- 著者
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村山 佑一郎
南野 大佑
多田 克史
白尾 泰宏
- 出版者
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会
- 雑誌
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, pp.274, 2016
<p>【はじめに】</p><p>ジュニア期のサッカーにおけるスポーツ障害は膝関節が最も多いといわれている。菅原らはジュニア期のサッカー選手に圧痛検査を行い、脛骨粗面に圧痛が多かったことを報告している。臨床の中でも、ジュニア期のサッカー選手において脛骨粗面の圧痛を訴えることが多く、その要因に下肢筋の柔軟性低下があることが多いように感じる。そこで今回の目的は、ジュニア期のサッカー選手を対象に脛骨粗面の圧痛と、下肢筋の柔軟性低下が関連しているのか検討した。</p><p>【対象および方法】</p><p>サッカーのクラブチームに属している12~15歳の24 名48側(平均年齢:13.53±0.62歳、平均身長:151.11±7.31cm、平均体重:43.2±7.36kg)であった。脛骨粗面の圧痛検査を行い、圧痛有り群、無し群で下肢筋の柔軟性を比較した。腸腰筋はトーマス法(対側の膝窩から床までの距離を0.1cm単位で測定)、ハムストリングスはSLR角度(5°単位で測定)、大腿四頭筋はHBD(腹臥位で膝関節を他動的に屈曲していき軽度の抵抗で停止した位置での踵と殿部の距離を0.1cm単位で測定)、下腿三頭筋は膝伸展位での背屈角度(5°単位で測定)を測定した。統計学的処理にはShapiro-Wilkの正規性検定行いMann-Whitney検定行った。</p><p>【結果】</p><p>圧痛有り群は12膝、無し群は36膝であった。</p><p>腸腰筋では圧痛有り群5.02cm、無し群5.24cmで有意差はみられなかった (P>0.05)</p><p>ハムストリングスでは圧痛有り群57.9°、無し群62.9°で有意差がみられた(P<0.05)</p><p>大腿四頭筋では圧痛有り群7.43cm、無し群4.12cm、で有意差がみられた (P<0.05)</p><p>下腿三頭筋では圧痛有り群8.76°、無し群12.1°で有意差がみられた (P<0.05)</p><p>【考察】</p><p>梅原の報告では、中学生年代は成長期にあり、骨の成長により筋が相対的に短縮した状態となり、筋の柔軟性は低下するとされている。そのうえ、スポーツ活動の負荷が加わることで、腱やその付着部の疼痛、筋の損傷といったスポーツ障害が生じやすいとされている。武井らは大腿四頭筋と下腿三頭筋の柔軟性低下がキック動作におけるBall impact時の軸足の下腿前傾の減少、上半身重心の後方変位に影響を及ぼす傾向があり膝伸展機構障害のリスクになりうると報告されている。また、倉坪らは、キック動作時に身体重心が後方化することでハムストリングスの柔軟性が低下し骨盤後傾位でのキック動作となるため膝関節伸展モーメントが増加し、大腿四頭筋が過活動となることを報告されている。大腿四頭筋が過活動することで脛骨粗面への牽引ストレスが増加し、脆弱な成長軟骨に侵害ストレスを与え、牽引性の慢性スポーツ障害の発症の要因となりうると考える。高橋らは運動後にストレッチを行うことで痛みを有する可能性が低くなることを報告している。故にストレッチを行い、下肢筋の柔軟性を向上させることがスポーツ障害を予防する一助となると考える。</p><p>【まとめ】</p><p>中学生年代のサッカー選手は下肢筋の柔軟性が低下しやすく、脛骨粗面の圧痛の要因となり得ることがわかった。その為、ストレッチの重要性を監督、選手に理解してもらい練習の中に取り入れ、柔軟性の向上、スポーツ障害の予防につなげていきたいと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき、監督、選手に十分な説明と同意を得て、個人情報の保護など倫理的配慮を行った</p>