著者
大串 文隆
出版者
徳島医学会
雑誌
四国医学雑誌 (ISSN:00373699)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1.2, pp.25-32, 2023 (Released:2023-07-03)
参考文献数
17

2019年12月に中国で新型コロナ感染症(COVID-19)患者が発生してから,またたく間に世界的大流行へと拡大し,現在世界では,6億人以上のCOVID-19の感染が確認され600万人以上が死亡している1)。また,わが国においても2000万人以上の感染が確認され4万人以上の死亡が報告されている2)。コロナウイルスも変異を繰り返しα株からデルタ株,そしてオミクロン株,その亜系統と高い感染性を有するウイルスに変化し3)この間新規感染者数は増減を繰り返しながら大きな波を形成し現在は第8波に入ったといわれている。COVID-19の症状はインフルエンザのような発熱,咳,痰,倦怠感などの感冒様症状以外にも嗅覚障害,味覚障害,消化器症状,耳鳴り,脱毛など多様な症状を呈することが分かってきた。また,COVID-19の感染者の大半は回復するが急性期を過ぎた後も症状が遷延する,もしくは新たな症状が出現するなど罹患した一部の患者さんにさまざまな罹患後症状をみとめることも明らかになってきた。これらの症状は「遷延する症状(persistent symptoms,prolonged symptoms)」,「遅発症(late-onset symptom)」,「後遺症(sequelqae)」あるいは「Long COVIDコロナ後遺症,新型コロナ罹患後症状」などさまざまな呼び名がもちいられている。この項ではコロナ後遺症の現状と当院で開設しているコロナ後遺症外来の状況と課題について報告する。
著者
岡野 義夫 日野 弘之 中村 陽一 大串 文隆 辰巳 明利
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.457-461, 2002

肺癌は転移病巣形成能が極めて旺盛な特徴を有している.今回我々は,画像的には異常を認めず,非連続多発性に気管支表層に転移をきたした症例を経験した.稀な症例と思われるため報告する.症例.症例は69歳,男性,主訴は血痰.1999年6月に肺腺癌に対して右上葉切除術を施行され,pT2N0M0 stage IBと診断された.2000年10月下旬より血痰を自覚し喀痰細胞診でclass IVを指摘された.胸部X線,胸部CT上,再発を疑う所見は認めなかった.2000年12月21日入院となり,入院時の気管支鏡所見では気管左下葉支入口部に発赤,軽度の腫脹を認め,組織診および細胞診より腺癌の病変が確認された.肺腺癌の再発と考えられたため,2001年1月15日よりCisplatin 80mg/m^2+Vinorelbine 25mg/m^2の投与を開始し,2クール施行した.2001年3月15日気管支鏡を施行し,内視鏡所見でも隆起性病変を認めず,組織診でも癌病変を認めず,著効を示している.CEAのデータより2001年3月から5月までの約3カ月間著効を示していたと考えられる.結論.画像検査では転移を疑わせる所見はなく,多発性および散在性の転移病巣を気管支鏡的に確認し得た.肺癌の転移経路について熟考させられた貴重な症例と考えられた.