著者
大串 智美
巻号頁・発行日
2014

筑波大学修士 (情報学) 学位論文・平成26年3月25日授与 (32639号)
著者
大串 智美 金 尚泰
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.92, 2012 (Released:2012-06-11)

近年の地下鉄路線図の多くは,駅や路線の物理的な位置情報を取り払い,限られた角度の線で乗換駅を強調している.この手法は1933年にBeckによって考案され,世界中の路線図に浸透した.しかし,その発展形であるロンドン地下鉄路線図を対象とした調査研究では,利用者の約30%が路線図のデザインのために遠回りとなる経路を選んでいたことが示された.同様の問題はその他の路線図でも発生していると考えられる.そこで本研究では,東京の公式地下鉄路線図を対象とし,利用実態調査に基づいて選出した区間について経路選択の傾向を調査する実験を行った.その結果,実験を行った23区間中12区間において,遠回り経路の選択が30%を超えた.さらに,路線図上の駅間距離が実際の距離と比べどの程度変更されているか,基準となる指標を定義して考察を行った.その結果,遠回りの傾向がみられた12区間のうち7区間において,最短経路の路線図上の距離が比較的長く伸ばされていた.これらのことから,路線図上の距離が経路ごとに異なった比率で伸縮されていることが誤った経路選択行動の原因となっていることが分かった.