, 心的浄化が図られた結果として症例の重篤化を防ぐことができたと考えられる.
著者
田中 英高 寺島 繁典 竹中 義人 永井 章 Borres Magnus
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.293-300, 2002-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

近年,未成年者の凶悪犯罪が注目を集めているが,その一方で子どもの自殺の増加も大きな社会問題となっている.われわれは日本とスウェーデンの公立小中学校において,心身医学的健康調査を実施した結果,日本の子どもは精神的身体的により脆弱で,疲弊していると結論づけた.その調査の中で,死にたいと思っている子どもはスウェーデンより日本で多いことを報告した.本研究では,自殺願望の心理社会的背景について前回の調査結果をさらに解析した.大阪府下公立小学校4年生〜中学校3年生(男子375名,女子367名)を対象に,新しく作成した質問紙法による健康調査を実施した.質問項目は,身体愁訴10項目,精神愁訴12項目,その他心理社会的因子30項目から成る.「わたしは,よく死にたいと思う」の質問項目に対し,「はい」「ときどき」「いいえ」の3件法で回答を得た.また「わたしは,カッとしやすい」の質問項目に対しても同様に行った.日本の小学生,中学生の「はい」の回答率はそれぞれ3.3%,6.9%,「ときどき」は12.5%,14.9%であった.一方,スウェーデンでの「はい」の回答率はおのおの1.9%,2.8%と日本に比べて有意に低かった.stepwise回帰分析からみた「わたしは,よく死にたいと思う」に関連する心理社会的因子の第1位は,日本では「自分のことで両親がよくけんかをする」であった.一方,スウェーデンでは「自分に満足していない」であり,日本と異なった結果であった.文部科学省の調査によると,日本の子どもの自殺の原因を家庭不和が第1と推定しており,今回の一般小中学生を対象とした調査結果と一致した.親が子どもを一入の人間として,いかに育んでいかねばならないのか,日本人は改めて考え直す必要があろう.
著者
田中 英高
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ODは起立循環反応が異なる4つのサブタイプがこれまでに報告されている。我々は非侵襲的連続血圧・心拍反応と近赤外分光計による脳血流を評価し、さらに新しい2つのサブタイプ、すなわちHyper-response型、脳血流低下型の存在を見出した。OD症状を持つ疾患群478名における各サブタイプの頻度は、起立直後性低血圧22.8%、体位性頻脈症候群20.7%、遷延性起立性低血圧5.0%、神経調節性失神1.0%、Hyperresponse型9.4%、脳血流低下型5.6%であった。新しいサブタイプはODの15%を占めると考えられ、新しい診断・治療法の開発が必要である。MemCacによる自律神経機能解析では、POTSは立位で著しい低下を認め、迷走神経活動の異常減少が推測された。Head-uptilttrainingを実施したところ、POTSにおいて治療効果を認め、起立後の心拍増加の改善、起立時間の延長を認め、臨床的に有用と考えられた。
著者
芦田 明 村田 卓士 田中 英高 玉井 浩
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.443-448, 1998-08-01

大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157 : H7集団食中毒では, 続発して100名を超える患者が溶血性尿毒症症候群に罹患した.当科に搬送された患者の両親に対しアンケート調査を, 看護婦に対し聞き取り調査を実施し, 入院中の治療環境に対する認知を検討した.その結果, (1)病院転送時に, 患者側に病院を選択する余裕はなく, 家族は自宅より病院まで遠くても仕方がないと考えていた.(2)同一疾患患者を一大部屋に収容したことは, 患者間および保護者間ともに連帯感が生じ, 心理的サポートが得られた.(3)他疾患で入院している患者および家族からの感染に対する不安は少なく, 適切な感染防止処置がとられていれば, 一般病棟内で治療を行っても, 大きな混乱には陥らないことが明らかとなった.
著者
田中 英高 寺島 繁典 竹中 義人 永井 章 Borres Magnus
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.293-300, 2002-05-01
被引用文献数
1

近年,未成年者の凶悪犯罪が注目を集めているが,その一方で子どもの自殺の増加も大きな社会問題となっている.われわれは日本とスウェーデンの公立小中学校において,心身医学的健康調査を実施した結果,日本の子どもは精神的身体的により脆弱で,疲弊していると結論づけた.その調査の中で,死にたいと思っている子どもはスウェーデンより日本で多いことを報告した.本研究では,自殺願望の心理社会的背景について前回の調査結果をさらに解析した.大阪府下公立小学校4年生〜中学校3年生(男子375名,女子367名)を対象に,新しく作成した質問紙法による健康調査を実施した.質問項目は,身体愁訴10項目,精神愁訴12項目,その他心理社会的因子30項目から成る.「わたしは,よく死にたいと思う」の質問項目に対し,「はい」「ときどき」「いいえ」の3件法で回答を得た.また「わたしは,カッとしやすい」の質問項目に対しても同様に行った.日本の小学生,中学生の「はい」の回答率はそれぞれ3.3%,6.9%,「ときどき」は12.5%,14.9%であった.一方,スウェーデンでの「はい」の回答率はおのおの1.9%,2.8%と日本に比べて有意に低かった.stepwise回帰分析からみた「わたしは,よく死にたいと思う」に関連する心理社会的因子の第1位は,日本では「自分のことで両親がよくけんかをする」であった.一方,スウェーデンでは「自分に満足していない」であり,日本と異なった結果であった.文部科学省の調査によると,日本の子どもの自殺の原因を家庭不和が第1と推定しており,今回の一般小中学生を対象とした調査結果と一致した.親が子どもを一入の人間として,いかに育んでいかねばならないのか,日本人は改めて考え直す必要があろう.