著者
村田 正文 大上 和良 蟹沢 聰史 永広 昌之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.21, pp.245-259, 1982-04
被引用文献数
4

北上山地における古期花崗岩である氷上花崗岩類と,シルル系川内層は密接な関連をもって分布する。筆者ら(村田ら,1974:OKAMI&MURATA,1975)は,大船渡市日頃市地域の資料に基づき,氷上花崗岩類の少くともその一部"大野型花崗岩"がシルル系川内層の基盤を構成することを指摘してきた。また近年,川村(1980)により気仙郡住田町下有住奥火ノ土で,中井ら(1979MS)により同町上有住八日町で,氷上花崗岩類に属する小岩体とシルル系の不整合関係が指摘された。花崗岩とその上位に重なるシルル系基底部との間に,小規模な滑動面をもづくさやみ沢"と異なり,八日町ではアーコーズ砂岩が,奥火ノ土では,数センチメートル以下のラテライト様泥質岩をへだてて溶結凝灰岩が,何らの破断面もなく直接に花崗岩を覆う。シルル系川内層の基底相の1つである礫質アーコース砂岩は,八日町・奥火ノ土両地区にも発達し,その堆積岩々石学的な検討を行った。八日町地区のものは,日頃市地区のものと類似しアーコース砂岩であるが,奥火ノ土のものは,下位の火山岩・火山砕屑岩々片を含み不純アーコース砂岩である。粒度組成・鉱物組成からみて,日頃市地区のものと同様花崗岩風化物源で,原地性に近い堆積物であることを示している。また,数メートル以下の砂岩中での,粒度・鉱物組成の垂直変化は,その間の風化作用の進行状況を反映している。野沢ら(1975),許(1976),吉田ら(1981MS)によって指摘された,"氷上花崗岩の古生界各層への貫入"についても筆者らの見解を示した。層位学・堆積学的な諸事実により,氷上花崗岩類がシルル系川内層の基盤を構成することは,より一層確実になったことを主張する。