著者
多田 敦士 玉本 拓郎 黒田 浩一郎
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.115-126, 2005-03-31 (Released:2016-11-16)

医療社会学では、我が国における健康ブームを健康至上主義の表れとしてとらえている。健康至上主義とは、健康を何らかの手段としてではなく、それ自体価値あることとして追求する態度とその表れである。この意味での健康至上主義は、日本において1970年代半ばあるいは後半から高まり、現在までその高水準が維持されているといわれている。本稿の目的は、この仮説を既存調査を資料として検証することである。資料としては、1960年代から現在まで継続的・定期的に行われ、健康をいちばん大切と考えるかと、健康に注意しているかについての質問を含んだ2つの既存のサーベイ調査を用いる。分析の結果、健康至上主義は、健康を価値あることとすること、健康が自己目的化することにかぎっていえば、1970年代半ばあるいは後半に高まり、その水準が現在まで維持されているといった変化のパターンをみいだすことはできなかった。むしろ、健康至上主義は1960年代後半に高まり、1970年代には低下する、というパターンがみいだされた。