著者
外村元伸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.861-869, 1990-06-15
被引用文献数
1

コンピュータ・グラフィックスの急激な発展によって ますます 32ないし64ビットの浮動小数点演算が要求されるようになってきた.このように処理桁数が増加してくると 桁上げ伝播による遅延が問題になり これを解決するために桁上げ伝播のない演算器が注目されている.そして{-1,0 +1}で表現する冗長2進加算器の利用は 従来の桁上げ保存加算器などで構成するよりもすぐれた規則性をもち 加減乗除 開平などの高速演算アルゴリズムが導出できることが最近わかってきた.本報告では 特に冗長2進数表現を利用した乗算方式についてわかってきた最近の成果をもとにして多項式計算などのように繰り返して乗算する方式に応用することについて述べる.すなわち 従来の乗算器が主として桁上げ保存加算器を利用していたために せいぜい2次の Booth アルゴリズムにしか適していなかったが 冗長2進加算器を利用すると 4次の Booth アルゴリズム相当のものが実現でき Booth アルゴリズムと相性がよいことに注目する.そして 繰返し乗算においても 演算の途中で桁上げ伝播の発生する通常の2進数に変換することなく冗長2進数体系で一貫高速に演算できるようにするため 新たに冗長2進数のままリコードする冗長2進数リコータとその諭理回路化方式を提案する.性能評価の結果 本提案方式によれば従来よりも 15?34% 程度改善できる見通しが得られた.