著者
本間 伸夫 田代 友蔵
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.8-11, 1959

製麹温度および種麹を異にする米麹について酵素力を測定し,小規模な赤味噌温醸試験を行つた。米麹酵素力は高温(40゜前後)の場合は既報のごとく澱粉分解力強く,蛋白分解力が弱かつた。低温(30゜前後)はその逆であつた。さらにこうした酵素力を異にする米麹を仕込に用いて,脱脂大豆および丸大豆の赤味噌温醸を行つた。<BR>蛋白分解酵素力の強い米麹を用いた味噌では,窒素の溶出率,分解率とも大きいが,熟成に伴つてその差が少なくなり,製品についてはほとんど差が認められなくなつた。澱粉分解酵素力の強い米麹を用いた味噌でもやはり同様のことが認められた。<BR>しかし製品の品質にほとんどつぎの点を除いて差異が認められなかつた。ただ低温麹を用いた味噌は着色が多く香りがややまさつていた。しかしその差は少ないものであつた。<BR>終りに臨み日頃御指導と御鞭達頂いている原沢所長および実験に協力して頂いている桑原さんに深謝します。
著者
永沢 信
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-26, 1960-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
10

豆腐を製造する際の用水の硬度の影響をみるために,純水,人工硬水(カルシウム硬水とマグネシウム硬水),人工軟水,地下水,軟水を用いて実験的に検討してみた。大豆を水浸するときの吸水速度は純水のばあいがもつとも速く,人工軟水がこれにつぎ,人工硬水および地下水は遅かつた。人工硬水のうちでは硬度の高いものほど吸水速度は遅く,地下水はほぼ同一硬度の人工硬水のものとほとんど同様であった。豆乳の粗蛋白質,豆腐になる蛋白質の含有量は純水と人工軟水とはほとんど同じで,人工硬水ではかなり低値を示した。地下水のばあいはだいたい同一硬度の人工硬水のばあいに似ており,これを軟化したものはほぼ純水または人工軟水に近い値を示した。豆腐の歩留りは全体的には豆腐になる蛋白質の含有量の傾向と類似していた。本研究に対する東北大学大学院農学研究科佐藤和重君の援助を深謝する。また本研究費の一部は科学研究費交付金によつた。
著者
関谷 正男 永沢 信
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.170-173, 1956

宮城県仙台市内の製あん所8か所および製菓工場22工場を調査し,その製品の化学分析,細菌検査などをおこなつた。その結果,(1) 製あん工場は一般に衛生管理が適当でなく,生あんもほとんどすべて大腸菌群陽性,総細菌数も多かつた。人工着色料には禁止品使用は無かつた。(2) 製菓工場は製あん工場に比較して一般に衛生管理は進んでいるが,半数は視覚採点50点以下であつた。(3) 製品の総細菌数は季節的な影響がかなり現れるが,一般的には衛生管理の良否と菌数とは関連が認められる。少数ではあるが大腸菌の検出されたものがある。(4) 糖分と水分とが安全度,保存性に大きい影響があることが確認される。(5) 銅なべ使用に対する注意の不足が認められるが,危険量を含有するものは無かつた。<BR>本調査は,著者の1人(関谷)が中心となつて,宮城県衛生研究所の事業の一部としておこなわれたものである。本調査の機会を与えられた青木大輔所長,ならびに終始熱心に協力せられた東北大学農学部鬼川マキ君に感謝の意を表する。また,各種検査,採取に御援助をいただいた衛生研究所白取技官,仙台市中央保健所草川技官にも感謝する。
著者
藤巻 正生
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.241-249, 1959-10-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
18
著者
本間 伸夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.271-274, 1959

味噌用米麹製造に伴なう澱粉の分解,遊離糖の生成状況を検討した。まず米麹から糖の抽出法について検討を試み,硫酸0.02N濃度を含む50%メタノールによることを決定した。一般の糖分析により製麹各段階(だいたい操作ごと8サンプル)の不溶性,可溶性,還元性,醗酵性,非醗酵性などの糖について定量した。<BR>またペーパークロマトにより製麹に伴なう糖の遊離状態を定性的ならびに定量的に検討した。特に興味深い結果として製麹後期にmaltoseが全然あるいはほとんど認められないのに対して,初期にはかなり多量に蓄積されていることを認めた。この結果について米麹中の種々の関係酵素との関連において考察した。<BR>以上の研究の発表に当り,ご校閲をいただいた新潟大学倉沢教授,日ごろご指導ご鞭撻をいただいている原沢所長および実験に協力をいただいた田代さん,桑原さんに深謝いたします。
著者
前田 清一 江口 貞也 佐々木 裕
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.166-170, 1960

1. L-リジン塩酸塩1.25%溶液(pH 4, 7, 8, 9, 11)を121℃, 2時間加熱したが,きわめて安定であった。<BR>2. 糖類が共存する場合加熱するとブドウ糖と果糖共存時でのリジンの破壊は酸性側ではみられないが,アルカリ側に移行するにしたがい増大する。しかし蔗糖共存時ではなんら影響を受けないように思われる。<BR>3. 破壊リジン溶液を酸処理すると,破壊リジンの一部はリジン定量菌に反応するようになるが,人工胃液処理の場合は反応しないと考えられる。<BR>4. リジン強化コッペパンは醗酵工程ならびに焙焼中においては添加リジンは安定であった。<BR>5. リジン強化食パンは醗酵工程中で添加リジンは破壊されず安定であったが,焙焼中には17%破壊され,トーストするとさらに10%破壊された。<BR>6. 炊飯時において添加リジンは15~20%, 6時間放置後で,さらに10~15%破壊された。炊飯直後のご飯をpH 2, 37℃で1時間振盪すると添加リジンの10%が賦活された。<BR>終りにリジン強化パン製造に御協力いただいた東京栄養食糧学校ならびに日清製粉K.K.中央研究所に厚く謝意を表します。
著者
守永 吉明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.157-158, 1954

以上の結果から次のように考察される。<BR>(1)品質の表に示された通りであるが内麦は特に色,すだち,弾力性は悪いが味は却つてよい。(2)内麦はコッペパンとして旨く食べられる。外形は悪くない。(3)高級パンには不向きだが普通のパンには用いて差支えない。
著者
桜井 純一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.178-182, 1960-08-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
9

結果は第2表のとおりで,これを要約するとi) 無処理のものは2日ともたないが,105℃で20分殺菌したものは5日間,30分殺菌したものは7日間以上保存することができた。100℃で60分殺菌したものでも,5日間の貯蔵に堪えている。このことはたとえ完全に殺菌しなくても,芽胞は不完全発育となり,発育時間がかかるようになる。2, 3日の貯蔵は十分で,団体旅行の携行弁当や,先年の水害時の給食などに用いるならば,非常に衛生的で有効であると思う。ii) 普通の白米でも袋詰炊飯はできるが,パ米を用いる時は炊飯に時間がかからないので,とくに処理しやすい。iii) 腐敗した飯から枯草菌に属するもの2種と赤色のコロニーを生ずるもの一種の繁殖を見たが,菌種は決定していない。完全に殺菌するには間歇殺菌することも可能であるが,実用的には1回の殺菌でよいので,何とか実施できるようにしたい。
著者
桜井 純一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.159-163, 1959-08-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
6

植物体中のクロロフィルの銅置換反応は蒸煮などの加熱操作により著しく促進されることは種々の場合に行われているが,実際工業的に応用するには考慮を要する。たとえばグリーンピースのクロロフィルを安定にするには,試料を稀薄な硫酸銅水溶液中に数分間煮沸後水洗するのであり,クロロフィル抽出工程において原料蚕糞中のクロロフィルをあらがじめ安定にするには,硫酸銅水溶液に浸漬後蒸せばよい。い草の場合も硫酸銅溶液に浸けて蒸すことがおこなわれており,三浦,塚本らの特許出願がある。疊表の色を変らぬようにするというだけのことでは,国民生活向上の上にさしてプラスにはならないようにも考えられるが,加工賃の余りかかるものではないから,国民生活安定とともに将来はかなり利用されると思う。したがつて業界としては不良品,模造品取締りのほか,色調改善,物理的性質の改良など技術的の面にも適切な指導機関の設置が望まれる。終りに本実験を行うに当り,葉緑素の定量について御指導いただいた東京都衛生試験所戸谷哲也技官,疊表の退色試験につき御援助いただいた鉄道技術研究所中島祥行技官,花莚捺染釜による大量試験に御協力いただいた岡山県西阿知町岡本栄一氏の諸氏に深甚の謝意を表する次第である。
著者
小曽戸 和夫 蔀 花雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.18-21, 1961

リンゴ酸,クエン酸,酒石酸の蔗糖転化率を求めた結果,この順に大きくなり,解離恒数の大きいほど転化率も大きいことが認められた。果実罐詰内においてもpHが低いほど蔗糖残存率は少なく,また同一酸濃度では酒石酸のpHがもっとも低く,リンゴ酸がもっとも高かった。罐詰製造時の加熱処理に際してかなりの量の転化糖を生成するが,それ以後貯蔵中においても転化は進行し,酸無添加でも蔗糖残存率は製造後5年経過すると白桃で17~21%,洋梨で29%に過ぎなかった。白桃および洋梨罐詰の色調は蔗糖を使用したものよりブドウ糖を用いたものの方が淡かった。また桃ジュースに蔗糖または転化糖,酸としてリンゴ酸,クエン酸,酒石酸を配合したものを加熱処理した結果,蔗糖より転化糖の方が着色し,クエン酸,リンゴ酸,酒石酸の順に着色が強くなった。以上の結果から白桃,洋梨罐詰の色調を淡く仕上げるにはできるだけ蔗糖の転化を抑えるようにし,酸を添加するときにはクエン酸がもっともよいことを認めた。<BR>実験に協力いただいた数見秀次郎氏に感謝の意を表する。本報は1959年11月28日,日本農芸化学会東北支部小集会および1960年4月4日農産加工技術研究会第7回大会にて口演した。
著者
小曽戸 和夫 蔀 花雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.22-24, 1961

果実シラップ漬罐詰にクエン酸あるいは酒石酸のかわりにグルコン酸の利用を試みた。グルコン酸の蔗糖転化率はリンゴ酸,クエン酸,酒石酸に比してかなり低く,また酸濃度が薄いときにはその差はいちじるしかった。蔗糖,ブドウ糖,転化糖などとグルコン酸とのかっ変をリンゴ酸,クエン酸と比較した結果,試験管内98℃,4時間の加熱ではグルコン酸が着色の度合はもっとも少なく,またそれらにグリシンを添加したときは蔗糖,転化糖はいずれの酸もかっ変が促進されたが,やはりグルコン酸がもっとも淡く,ブドウ糖はほとんど着色が認められなかった。桃ジュースに蔗糖または転化糖,酸としてリンゴ酸,クエン酸,酒石酸,グルコン酸などを配合して罐詰を製造し,製造直後および貯蔵中の色調を比較した結果,酒石酸≧グルコン酸>クエン酸≧リンゴ酸,転化糖>蔗糖で罐詰内ではグルコン酸に着色のいちじるしいことが認められた。なおグルコン酸を使用したものはいずれの糖でもつねに罐内面の腐蝕が認められたが,これはグルコン酸が重金属をキレイトする性質が非常に強いために生ずる腐蝕が,上部空隙中の酸素により促進されるものと推察した。<BR>グルコン酸について御教示をいただいた藤沢薬品工業株式会社 市川吉夫氏,実験に協力いただいた数見秀次郎,鈴木勝芳の2氏に感謝の意を表する。本報の要旨は1960年10月1日日本農芸化学会東北支部大会にて口演した。
著者
多田 靖次 中山 大樹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.132-134, 1954

四面環海のわが国に於いて魚介類は最も豊富且廉価な動物性蛋白資源であるが,水分含有量高く,腐敗し易く,一且腐敗すれば鼻持ちならぬ腥臭を帯びる為に利用の途が狭く,そのまゝ蒸煮,乾燥して魚粉とする以外,廃棄物の飼料化は全く行われて居ない現状にある。<BR>一方魚介類の醗酵貯蔵に関しては東南アジア方面には種々の方法があり,わが国にも塩辛,ショッツル等があるが,いずれも多量の食塩を添加するものであるから飼料目的には全く不向きである。然るに植物性飼料にはエンシレージ,甘藷摺込貯蔵等の食塩を用いない醗酵貯蔵法があり,動物蛋白資源でも適当に糖分を補充すれば食塩を加えずとも醗酵貯蔵が出来そうなものである。<BR>事実デンマークに於いては魚のアラを生のまゝ摺潰し,糖蜜と乳酸菌培養物とを加えて数日間醗酵させる方法が実用化され,特許権を保有して居る。<BR>筆者等は冨士デベロプメント株式会社の要請に基づいてデンマークの方法を追試して良好な結果を得たので,蛋白原料,添加糖質,種菌等について広く一般化を試み,動物蛋白資源の醗酵処理に関して大いに期待を深めるに至つた。今回は紙面の都合上,その中の魚介類廃棄物飼料化に関する実験結果の一端を報告して大方の御参考に供する次第である。尚本件に関しては当教室に於いて特許を数件出願中である。
著者
松浦 宏之 吉田 幾久子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.99-102, 1957

1. 常備食の保存性を検討するため,ねりみそ,食酢,醤油を利用し,ねりみそ類7種,調味酢液漬け2種,醤油漬け1種を試作し,牛乳瓶,蓋付かめに肉詰めし,牛乳瓶は沸騰水中,かめは蒸気中で20~30分間加熱殺菌した。<BR>2. 牛乳瓶詰め試料は17ケ月蓋付かめ詰め試料は7ケ月室温に貯蔵したが,各試料とも五感的に腐敗は認められなかつた。<BR>3. ねりみそ類の組成分析,調味液汁中の細菌測定の結果から,各試料ともかなり強力な保存力を有することが認められた。<BR>4. 以上の結果は,各試料に類する食品にライフアンの使用が可能なことを示しているものと考えられる。