著者
多田 靖次 中山 大樹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.132-134, 1954

四面環海のわが国に於いて魚介類は最も豊富且廉価な動物性蛋白資源であるが,水分含有量高く,腐敗し易く,一且腐敗すれば鼻持ちならぬ腥臭を帯びる為に利用の途が狭く,そのまゝ蒸煮,乾燥して魚粉とする以外,廃棄物の飼料化は全く行われて居ない現状にある。<BR>一方魚介類の醗酵貯蔵に関しては東南アジア方面には種々の方法があり,わが国にも塩辛,ショッツル等があるが,いずれも多量の食塩を添加するものであるから飼料目的には全く不向きである。然るに植物性飼料にはエンシレージ,甘藷摺込貯蔵等の食塩を用いない醗酵貯蔵法があり,動物蛋白資源でも適当に糖分を補充すれば食塩を加えずとも醗酵貯蔵が出来そうなものである。<BR>事実デンマークに於いては魚のアラを生のまゝ摺潰し,糖蜜と乳酸菌培養物とを加えて数日間醗酵させる方法が実用化され,特許権を保有して居る。<BR>筆者等は冨士デベロプメント株式会社の要請に基づいてデンマークの方法を追試して良好な結果を得たので,蛋白原料,添加糖質,種菌等について広く一般化を試み,動物蛋白資源の醗酵処理に関して大いに期待を深めるに至つた。今回は紙面の都合上,その中の魚介類廃棄物飼料化に関する実験結果の一端を報告して大方の御参考に供する次第である。尚本件に関しては当教室に於いて特許を数件出願中である。