著者
多々良 啓
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-63, 2022 (Released:2022-04-02)
参考文献数
20

本稿では,北海道浦河町を事例に,地域おこし協力隊員とその経験者を対象に,隊員間で行われる支援に着目し,その実態を示すとともに,支援が生じる背景を関連するアクターの経歴をもとに考察した.その結果,先に着任した隊員が後輩隊員に対して,「人脈紹介」,「事業・活動の連携」,「相談役としてのサポート」を行っていることが明らかとなった.また,地域おこし協力隊員の中間支援に携わるUターン者や地域住民が,隊員間の支援の起点となり,サポートを受けた者が新たに着任した隊員をサポートする「支援の連鎖」が生じていることを示した.これらは地域おこし協力隊員自身の経験や, Uターン者,地域住民の経験から生じている.本稿では,「支援の連鎖」が生じている一例を示したが,これらを継続・強化するためには,支援に関わるUIターン者や地域住民のコミュニティを広げ,キーパーソンの負担を軽減することが必要だと考えられる.