著者
安達 義輝 小森 貞男 星川 義真 田中 紀充 阿部 和幸 別所 英男 渡邉 学 壽松木 章
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.402-409, 2009 (Released:2009-10-23)
参考文献数
33
被引用文献数
30 34

リンゴを含むバラ科に属する種は自家不和合性を有しているが,多くの種では倍数化によって打破される報告がある.リンゴで同質四倍体品種とその倍数化前オリジナル二倍体品種を用いて,交雑和合性試験および花粉管伸長調査を行った.同質四倍体品種が自家結実性を示し,同質四倍体品種花粉が自家受粉およびオリジナル二倍体品種雌ずいにおいて和合性を誘導した.一方,オリジナル二倍体品種花粉を同質四倍体品種に交配した場合には不和合性を示したことから,同質四倍体品種の自家和合性誘導の原因は花粉側にあることが示唆された.また,自家受粉の花粉管伸長は同質四倍体品種が最も大きく,次いで二倍体,三倍体の順であった.二倍体および三倍体品種の花粉管は雌ずいの倍数性とは無関係に伸長が抑制されるのに対し,同質四倍体品種の花粉管は他家受粉には及ばないが不和合花粉管よりも有意に伸長する中間的な伸長度を示した.交雑試験と花粉管伸長調査の結果から,同質四倍体品種の自家和合性は花粉側にあることが判明した.さらに,倍数化による花粉管伸長度の増大ではなく,自家不和合性機構が打破されている可能性が示された.
著者
艾乃吐拉 木合塔尓 壽松木 章 小森 貞男
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.439-443, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2 10

エチレン作用阻害剤の1-MCPが我が国のリンゴ果実の貯蔵性に及ぼす影響について, 早生品種の'さんさ', 中生品種の'ジョナゴールド'および晩生品種の'ふじ'の収穫適期の果実を用いて検討した.その結果, 3品種とも1-MCP曝露処理により果実のエチレン生成は顕著に抑制されたが, 貯蔵品質に及ぼす効果は品種により異なった.早生品種の'さんさ'では, リンゴ酸含量の低下はやや抑制したものの, 果肉硬度の低下は抑制せず, 鮮度保持効果は処理後1か月程度であった.また, 1-MCP処理は収穫後3日以内に行わないと効果が認められなかった.それに対し, 中生品種の'ジョナゴールド'では収穫当日処理から収穫後7日目処理まで, 果肉硬度, リンゴ酸含量とも処理後2か月まで保持効果が認められた.特に, 果皮の油あがりが顕著に抑制された.晩生品種の'ふじ'では, 'ジョナゴールド'と同様, 1-MCP処理果実は貯蔵後2か月目まで収穫時の硬度を維持しており, また, みつ入りも当日処理では2か月後まで, 収穫後3日目および7日目処理でも対照区より多く維持する傾向にあり, 鮮度保持効果が認められた.この結果は, 従来CA貯蔵など長期貯蔵が困難であった暖地型の完熟'ふじ'果実の長期鮮度保持が可能になることを示しており, 今後の貯蔵技術に大きな影響を及ぼすことが示唆された.