- 著者
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吉田 賢大
村井 亮介
佐野 新
多田 毅
門田 一繁
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.12, pp.1302-1307, 2018-12-15 (Released:2020-01-17)
- 参考文献数
- 9
症例は64歳女性.来院1カ月前に感冒症状を自覚した.来院2週間前に発熱と吸気時胸痛に対して,近医にて解熱鎮痛薬の処方を受けたが,症状の消失は得られず,精査加療目的に当院を紹介受診した.経胸壁心臓超音波検査で心嚢水貯留を認め,急性心膜炎と診断した.入院後も解熱鎮痛薬とコルヒチンの投与を行うも,炎症反応の再上昇や吸気時胸痛の再増悪が認められた.入院2週間後に抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性,直接クームス試験陽性が判明し,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準を満たした.プレドニゾロン30 mg/日の投与を開始し,炎症反応の低下と自覚症状の寛解を認めた.比較的高齢発症(50歳以上)のSLEでは典型的でない初発症状(胸膜炎,心膜炎,間質性肺炎など)が多いとされており診断に難渋する.今回,漿膜炎症状のみを呈した高齢発症SLEの1例を診断し得た.急性心膜炎の治療においては原疾患の有無を詳細に精査し,原因の特定に努めることが重要と考えられた.