著者
小谷 治子 日野 弘之 武市 知己 白石 泰資 小倉 英郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.473-478, 2005-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3

気管切開後に呼吸障害が再出現した重症心身障害者4例で, 原因とその対策を検討した.全例でカニューレ下端が気管狭窄部に接し, 同部に動脈性拍動を伴う肉芽が認められ, 3例で気管軟化症を合併していた.3例でカニューレ下端を病変部より口側固定に変更し (うち気管軟化症を伴う1例にはステントを併用), 経過は良好である.高度の気管軟化症を伴い, ステント留置のみを行った1例は気管腕頭動脈瘻のため死亡した.重症心身障害者の気管切開の合併症予防には, 解剖学的検討による長さや角度が適切なカニューレ選択が重要であり, 高度の気管軟化症がない場合は, 狭窄部や動脈近接部の口側に固定できる短いカニューレが適切であると考えられた.
著者
岡野 義夫 日野 弘之 中村 陽一 大串 文隆 辰巳 明利
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.457-461, 2002

肺癌は転移病巣形成能が極めて旺盛な特徴を有している.今回我々は,画像的には異常を認めず,非連続多発性に気管支表層に転移をきたした症例を経験した.稀な症例と思われるため報告する.症例.症例は69歳,男性,主訴は血痰.1999年6月に肺腺癌に対して右上葉切除術を施行され,pT2N0M0 stage IBと診断された.2000年10月下旬より血痰を自覚し喀痰細胞診でclass IVを指摘された.胸部X線,胸部CT上,再発を疑う所見は認めなかった.2000年12月21日入院となり,入院時の気管支鏡所見では気管左下葉支入口部に発赤,軽度の腫脹を認め,組織診および細胞診より腺癌の病変が確認された.肺腺癌の再発と考えられたため,2001年1月15日よりCisplatin 80mg/m^2+Vinorelbine 25mg/m^2の投与を開始し,2クール施行した.2001年3月15日気管支鏡を施行し,内視鏡所見でも隆起性病変を認めず,組織診でも癌病変を認めず,著効を示している.CEAのデータより2001年3月から5月までの約3カ月間著効を示していたと考えられる.結論.画像検査では転移を疑わせる所見はなく,多発性および散在性の転移病巣を気管支鏡的に確認し得た.肺癌の転移経路について熟考させられた貴重な症例と考えられた.